如意輪寺の蔵王権現

2022年11月11日金曜日 19:07

如意輪寺にょいりんじは、奈良県吉野郡吉野町吉野山にある寺院。後醍醐天皇の南朝勅願時であるが、ここに日本一と称される木造蔵王権現があると知り、ぜひとも拝んでみたくなった。

下千本駐車場まで戻ってきた僕らは、車に乗って一度下山し、近鉄吉野線の踏切を渡って、桜井吉野線から再度上った。こちらのほうが路が広いし、如意輪寺に行くには好都合。駐車場まですんなり走れた。


駐車場の脇から裏参道に入ると、奇麗な紅葉が。山全体の見ごろはもう少し先だろうけど、これはこれで良い。


裏山門をくぐって境内へ。本殿の横手に出たので、ぐるっと回って拝観受付に向かう。タイミング悪く、御朱印を求める方で列ができており、結構待つことになった。それからようやく受付。


まずは後醍醐天皇御霊殿。偶然だけど、特別御開帳中。和傘や菊で飾り付けられていて、良い雰囲気だな。受付の建屋沿いにも、菊の花手水が並べられている。


道なりに進むと、二河白道庭園があった。「釈迦は『行け』と発遺し、弥陀は『来い』と招喚す」を表現しているそうだ。釈迦如来と阿弥陀如来を表す石柱の間に、火の河と水の河とその中を貫く白道。
此岸と彼岸をこんな抽象的に体現するなんて、面白いね~。それに河が美しい。嫁も興味深そうに眺めていた。

それから宝物殿。後醍醐天皇や楠正行くすのきまさつらゆかりの品々などを納める。
ここに蔵王権現像が厨子と別々に置かれていると聞いたのだけど……見当たらない。おかしいな。そう思い境内図を確認すると、さっき素通りしてしまった建物の名前が、権現堂じゃないか。そちらか。

ということで、権現堂に入ると、お目当ての蔵王権現が厨子に入った状態で安置されていた。見た情報が古かったんだろうか、場所も厨子と別々というのも違っていた。ともあれ、拝することができて良かったぁ。
嘉禄2年(1226)源慶の作である重文・厨子入木造蔵王権現立像。慶派仏師らしいリアリティのある造形で、決して大きくはないのに、圧倒される迫力を放っている。右足を高く上げ、左足で盤石を踏みしめ、右手に三鈷杵を掲げ、左手を腰に当て、怒髪天を衝く。観る者を威圧するほどの激しい忿怒の形相。巨像ゆえに頭部が強調された金峯山寺のそれと比べて、端正なプロポーション。額に第三の目があるのも異なる点。火焔光背ではなく炎をその身に纏っているのも、迫力を強めている要素かもしれない。一口に言って、カッコいい!

吉野山での予定をこなせたところで、ぐんと北上して平城宮跡へ。みやと通りを抜けて、資料館の駐車場まで。小学生の遠足か何かの観光バスでかなり埋まっていたが、なんとか停められた。
時間に余裕があれば、もう一つ行きたい所があったのだけど、閉館が早いのなら資料館を優先したらいいんじゃない、って嫁が気を回してくれたのだ。いつもいつもありがとう。


平城宮跡資料館の秋期特別展『地下の正倉院展 -平城木簡年代記〔クロニクル〕-』。地下の正倉院展は毎年恒例だけど、今回は特別。2022年は、平城宮跡が史跡に指定されてから100周年、さらに奈良文化財研究所が設立されて70周年という、記念の年なのだ。
入館したら早速、本展と、あとで行くつもりの記念特別展両方の図録を購入。常設展示をすり抜けて、企画展示室へ。
ニコニコ美術館の「地下の正倉院展 奈文研研究員と巡ろう vol.1」で予習していたので、見どころをピックアップ。長屋王を「親王」と表記するアワビの「贄」の荷札は、2年前に見逃した木簡なんだよね。やっと観られた!「奈良京」と記された木簡にもロマンを感じる。万葉仮名で和歌が記された木簡なんて、つい先日ニュース記事を読んだばかり。左大舎人寮の考文の付札には、「和銅元年」と平城遷都よりも前の年の記載が。精巧に作られたレプリカも良いけど、やっぱり実物を見学できると、嬉しいなぁ。


館を出る前に、奈文研の文化財保存修復研究基金の募金がてら、なぶんけん応援ガチャを回す。なんと、1発で長屋親王木簡のピンバッジが!わーい、一番欲しかったやつ~。

宮跡を歩いて行くこともできるけど、ここまででかなり体力を消耗しているので、車でぐるりと回り込んで朱雀門ひろば交通ターミナル駐車場へと移動。
それから、天平うまし館の『IRACA COFFEEイラカ・コーヒー』で休憩。大和茶のミニパフェにアイスコーヒーをブラックで。嫁にもひと息吐かせてあげられた。


最後に、平城宮いざない館の企画展示室にて、記念特別展『のこった奇跡 のこした軌跡 -未来につなぐ平城宮跡-』を観賞。第1回の発掘調査から最新調査に至るまでの代表的な出土遺物のほか、奈文研の組織や活動についても紹介されていた。軒平瓦の前には「かわらびっとちゃん」、硯の横には「えんめん犬」など、展示に関連する「キュートぐみ(宮都組)」のぬいぐるみが置かれているのが、可愛い。
ついでに、館内のショップにて元正天皇展の図録をお迎えして、帰途に就いた。平城宮跡から自宅へのルートは走り慣れたものだ。

5泊6日に及ぶ長期旅行、それも国内、ほぼ島根、ちょこっと奈良。上手くいったことばかりでなく、失敗や反省もあるけど、無事に帰ってこれた。たくさんの出会いがあった。こんなに充実した時間は久しぶり。
なかなかまとまった休暇を取るのは難しいけど、また嫁と一緒におでかけしたいな。

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