紅茶と珈琲と足立美術館

2022年11月8日火曜日 12:35
ドイツの高級紅茶ブランド『Ronnefeldtロンネフェルト』より、国内初の認定をされたティーハウス、『紅茶専門店ロンネフェルトティーハウス松江』。ロンネフェルトの国際資格「ティーマスターゴールド」の運営する店舗は日本でも数少ないが、それもティーハウスとなると、今やここ松江だけではないだろうか。

雲南オロチ巡りが思いの外さくさくこなせ、行くつもりだった所をすべて回ったところで、時間も頃合い。松江市のヴィーナスガーデンへと向かった。さすがに平日の陽の傾きだした16時では、他にお客はいなさそうだ。
予約している旨を伝えると、一番奥のソファ席へ通された。とても落ち着いた雰囲気の店内。


僕らがオーダーしておいたのが、クラシックアフタヌーンティーセット。最近ヌン茶とかヌン活とかって流行っているようだけど、僕たちは、ただただ美味しい紅茶を心ゆくまで楽しみたい……そのために選んだ。我が家には十を超える茶葉を常備しており、毎日その日の気分に合わせて飲んでいるくらい、お茶が大好きな二人なのだ。
このセットでは、約60種類もの紅茶から好きなものが飲めるだけでなく、おかわりも、種類の変更もできる。僕はまず、珍しいティーをとヌルボンを試し、次にスモーキーなフレーバーが好きだからとラプサンスーチョン、最後は定番イングリッシュブレックファストをストレートで。
サンドウィッチやスコーン、デザートをつまみながら、これまでの旅行2日間を振り返り、ゆったりと過ごした。至福……。嫁のたっての希望で組み込んだけど、僕にとっても素晴らしい時間になった。もちろん、嫁に喜んでもらえたのも嬉しい。

すっかりおなかが満たされたので、そのあとはホテルに帰って寛いだ。小腹が減ったら軽く晩御飯と考えていたけど、その必要はなかった。それに、いくつものスポットを渡ったからか、くったくた。一つひとつの滞在時間が短くても、数をこなすと相当疲れるって学んだよ。

翌朝、提携駐車場の定期券を返却し、チェックアウト。昨日も行った安来市へ。移動効率の悪い旅程だが、平日の朝に持っていきたかった予定がある。
広瀬荒島線に入る頃には、周囲は山と畑ばかりになっていた。

9時前に、足立美術館の駐車場に到着。狙い通り開館前ながら、観光バスを含め、早くも多くの車が停まっている。
足立美術館は島根県安来市にあり、横山大観よこやまたいかんを中心とした近代日本画などを所蔵する美術館。広大な日本庭園が、何より超有名だ。
嫁が庭園好きだし、大観の作品にも触れてみたい。ということで、計画に組み入れていた。
まだ開いていない土産物店の前を通り過ぎ、館内に入った。入館料に、しまねっこクーポンを使えるのが有り難い。


工芸品などを眺めつつ順路を進むと、まず見えてきたのが苔庭。灯台に見立てた岬灯籠の前には、白砂の海が広がり、緑とのコントラストを生み出している。そこへ紅葉がアクセントを添える。


続いて足立美術館の象徴・枯山水庭は、一大パノラマ。借景と見事に融け合っている。基本的にガラス越しの観賞となるけど、これなら季節・天候を問わず楽しめそうだ。この日は晴れていたが、雨の日も趣があるに違いない。
当然大人気のエリアで、開館に合わせて押し寄せた人たちが、記念撮影に勤しんでいた。しかしその波が過ぎると、ぱたっと静かになった。うん、これでこそ、平日の朝に訪れた甲斐があるというもの。


大観の作品「那智乃滝」をイメージしたという、鶴亀きかくの滝。ここは建屋の外から望むことができた。


池庭の背後には、生の掛軸。寺院などで時折見かける趣向だけど、やっぱ良いね。


白砂青松庭もまた、大観の「白沙青松」をモチーフにしているとか。いつまででも眺めていられる風景……。

日本一の庭園を堪能したあとは、絵画鑑賞。秋季特別展「没後80年 竹内栖鳳」を観て回りつつ思ったのは、当たり前だけど画風の好き嫌いが出ちゃうなぁと。美術には、歴史と似たところがあって、背景を知ることで見方が変わって面白みが出たりもするけど、素直に作品と向き合って、感じたままに受け取ってもいい。
そして、もうひとつ楽しみにしていた、大観室の「秋の横山大観コレクション選」。
なんといっても「紅葉」!一双の屏風に、紅葉の真紅と海の群青の対比が鮮やかなだけでなく、飛び立つセキレイ、力強い樹の幹……圧倒された。ミュージアムショップには左隻だけをプリントしたグッズがたくさんあったけど、違うんだって、嫁も言っていた。右隻のセキレイがいるといないのとじゃ、全然印象が変わるんだって。某O木さんを真似て、「いい大観ですねぇ~」などと小声で呟きつつ、引いたり近づいたりして、じっくり味わった。
大観のそれ以外の作品では、「白梅」、「霊峰不二」が特に心に残ったなぁ。
順路に沿って本館内を戻っていくと、かなり人が増えていることに気づいた。朝イチに行ったのは正解だった。それから結局新館の現代日本画も回ってから、館外に出た。
開店していたお土産屋さんを物色するも、お目当ては見つからず、次の目的地に向かうことにした。


松江市へと引き返し、『CAFFE VITAカフェ・ヴィータ』へ。日本を代表するバリスタ・門脇裕二氏がオーナーという。島根、凄いカフェがいくつもあるんだね。知らなかった。
ドアを開けると、オーナーご自身がレジカウンターにいらっしゃった。お昼はカフェ利用より豆の購入の方が多いのかな。カフェ利用をお伝えして、席に通していただいた。


偶然ながら、お店が20周年だそうで、アニバーサリーブレンドを出されていた。せっかくなので、僕はこれをチョイス。嫁はオーソドックスにブレンド。軽食が欲しかったから、これらにパニーニを付けた。
香しいコーヒーを一口含む……驚いた。雑味が一切無い!どこまでも澄んだまろやかな味!コーヒーは全然詳しくないけど、このコーヒーが美味しいことだけは判る!新鮮な豆を卓越した知識と技術でドリップすると、こんなにも違うのか。大袈裟かもしれないけど、今までに飲んだコーヒーの世界がひっくり返った。嫁も目を見開いていた。
パニーニはベーコン・チーズ・トマトを食べたんだけど、こちらも美味。コーヒーとの相性バッチリ。
ごちゃごちゃ語るのはスマートではないなと思い、「ごちそうさまでした。おいしかったです」と簡単にお礼を言って、お店を後にした。

嫁と良かったね~と交わし、素敵な出会いの余韻に浸りながら、次なる目的地へと走り出す。

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