伊和神社の厄除けと庭田神社ぬくゐの泉
2019年10月5日土曜日
17:29
兵庫県宍粟市一宮町に鎮座する、今年は僕にとって厄年、それも大厄。祈祷を受けるって昇殿するチャンスでもあるので、厄除け行きたいなとは思っていた。しかし仕事が例年にない忙しさで、心が弱る時期まであり、なかなか行けず、ずるずると10月に入ってしまった。そこへさらなる災難。自転車で交通事故に遭ったのだ。こちらの過失ゼロの左折巻き込まれ。1週間の加療で済んだのは不幸中の幸いながら、これはいよいよ厄を払ったほうが良いんじゃないのと。
どうせなら好きな神さまのところで受けたい。というわけで、宍粟市の伊和神社へ行くことにした。失礼のないよう、付き添いの嫁ともどもスーツを着用。播但道から中国道と走り、山崎ICで下りて国道29号を北上すれば到着。
翌週に控えた例祭の準備だろう、周辺が飾り付けられていた。
社務所にいらした若い男性に、厄除祈願をお願いする。名前と住所を用紙に記入し、額は決めていないのでお気持ちでとのことなので、祈祷料は1万円をお納めした。それから拝殿の前で待機。
しばらくすると、浅葱色の装束に着替えた、先程の若い神職さんがいらっしゃった。お上がりくださいと促されて、靴を脱いで拝殿に昇り、修祓の儀を受ける。
続いて幣殿に移って着座。伊和神社の幣殿って大きいんだよね~。神職さんが祝詞を唱えられる。祝詞ってやまとことばなので、結構内容がわかるもの。聞き耳立てまくりのどうしようもないオタク精神を発揮し、おまえ本気で祓っていただく気はあるのかと。でもその甲斐あって、祝詞に「
風土記にハマって、播磨国風土記を好きになって、地元愛がより強くなって、中でも伊和大神は推し神さまになって、その御加護を頂ける実感がね!湧いてきてね!嬉しかったの!
祝詞の奏上が終わると、代表者たる僕が、さっきまで神職さんが座ってらした御神前に座して、二礼二拍手一礼。神職さんが見守るなかの拝礼は緊張した。
最後にお神酒を頂く
参拝客はまばらで、祈祷を受けたのも自分たちだけ。なんて贅沢な時間。季節外れなのは、かえって良かったかも知れない。
御守の色合いとデザインカッコいいなぁ。鶴が舞い降り眠っていた場所にお社を建てたという、伊和神社の創祀にちなんでの、鶴と落ち着いた清い青が美しい。
道の駅のトイレで平服に着替えたら、庭田神社へ。鳥居前に整備されたアスファルトの駐車場がある。有り難い。
さっきまでいた南西の方角には、山間に開けた田畑が広がっており、美しい秋空と相まって神話の世界みたい。かつての
伊和大神が国固めを終えて、神酒を作ったと播磨国風土記にあって、酒作りを担ったのが大神の御子だったんだろうね。その御子をお祀りしたのが庭田神社。拝殿にてお参り。
御祭神はコトシロヌシ。播磨と縁があったのかなと引っかかって調べたところ、伊和大神=オオナムチだからその御子ってことはコトシロヌシじゃないの、くらいしか根拠ない気がした。
安志姫・若邇志・庭田・遥拝所等皆此(伊和大明神)の眷属の部類也。というところで留めておくのが、もっともらしいのかなと。
本殿西側に境内社。水分神(ミクマリ)・加具土神(カグツチ)・大歳神(オオトシ)・大山津見神(オオヤマツミ)・火魂神(ホムスビ)をお祀りしたお社と、荒神社、八幡社、祇園社、出雲社、稲荷社、皇大神宮。
神社の背後に『ぬくゐの泉』という湧き水があるというので、本殿の奥に続く道を進んでみる。注連柱をくぐり境内を出た先に、玉垣に囲まれた場所があった。
目の前を流れる水を見ると、確かに澄んでいる。この清らかな水を使って酒を醸したってことか。
『ぬくゐ川』と刻まれた石碑の碑文を読もうとしたものの、『蓋聞く神代の昔大国主命豊葦原の瑞穂国~を言向け和~事代主命~』と、削れたりして判読できない箇所が多い。ただなんとなく意味は取れる。地上を平定したオオクニヌシが、コトシロヌシに酒を作らせ、酒宴を開いたのがこの水で、涸れることも濁ることもなくこんこんと湧き続けている――といったところかな。
ぬくゐ川の水で酒を醸したというのは、庭田神社縁起独自の伝承。土地に残る言い伝えって、やっぱロマンがあるわぁ。
播磨国風土記の
庭音村〈本名、庭酒〉。大神御粮沾而生糆。即令醸酒、以献庭酒、而宴之。故曰庭酒村。今人云庭音村。とあるのみ。
(大神がご飯を濡らしてカビが生えてしまい、それで酒を醸させ、宴を開いた)
関連があるのでもうひとつ引用。
伊和村〈本名、神酒〉。大神、醸酒此村。故曰神酒村。又云於和村。大神、国作訖以後云、於和。等於我美岐。こちらの話は伊和神社のある地域の地名発祥譚だけど、庭田神社の伝承との関連を感じさせる内容。庭田神社のそれのほうがストーリー性があって、本来の形に近いんじゃないかって気がするね。
(大神がこの村で酒を醸造したので、神酒 の村といったとか、於和 の村といったとか。今では伊和 の村という。大神は国づくりを終えて、「おわ、この神酒と同じくらいに(国づくりが上手くいった)」と言ったとも)
伊和神社で厄除祈願を受けて、伊和大神の祝詞を聞いて、庭田神社独自伝承に触れて。風土記が大好きな僕にとって、特別で素晴らしい時間を過ごせたよ。