神武東征オフは等彌神社から

2023年7月16日日曜日 14:20

この度、「神武東征・夏のビアホールオフ会」という素敵すぎる企画を立ててくださったのが、槇野むいさん。参加者は僕のほかに、筑前由紀さん、石上聖さん。計4名で催されることとなった。その最初の予定が、奈良県桜井市の等彌神社とみじんじゃ
等彌神社は、もちろん神武東征ゆかりの地。『日本書紀』によれば、
神武天皇四年、霊畤まつりのにわ(祀りの場)を鳥見山とみのやまの中に設けて、そこを上小野かみつおの榛原はりはら下小野しもつおのの榛原と名づけた。そして皇祖天神みおやのあまつかみを祀った。
といい、この鳥見山の西麓に鎮座するのが、等彌神社だ。

昭和一五年(1940)に所謂“皇紀2600年”を迎えるにあたり、「紀元二千六百年奉祝記念事業」の一環として「神武天皇聖蹟顕彰碑」が主に東征ルートの各所に建立された。その調査実績を記録し当時の文部省が出版したのが、『神武天皇聖蹟調査報告』。調査委員会には、会長の三上参次をはじめ錚々たる歴史学者が名を連ねる。論争が巻き起こった「高千穂宮」など、証拠が十分でない場合は決定を見送るなど、国家の威信をかけたプロジェクトだからか、結論ありきではない学術的に真摯な調査がなされた印象だ。
この調査によって「鳥見山中霊畤とみのやまのなかのまつりのにわ」は、現在の奈良県桜井市桜井の鳥見山付近と認められた。鳥見山北面には「外山とび」の地名が残っており、トビはトミの転訛と解せられること、『日本書紀』天武巻にある「迹見とみ駅家」の所在地にあたること、式内社の「等彌とみ神社」が鎮座していることなど、当地は古くから「トミ」と称されているとし、等彌神社所蔵の文書にも鳥見山中霊畤の地と伝えていることなどを鑑みての決定だった。ただし、この山の山頂に霊畤の遺跡を求める説については、価値ある証拠が存在しない上、『日本書紀』に「山中」などとあるのにも合致しないことから、適当でないと否定している。
「鳥見山中霊畤」には、もうひとつ有力な候補地がある。同県宇陀市の榛原はいばら地域だ。調査では、この地は古来「萩原はぎはら」と呼ばれた所で「はいばら」の音便と思われるが、萩原は大和国に広くみられる地名であり、特にこの萩原を「榛原」の遺称と認められるだけの史料が無いこと、一帯を「トミ」と称した証拠が十分でないこと、皇祖天神を祀るにしては橿原宮から遠すぎることなどから、決定には至らなかった。
一読した限り、報告の内容には首肯できる。

ところがよくよく調べてみると、宇陀のほうにも説得的な意見があった。
鳥見山中霊畤顕彰会の著した『敢て天下の識者に問ふ』によれば、昭和一五年から遡ること32年前、明治四一年に当時の内務大臣より参考伝説地として認定されているという。うちのほうが先だ、と。他にも各地誌や注釈書でも宇陀のほうを伝承地としていることなどを、列挙している。
これだけでは主張として弱いのだけど、『日本書紀』神武天皇即位前紀戊午年九月条に、菟田川うだがわの朝原にてタカミムスヒなど諸々の神に戦勝祈願を行っていることを指摘し、大和平定の暁にその時の御恩に応えた祭祀の場が「鳥見山中霊畤」であるというのだ。宇陀川は榛原の南を流れている。「皇祖天神」がタカミムスヒを指すという説もある。宇陀は、神武一行が熊野を越えて大和に入った最初の地でもある。なるほど!物語としては非常に納得のいく流れだよね。
宇陀の榛原説は、古くから「トミ」の地名を伝えていないことが弱点。かつて大伴おおとも氏が所有していた庄園に「跡見田庄とみのたどころ」があり、『万葉集』の「跡見田庄で作った歌」にある「吉名張よなばり」が桜井市吉隠よなばりに比定されており、『日本書紀』持統巻により当時、吉隠が宇陀郡に属していたと解ることから、一応「トミ」の名が無いわけではない。ただ、山深い吉隠で水田を営み得たかは疑問。
そんなわけで、僕としては桜井と宇陀のいずれとも決めかねる、というのが正直なところだなぁ。

さて。
オオモノヌシとコトシロヌシを追う一人旅に区切りをつけ、宿泊先近くのコインパーキングに車を置きに行こう。今井町から橿原市営八木駅前南駐車場まではすぐそこ。収容台数が多くて助かる。葛城方面へ向かうときの渋滞で時間をロスして、昼食を摂るにはあまり余裕がなかったので、コンビニのおにぎりで手早く済ませた。
待ち合わせ場所の桜井駅に向かうべく、大和八木駅へ。


とその前に、かしはらナビプラザに立ち寄る。ゲーム「STREET FIGHTER」シリーズの「リュウ」の銅像が設置されたと聞いたので、見てみたかったんだ。スト2世代だから、とても馴染み深いキャラだしね。
これがめちゃくちゃカッコいい!力強い構えに隆々とした筋肉、たなびくハチマキに至るまで、イラストからそのまま飛び出してきたようなリアルな質感。協定を結んだ橿原市とカプコンの本気度が窺えた。一見の価値あったよ。

