薬師寺

2015年6月28日日曜日 13:01
ランチのあとは薬師寺に向かう。
駐車場があるらしいんだけど、南側に行けば案内が見つかるだろう。と思いきや、南門前に着いてしまい、見当たらない。
仕方なくそのまま西進し、近鉄橿原線を跨いでから北上。するとコインパーキングを発見した。ここでいいや、近いし、ってことで駐車。薬師寺の駐車場に停めたまま唐招提寺にも行くってのも少し気が引けるし、丁度良いね。

薬師寺は、法相宗ほっそうしゅうの大本山で、世界遺産に登録されてる。白鳳伽藍と玄奘三蔵院伽藍のエリアに分かれており、大きな寺院は大抵そういうものなんだなと理解し始めた。
さっき車で通り過ぎた南門から、まずは白鳳伽藍に入る。

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中門の二天王像。裸形の金剛力士ではないのがポイントか。

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発掘調査などを元に近年復興された物ということで、オリジナルとはおそらく異なる形式。それにしてはやけに大陸風の強い顔付きだよなぁ。

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入って正面の金堂は色鮮やか。これも再建されてから新しい。
ご本尊の薬師三尊像は、奈良時代白鳳期の作。昔にあちこち焼け落ちたのに、こうして仏像だけは残ってるのだから、当時の信仰心が偲ばれる。

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西塔さいとうもこれまた昭和になってからの復興。だけどカッコいい。
六重に見えるけど、各層に裳階もこしという小さい屋根が付いてるかららしく、実際は三重塔ということ。
それにしても、延暦寺でも見たように、同じような配色の寺院が多いなぁと思い調べてみた。すると、連子窓れんじまどに使われてる緑を青色、柱などに使われてる赤を丹色にいろと呼び、これこそが奈良を表わす色使いであると。一つひとつの色にも意味がありそうだけど、そこまではわからなかった。

東塔とうとうは解体修理中で、完了は2019年春の予定だから、まだまだ先の話だ。

その代わりというワケではないが、西塔の内陣特別拝観を催してた。別途特別拝観料が必要になるが、せっかくなので覗いてみることにする。
奉納されてるのは、現代の彫刻家中村晋也氏による釈迦四相像。
これが圧巻だった。成道,転法輪,涅槃,分舎利を表わした群像で、その場面が目の前に展開される。大勢の人々が描き分けられ、装飾品などは細部まで彫り込まれてる。荘厳さと迫力に満ちた作品だ。
嫁がこの旅行中、最も感動した像でもある。
内陣自体には見所が無く、そこはちょっと残念な気がした。

塔は本来釈迦のお墓を意味するらしい。
古代インドのサンスクリット語の“ストゥーパ”が音訳されて、卒塔婆そとうば/そとばとなり、それが塔婆、さらには単に塔と略されていったという。ヒドい省略具合だと思わないではない。
釈迦のお墓であるから、釈迦四相像であったり、法隆寺五重塔の塔本四面具であったりといった、釈迦に関連する像が納められてるのかと、合点がいった。
そうなると新たな疑問が浮かぶ。東塔と西塔、お墓がなぜ二つも建ってるのか。これは調べてみたところ、やはり本来は一塔で良いらしい。それが、他国から双塔形式ってのがあるよって情報がもたらされたことで、それだって食い付いたためみたい。なんだかなぁ。
しかしながら、回廊の中に金堂と双塔を置くスタイルは、薬師寺式伽藍形式あるいは白鳳伽藍形式という独自のものだという。先の法隆寺と比較すると興味深い。寺院ごと、時代ごとに異なる配置になるというのも、なかなか面白いことだ。
それと、なんで裳階なんか付けたのか。優美に見せるためであるというけど、じゃあそれはなぜかというと、そうでないと有り難がってもらえないからだって。二層以上には床も無い非実用的な構造になってるというし、信仰の対象であるためには、あくまで見栄えが大事ってことらしい。それが実際、今日に至っても我々の心を掴むのだから、素晴らしい造形美は時代を超えるんだな。

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大講堂は大きくて、青空に映える。
人間の視野角より手持ちのカメラの画角は狭いから、自分には端まで全部見えてるのに、フレームには収まり切らない。フレームに入れようとすると、結構後ろに下がる。するとその大きさが伝わらない。もどかしい。
ここのご本尊は弥勒三尊像。他に、日本最古の仏足石ぶっそくせきなどが安置されてた。

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大講堂の近くには蓮の花が咲いてた。実物を見たのは初めてだと思う。形がもう美しいよね。

そこから北へ抜けて、玄奘三蔵院伽藍へ。
玄奘三蔵げんしょうさんぞうは『西遊記』のモデルとなった唐代の僧だ。法相宗は、玄奘の教えの流れを汲み、その一番弟子である窺基ききが開いた宗派。つまり玄奘と薬師寺とは非常に深い縁がある。
横道にそれるけど、“三蔵法師”というのは三蔵(仏教の聖典を分類した経蔵・律蔵・論蔵)に通じている僧侶のことで、つまり一般名詞。玄奘以外にもいたんだけど、とりわけ玄奘三蔵が優れてたから、三蔵法師=玄奘となったらしい。気になったことを調べれば調べるほど、ホント面白いことが出てくる。

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これは玄奘塔。

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新しい伽藍だからか、石畳に現代的な意匠を見つけた。一瞬マンホールかと思った。

塔の北にある大唐西域壁画殿には、まさに『西遊記』の基となった『大唐西域記だいとうさいいきき』を表わした壁画が祀られてた。平山郁夫氏の大作。

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後半駆け足になったけど、メリハリつけただけで、見たいもの見られて満足。
小学生の時には訪れてない場所だしね。

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