月讀宮と葭原神社の遷座

2024年5月24日金曜日 11:00
月讀宮つきよみのみやは、三重県伊勢市中村町にある神社で、内宮の別宮。月読宮の宮域に接して、同じく内宮末社の葭原神社あしはらじんじゃも鎮座する。
参詣に際し、伊勢神宮に対する見方が大きく変わるような光景にも巡り会えたよ!

月讀宮については『皇太神宮儀式帳』に、
月読宮一院〈大神宮の北へ三里のところに在り。〉
とある。『続日本紀』宝亀三年(772)八月甲寅条に、
(ツクヨミの)荒御玉あらみたま命・イザナギ命・イザナミ命を官社に入れた。
『三代実録』貞観九年(867)八月丁夘朔条に、
伊勢国のイザナギ・イザナミ神、社を改め宮と称し、月次祭に預かることを勅命された。
とあり、月読宮一院に含まれていたツクヨミの荒魂あらみたま・イザナギ・イザナミの三座は、のちに官社となり、イザナギ・イザナミはさらに宮号を得たようだ。そのため『延喜式』「伊勢大神宮式」には、
伊佐奈岐宮二座〈大神宮の北へ三里。〉
 イザナギ尊一座
 イザナミ尊一座
月読宮二座〈大神宮の北へ三里。〉
 ツクヨミ命一座
 荒魂あらみたま命一座
とある。
外宮の別宮にも月夜見宮があり、ツクヨミをお祀りする神社が多い理由についてはそちらで触れた。内宮や外宮の宮域から離れていることも、その根拠となるだろうね。

さて、内宮の早朝参拝を終え、一旦ホテルに帰った僕ら。まだ7時にもなっていない。9時まで寝直すことにした。早起きは大変だけど、こうしてホテルを拠点にすることで、上手く休めたと思う。
二度寝から目覚めたら、今度はしっかり支度。ブランチのために10時前に再出発した。

向かったのは『伊勢うどんのまめや』。大正十二年(1923)創業の老舗だ。伊勢に来たなら伊勢うどんを食べたい。ここは朝10時開店なので、遅めの朝食にもなって有り難い。

軽く済ませたかったから、二人とも伊勢うどん(ミニ)を注文。写真では見たことあったけど、確かに太い。秘伝のつゆは見た目ほど辛くなく、しっかり絡めても丁度良いお味。うどん、柔らか~!柔らかいうどんだと聞いてはいたけど、そんな次元じゃない。一度食べたらクセになる柔らかさ。うどんはコシだと思っていた僕の概念を崩された。衝撃の食感と美味しさ。
胃腸が本調子でない嫁も、このうどんは食べやすかったようで、笑顔ですすっていた。最高の朝食になったよ。

それからまた御木本道路を走って、宇治浦田町の交差点を今度は左折。車通りが増えたことを感じつつ、月讀宮の駐車場へ。

すると、駐車場だけでなく鳥居の奥にも「神宮司廳」と書かれた車両がたくさん停まっていて、何やら作業中。それにしても随分難しい漢字だなと思って調べたら、神宮司庁じんぐうしちょうだった。伊勢神宮に関する事務を司る機関らしい。
気にはなるけど、とりあえず狭くなった入口を抜けて、参拝に向かった。

境内には4つのお宮が並んでおり、カメラの画角に収まりきらない。奥から月讀荒御魂宮つきよみあらみたまのみや、月讀宮、伊佐奈岐宮いざなぎのみや伊佐奈彌宮いざなみのみや

まずは月讀宮からお参り。よく見ると、他のお宮より大きい。
新緑の美しさにも惹かれた。

イザナギとイザナミが仲良く並んでいると、ニッコリしてしまう。
スーツケース片手に巡っている女性を見かけたけど、あれはしんどくないのかな。

それから葭原神社のほうへ。資材やらが地面に置かれていたけど、お邪魔する。もしダメなら注意されるだろうと踏んで。

葭原神社を無事に拝礼。御祭神は、大歳神の御子であるササツヒコと、ウカノミタマノミオヤ、イカリヒメ。
特に咎められなかったので、作業を少しだけ見学。現在の社殿の隣に、新しい社殿を建てている?式年遷宮の一環?と疑問が湧いてきたので、調べてみた。

神宮は、内宮・外宮のほか、別宮・摂社・末社・所管社を合わせた125社から成り立つ。このうち、式年遷宮の対象となるのは正宮と別宮だけで、摂社・末社・所管社の109社は遷座せんざが行われるとのこと。遷座は修繕しゅうぜん造替ぞうたいに大別される。修繕は、新しい御殿となって20年目に朽ちた部分を治すこと。造替は、修繕からさらに20年後に新しい御殿を造ること。すべての神社の遷座が完了するまでには、約10年かかるという。「第62回式年遷宮」は2015年に完遂した。それに引き続き遷座が始められたわけだけど、つまり2025年頃まで続くということだ。
大神が本殿から新殿へとお遷りになる遷御せんぎょの儀がとかく注目されがちだけど、さかのぼること8年前、山口祭から式年遷宮は始まる。次の山口祭は2025年。ということは、伊勢では毎年どこかしらで宮遷しのお祭りが行われているわけだよ!
式年遷宮は20年に一度……というのは間違っていない、正しい。だけど、神宮125社の宮遷しにまで視野を広げると、まったく違って見えてくる。これは紛れもなく、日本最大のお祭り。それに気づかせてくれる場面に出会えて、本当に良かった。
これを踏まえると、葭原神社はどうやら修繕の真っ最中のようだ。隣に建てられ始めているのは、仮殿のはず。修繕の間一時的に神さまにお移りいただく所ね。

早朝から幸運な偶然が続いているなぁ。再訪する楽しみが、またひとつ増えたよ。

【参考文献】
せんぐう館『神宮の遷座:摂社・末社・所管社』せんぐう館,2016年

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