伊勢 三玄

2024年5月24日金曜日 21:25
『伊勢 三玄さんげん』は、三重県伊勢市は宮川のほとりにひっそりと佇む日本料理店。一品一品の仕事ぶりが丁寧で感動!日本料理の奥深さを教えてもらった思いがする。

瀧原宮からホテルへ戻ったのが15時半過ぎ。幸い敷地内駐車場の空きがまだあった。それからフロントマンに相談して、タクシーを予約してもらった。慣れた様子で電話していたので安心。どこにタクシーをつけたら良いのかとか、ホテルの方に任せたほうが確実だからね。そのあとは部屋で2時間ほど休憩。丸一日予定を詰め込んだりせず、こうして休んでおくと次の日に響かない。

予約時間に合わせて、三重近鉄タクシーに乗ってお店へ向かう。タクシーのほうは送迎料金150円だけで、予約料金は掛からなかった。
運転手さんとの会話で記憶に残ったのが、お伊勢参りは何回目ですか?と質問されたこと。そうか、地元民からすればお参りしているのは当然で、回数を話題にするんだ。土地柄が出るねぇ。それとアコヤガイが食べたいという話をしたら、現在では高級食材だが、真珠養殖の最盛期にはタダで配られるほどたくさんあったという、地域事情まで知ることができた。うーん、興味深い。
ルートを運転手さんが考えてくれたけど、どこも路が混んでいて予約より10分遅れで『伊勢 三玄』に到着。それでも大将が笑顔で迎えてくださった。

少しさかのぼって、「内宮おかげ参道」を通って駐車場へ歩いていた時のこと。お店から電話があり、何かの確認かと思いきや、たまたまキャンセルが出て個室が空いたので、カウンターでもどちらでも良いという。嫁に確認したら個室が良いとのことだったので、そちらでお願いした。
そんなことがあって、1つだけの個室へ案内されたのだった。

というわけで、静かな個室にてまずお茶が出された。昨日のすき焼き屋さんでもそうだったような。折敷の真ん中に茶碗だけって、なんだか品がある。
飲み物は日本酒をと思い給仕さんに尋ねると、色々取り揃えているとのこと。スッキリ辛口系でお料理に合うものをとだけ、注文をお願いした。

今回は全10品の会席を予約。特に印象的だったものに絞って、語っていこう。料理の盛り付けはもちろん、器がどれも美しい。たとえばお椀の蓋の裏に藤、季節の花だよ。

御造里おつくりのキンメダイは焼き目が付いていて、炭を押し当てて香りを移しているんだそうだ。そんな技があるんだ!炭の香ばしい香りが、キンメダイの甘味を引き立てている。

イカに切り込みが入っているのは普通のことだけど、それがとても細やか。初めて味わう食感を生み出していた!
包丁ひとつ、手間ひとつ、アイデアひとつで、こんなにも変化するものなのか……和食なんて素材が良ければ大差ないんじゃないかなんて、とんだ勘違いだった。日本料理の食体験の浅さを思い知る衝撃だった。

御飯は釜で炊き立ての御糸米みいとまい。多気郡明和町の御糸みいと地区でとれるお米は、このあたりではブランドになっているそうだ。そういえば、おかげ横丁でのランチでも御糸産コシヒカリを使っていた。
1杯目は白米、2杯目は松阪牛のせ、3杯目は卵かけ御飯。3杯と聞いて身構えたけど、おなかに合わせた量を盛ってくれた。香の物も美味しかったし、御飯だけでも楽しませてもらった。

接客も素晴らしい。
僕らは食べるスピードが速くないから、給仕さんが頃合いを図って来られたときにまだ途中だった時があったんだけど、ごゆっくりお召し上がりくださいませと言って、すっと下がってくれたんだよ。お店によってはお構いなしに次のを配膳してきて、テーブルの上にどんどん料理が溜まることがある。そういうお店には二度と行かない。その点ここは、ちゃんと客の食べるペースに合わせてくれる。目の届きにくい個室であっても。
少し質問をしたら、冗談も交えつつ答えてくれて、場が和んだ。僕が折敷に雫をこぼしてしまった時には、お皿を下げる際に布巾でさっと拭ってくれた。それら一つひとつの所作にも、品が感じられた。
帰りのタクシーの手配の確認も、実にスマート。
会計はレジカウンターですることになっていて、そこに暖簾が掛かっていた。接待やデートで、支払いしている所をゲストに見られないで済むようにとの配慮だろうか。

これは余談なんだけど、嫁の胃腸の調子がまだ良くなくて、結果的に個室で助かった。揚げ物や脂っこい物が受け付けないみたいで、それは僕のほうで引き受けた。お酒は結局僕だけしか飲めなかったので、他にも試してみたかったな。とはいえ全体的には優しいお味がほとんどで、嫁も美味しく楽しく食事ができた。

最高の夕食になった。お伊勢参りを恒例にして、毎年三玄さんにも食べに行こうか、なんて嫁と話したくらいにね。

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