延暦寺横川地区

2015年6月13日土曜日 14:36
昼食が済んだら、奥比叡ドライブウェイをさらに走り、横川地区へ。
ここの巡拝受付所にはちゃんと係員がいた。共通券を見せて通る。

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まず本堂である横川中堂よかわちゅうどう
中には奉納された小さな黄金の仏像がズラリと並んでて、異様ですらある。一躯2万円のようだ。同じ人の名前で5つ並んでたりする、ということは、一人で十万……つい下世話な想像をしてしまった。

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それを横目に、両実家の御守りを人数分授かることにした。ひとつにつき7百円納めたので、結構な出費になる。
宗教法人は非営利団体だから、御守りを“売る”んじゃないんだよな。こっちは“買う”んじゃなくて“授かる”ものだし。授かったお礼にお金を納める……ややこしい、面倒臭い話ではある。だから、「ありがとうございました」じゃなくて、「良いお参りでした」ってお坊さんに言われたんだよね。

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境内を進むと、鐘楼が見えてきた。
この日は真夏日になるほど気温が高かったのだけど、森の中は涼しい。西塔の似たような所には電線があって興が削がれたけど、ここにはそれも無く、ただただ緑が美しい。

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今回の旅行で最も印象深いことは、恵心堂えしんどうでの出来事。
恵心堂、または恵心院は、源信という僧が念仏三昧の日々を送った場所。恵心院に住まわれてたから、恵心僧都えしんそうずとも尊称される。
ここの内部は非公開であることに留意して、この写真を良く見ると、おかしなことに気づく。――そう、開帳してるのだ。

扉が閉まった状態で写るガイドの写真と、目の前の開け広げられた現物とを見比べてると、おじさんに声を掛けられた。
この方、このお堂の管理を任されてて、たまたま掃除してて開けてるのだと言う。そういう理由だったのか。
しかも、入って良いとの許可まで頂いた。これはラッキーだ。
ご本尊である阿弥陀如来を前にして二人並んで座し、手を合わせる。貴重な体験だなぁ。

こうして拝んだことが良かったのか、おじさんがさらに話しかけてきた。せっかくの機会だから、上に上がったら良いと。
この“上”というのは、僕たち参拝者が座るスペースである外陣げじんから一段高くなってる場所のことで、ご本尊などが飾られてる内陣ないじんを指す。一般に、僧侶しか入れない結界の中ってことだ。ホントにいいの?と思いつつも、滅多にないチャンスなのは確か。管理者がOKしてるんだからと、お言葉に甘えて上がらせていただいた。
そして、金色の阿弥陀如来像を間近に見ることができた。

おじさんの話は続く。
仏様の手の形は、親指と人差し指とで輪を作る上品じょうぼん、中指とで作る中品ちゅうぼん、薬指とで作る下品げぼんがあり、これが上品・下品じょうひん・げひんの語源だそうだ。
これはあとから自分で勉強したことだけど、この手の結びのことを印相(または単に印)というらしい。上品・中品・下品の3パターンと、上生じょうしょう中生ちゅうしょう下生げしょうの3パターンの組み合わせで、全9種類あり、これを九品印くぼんいんというらしい。なかでも上品下生を来迎印らいごういんと呼ぶみたい(ただし諸説あって、逆の下品上生とする説もある)。
で、ほとんどの阿弥陀如来は上品らしいんだけど、この恵心院のご本尊は中品なのだ。おじさんが関係者に聞いて回っても、その理由は判らなかったとのこと。どうしてこの形なのか、謎のまま。そもそもいつ作られた仏像なのかも謎。面白いもんだ。

おじさんは僧侶ではないそうだ。夢にここの仏様が何度も出てきて、扉を開けてくれと頼まれ、比叡山にその話をしたら、しばらくして本当に鍵を預かることになったのだと言う。
なぜおじさんが頼まれたのかは不思議な話だけど、誰かに開けてもらわなければならなかった理由は、ここ数年住職がいないせいだった。適当な方が見つかれば良いのだけど、前述の通り高僧ゆかりだからか、寺格が高く、僧階(お坊さんの位)もそれ相応の方でないとダメなのだとか。
なかなか決まらずに来たけれど、もうすぐ源信が入寂にゅうじゃくして千年の法要を迎えるので、さすがにそれまでには決まるだろうと。

彼の計らいで、僕らが中に残ったまま、外から扉を少しの間だけ閉めてみせてくれた。当たり前だけど、電気が無いから真っ暗になる。
こんな中にずっといたら淋しいし、最初に僕たちがしたように拝んでくれる人が来てくれるほうが、仏様にとってとても良いことだって。なるほど、解る気がする。僕らを中に入れたり近くで拝ませていただいたのも、仏様のことを思ってのことなんだろうな。

他にも、結果的に説教みたいな話なども聴いた。ずいぶん長い時間彼と話したけど、どれも大変興味をかき立てられる内容だった。
本来非公開なので、写真はお堂内の部分を強めにぼかし加工してる。当然の配慮かと。お聴きしたことについては、オープンにして構わないだろう。

や~……またとない経験をした!つくづく、旅は出会いだと痛感!こんなことがあるから、旅行はやめられないよ。

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思わぬところでピークに達したけど、次に向かったのが元三大師堂がんさんだいしどう
元三大師とは良源のことで、先の源信の師匠である。おみくじの創始者とも言われてるそうだ。おみくじ引くこともできたけど、気乗りしないのでパス。

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最後に寄ったのが、根本如法塔。
他の観光客がガン無視してるような所だったけど、めっちゃカッコいい塔だ。

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もう一枚。木の枝に遮られて全体を見渡せないが、それが良い。紅葉の時季も綺麗だろうなぁ。
もっとみんな寄ればいいのに。

東塔、西塔、横川と巡って、どの区域にも見所があるのが良くわかった。時間的にはちょっと押したけど、その価値は多いにあった。
少し足を伸ばさないと回れない所には今回行かなかったから、次の機会にはそれらにも訪れたい。

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