塔の茶屋

2015年6月29日月曜日 12:49
正午が近づいてきたので、次は昼食。僕たちがガイドブックから選んだのは、『塔の茶屋』。
春日大社の参道を一之鳥居まで戻り、さらに西に進み続ける。暑いし、さすがにちょっと歩き疲れてきた。

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そこは興福寺の境内、五重塔の裏手側にひっそりと佇むお店。
タイムテーブルを組んだとき、お昼は興福寺の近くで奈良らしいものが食べられたらと考え、ここに決めた。
場所柄かも知れないが、たまたま通りがかった修学旅行生たちが去っていったら、実に静か。あんまり静か過ぎるから、予約してないとこの日はアウトなんじゃないか、と危惧してしまう。

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暖簾をくぐり、出迎えてくれた着物を着た店員さんに、予約してないけど入れるか確認したら、相席になりますけど良いですかと。良かった、入れるなら構わないさ。
通されたのは茶室のような部屋で、座布団が6枚敷かれてる。先客は壮齢の女性と老齢の女性が一人ずつ、奥に向かい合って座ってた。
注文は、「お弁当ですか?」という訊かれ方をしたので、お昼の客はほとんど茶がゆ弁当を頼むようだな。もちろん、僕らもそれが目当て。
店員さんが一旦下がったあと、自分たちはどう座ったら良いものか迷った挙げ句、先客に倣い向かい合わせに着席。だけど店員さんがお茶を運んできてくれた際、「あら、そう座られましたか」と言うので、「並んで良いですか?」と訊くと、そのほうが奥の方が退席しやすいとのこと。なるほど、それは確かに。
ここは座布団に座り、畳の上に直接お盆に載った弁当を置いて食べるスタイル。それが部屋の真ん中に並んだら、奥の人が出るときに邪魔になるワケだ。僕らとしても、並んで座れるほうが良い。

料理を待つ間、誰も喋らないから、お茶を啜ったり、奥の女性方の箸がお椀をかちかち鳴らす音だけが響く、妙な空気に。この状況が続くのを嫌って、僕は嫁と他愛のない話をすることにした。
女性客二人は、なぜ喋らないのだろう。相席の人がいると遠慮するほうなのか、食事中は喋らないことにしてるのか、そもそも連れじゃないのか。

なんて考えてたら、僕たちの分が配膳されてきた。店員さんが僕のわらび餅をひっくり返してしまい、取り替えるという些細なアクシデントはあったけど。
正座は慣れてるけど、この低い位置にあるおかずを口まで運ぶのは、ちょっと難しい。でも雰囲気出るね。
朝ホテルで食べた茶粥とは違い、ここのは煎茶で炊いてるみたいで、風味がまた異なる。こっちのほうが上品な感じ。どちらかといえば、香ばしいほうじ茶のほうが好みかな。
おかずは炊き合わせのほか、奈良漬に柿の葉寿司と、名物がズラリ。いかにも観光客向けの内容ではあるけど、それを求めてきてるんでね。やっぱ旅行ではその土地のものを頂きたい。
どれも美味しかった。京都みたいな洗練さはないけど、質素だが品のある、大和料理というのはこういうものなんだろうと感じた。

さて件の女性客、連れではないことが判った。壮齢の方のほうが一人で立ち上がったからだ。「お先に失礼します」と、丁寧に挨拶して部屋を出ていった。
しばらくして嫁が、そこに残された眼鏡に気づいた。さっきの人の忘れ物に違いない。二人でどうしようか話してると、もう一人の老齢の女性が、私が会計の時に店員さんに預けますよと。
これをきっかけに、その方と少しだけ話をすることができた。まったく言葉を交わしてない人と、そうでない人とでは、同じ空間にいる心地がまるで変わる。ずいぶんあったかい空気になった。
そこへ先程出ていった方が戻られて、無事眼鏡は持ち主の元に返された。うん、良かった。
それにしても、二人とも女性の一人旅か、カッコいいなぁ。

ふすまで仕切られた個室に6名ほどが相席になる、その良し悪しはあると思う。でも風情のある部屋で、奈良の名物が楽しめるのは、なかなか素敵じゃないかな。

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