慣れない大和八木駅構内の案内に迷いつつ、桜井・長谷寺・榛原・名張・伊勢中川方面のホームへ。近鉄はわかりにくいというか、苦手意識があるなぁ。迷っても時間に間に合うように行ったけど、結果的に少し早めに桜井駅に着いた。
この日は梅雨明け間近ながら30度を超える酷暑。駅南口のコンビニで、涼みながら待ち合わせ。そこへ、主催のむいさんからグループDMで、この暑さだし、神社まで登りなのでバスを使おうかとの提案が。バス停の場所の確認がてら時刻表を見ると、少ない本数ながら行きだけは使えそう。
そうこうするうちに、むいさんが到着。彼女とはTwitterで5年以上付き合いがあるし、イベントで何度かお会いしている。人見知りするから、最初に落ち合えてホッとした。
しばらくして由紀さん、聖さんも合流。由紀さんはTwitterで相互ながらオフでは初めて。聖さんは完全に初対面だ。テーマに興味のある方々のはずだし、一緒に行動する中で共通の話題も見つかるだろうから、大丈夫かな。
バスの時刻まで20分ほど待つので、どこかで日除けできないかと、エルト桜井という建物に入ってみた。イートインスペースか何かだろうか、テーブルと椅子があったので、こちらで休ませていただくことに。腰を落ち着けられたことで、色々とおしゃべりして少し打ち解ける時間が持てて、良かったなぁ。


そこで、由紀さんから自作の『飯塚市 神武天皇伝承地巡り』の冊子を、むいさんからコーヒーに添えてイラストを、それぞれ頂いてしまった。由紀さんは神功皇后推しながら、九州には神武天皇伝承地も多いということでまとめられたそうで、ここまで作れるって凄いし、土地独自の伝承大好物だから嬉しい!むいさんちの狭野さまのイケオジっぷりがまた素敵!
僕にはお渡しできるようなものなんて無いから、別の形でお返しできればなぁと。
それから予め確かめておいた桜井駅南口1番のりばより、奈良交通バスに乗って神之森町かみのもりちょうまで。バス停から等彌神社へは、ほんの数分歩くだけで済んだ。全員日傘も水分も持参で対策バッチリだけど、暑いものは暑い。バスを選んでくれたむいさんの判断は正しかったね。


等彌神社、むいさん以外は初参詣ということで、めいめい写真を撮る。お互いに譲り合いつつ好きな画角からシャッターを切る時間は、自分と同じことをみんなもするんだなぁ、仲間だなぁって微笑ましく思った。
それにしても入口付近には、大きな信楽焼のたぬき像や桃神池といった、どんないわれがあるのか不思議なものが多いな。


趣のある、二の鳥居から奥へ続く参道。社叢が自分たちを陽射しから守ってくれるから、有り難いね。この時期に神社へ行くと、いつも思う。
それぞれの感想を聞いていると、だんだん好きなものなどがわかってくるのも面白い。


その先の猿田彦大神社は、磐座をお祀りしている形態もさることながら、味のある筆致の石碑が注意を引いた。

鳥見山は、山頂まで観光散策路が整備されているようだ。「霊畤」は山頂ではなく「山中」と記されているけど、それはさておき、こんな夏に登るものではないよねって話になった。


本社である上津尾社かみつおしゃは西面しており、鳥見山を仰ぐ格好になる。御祭神はオオヒルメノムチ。アマテラスの別名なので、「皇祖天神」をそう解釈されているということかな。
『特選神名牒(大正一四年(1925)』などでは御祭神をニギハヤヒとしており、トミはトミでも現在の奈良市富雄とみお地域に比定されている地と混同した説を採ったものだろうか。
神社幕に金鵄きんし/こがねのとびの紋が施されている。トビというにはハトっぽくもあり、でも金鵄がどんな鳥かわからないしなぁ。


本殿は見えづらいけど流造かな。
本殿の様式に興味があるのは、どうやら僕だけらしい。他の皆さんは弓張社を参拝していた。


南側の鳥居をくぐって境内社を巡り、次は下津尾社しもつおしゃ。向かって右が八幡神社(応神天皇)、左が春日神社(アメノコヤネ)。
こちらの扉にも金鵄の彫刻。弓を掴む形になっていて、物語での描写とは異なるけど、デザインとしてカッコいい。


最後に入口あたりまで戻り、道標に従って顕彰碑のほうへ。一旦出ないと行けないのかと思っていたけど、境内から行けるんだね。


「神武天皇聖蹟鳥見山中霊畤顕彰碑」を前に、話が弾む。僕が『神武天皇聖蹟調査報告』を読んだと言うと、むいさんは宇陀の榛原説を推したいそうで。
その理由を聞いて興味を引かれたので、帰宅後調べたのが冒頭述べたもの。推す気持ち、今ならとても解る。どっちがエモいかでいったら、断然そっちだもの。
そのあと、御朱印を頂く方は社務所でお願いするなどした。

桜井駅まで徒歩20分。地図が読める読めないという話題になり、僕が先導することにした。アプリ使うし、ほぼ北へまっすぐと簡単な道のりだったけどね。
次はいよいよ橿原神宮だ。

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