華やかな平等院鳳凰堂の阿弥陀如来

2016年10月25日火曜日 11:20

十円玉のデザインで知られる平等院は宗派に属さない単立寺院。鳳凰堂をはじめとして国宝が多く、世界遺産にも登録されてる。
鳳凰堂は中堂,両翼廊,尾廊から成り、中堂正面上部の丸窓からは阿弥陀如来が拝める。この阿弥陀如来坐像は最も古い寄木造りの仏像で、平安時代最高の仏師、定朝じょうちょうの作。定朝の遺作とされるものは多い(即成院の阿弥陀如来と二十五菩薩もその一例)が、確実といわれるのがこの鳳凰堂の阿弥陀仏だ。
中堂内上部の壁には雲中供養菩薩像52躯が掛け並べられる(内26躯はミュージアムに展示)。
嫁は行ったことがないというし、日本式仏像のひとつの到達点ともいえる阿弥陀如来を観るためにも、今回の旅行に組み込んだ。


お茶したことで、一日目の予定は全部こなせた。翌日に備えるため、宇治の旅館に移動する。
今回お世話になったのは光流園静山荘。部屋から宇治川の流れが眺められる、なかなか風流な旅館だ。
正面が駐車場になってるので、空いてるとこに停めて、フロントへ。最近リニューアルしたらしく、綺麗なフロントスペースだった。
旅館については簡単にまとめておこう。
部屋は、古さは感じるものの掃除が行き届いてる。ただ部屋割りが、宿泊客少なそうなのに隣片側埋まってたのは、配慮が足りない。
料理はまずまず。担当の仲居さんが卒のない応対だったので、部屋食は楽しく美味しく過ごせた。朝食担当も丁寧な接客。その朝食がほとんど冷めた作り置きだったのは、残念だったけど。
温泉ではないけど大浴場は気持ち良かった。男湯を独り占めにできたのはツイてる。嫁に聞いたら、女湯も貸し切り状態だったそうだ。
駐車場をチェックアウト後も使わせてもらえたのは有り難かった。
いつぞやの某旅館でヒドい目に遭ったことを思うと、ここは大きな不満が無い。良くも悪くも昔ながらの旅館という印象。他に選択肢が見つからなければ、リピートするかも。

さて翌朝。
今にも降り出しそうな曇天の下、平等院の南門まで歩いた。拝観入口には、平日の9時前だというのに何人かいる。向かいの大型駐車場には、観光バスがすでに停まってるのも確認できた。さすがにメジャースポットだから混雑は避けられないか。


入口を過ぎて旧南門をくぐると、鳳凰堂の裏側が見えてくる。尾廊を見られるのはここからだ。


中堂に近いのもこの位置。屋根の上の鳳凰の形が、肉眼でも結構わかる。レプリカなのは知ってるけど、屋根に乗ってるのが良いね。本物はあとで見られるし。


嫁は初めてだそうだけど、僕は十年ほど前に一度訪れたことがある。ただ、その頃は寺にも仏像にも興味なかったから、十円玉だ~くらいにしか感じることができなかった。
今は全然違う。まるで初めて観るような新鮮な感動があった。まだ正面に回ってもいないのに、お堂の美しさに惚れ惚れしてしまう。どの角度からでも素晴らしい。昨年修理が完了し、創建当時の鮮やかな姿に甦ったというから、以前見た姿とかなり変わってるのは事実だけど、それだけじゃない。自分の見る目が明らかに変化した。
と、のんびりしてたら、団体客にどんどん追い抜かれてしまった。だが後悔はしない。


シーズンということで、修学旅行生の集団がひっきりなしにやって来る。そりゃあもう凄い勢い。大多数は、集合写真撮ったら眺めながらぞろぞろ歩いていくだけ。でもなかには、御朱印を頂くために、先生に許可を得て列から離れてく女子高生もいて、ビックリした。スタンプラリー感覚なのかきちんと意味を理解してるのか、それは判らないけど、熱心だな~とは思った。


鳳凰堂内部拝観の受付を済ませてから、僕らも正面に立った。平安時代の人々がそこに極楽浄土を想起したのも納得の、煌びやかな佇まい。


ここぞとばかりにカップリーしてたら、壮年のご夫婦に声を掛けられて、交互に写真を撮り合うことになった。カップルで自撮りしてるとこうなることが多い。声掛けやすくなるのかな。


昔はまったく意識しなかった阿弥陀如来坐像を池越しに拝む。鳳凰堂は阿弥陀堂ともいう。こうして、阿弥陀堂の外からその尊顔を拝することができるところに、なんともいえない興趣を感じる。
そのまましばらく眺めていたかったけど、真正面からの絵が欲しい人はたくさんいる。最小限をカメラに収めたら、場所を譲ることにした。
少し離れたところから見てると、黄金の鳳凰像に黒いものが乗ってると思ったらカラスだったり、もっと小さな鳥(よく気づいたな嫁)だったりすることも。生きてる鳥からすれば、仲間じゃないのかな。

それから内部拝観。9時半より開始して、以後20分毎に50名ずつ通されるんだけど、僕らはその1回目、9時半の組だ。そのなかでも早めに並んだ甲斐があって、内部でのガイドを最前列、阿弥陀如来の前で聴くことができた。解説が終われば順次入れ替わって前には行けるけどね。
解説以上に、阿弥陀仏に間近で手を合わせられる機会が嬉しい。内部が修理中で、雲中供養菩薩像26躯の一部が隠れちゃってたものの、天蓋や壁扉画、仏像群に囲まれた空間は見事なアート。ため息が出る。スゲーしか言えない自分にも嘆息するが。
限られた時間内で気の済むまで観て回ったら、外に戻った。
で、2組目が阿弥陀堂の前に群がるようすを見て気づいたんだけど、人影が邪魔しない状態で見られるのって、9時半までのわずかな時間しかないんだな。朝イチに行って大正解。

そのあとは平等院ミュージアム鳳翔館へ。鳳凰像の実物や、雲中供養菩薩像の残り半分などを、じっくり観ることができた。
雲中供養菩薩像は見上げるような位置にも飾られてて、阿弥陀堂内部を意識してるんだろう。近くで観たいという嫁の気持ちは解るけど、頭上にあることを想定して彫られたと思われるので、鑑賞にもこれがベストなのかも知れない。
中をぐるぐる巡ったので、ミュージアムショップから出たとき、自分がどの方向向いてるのかわからなくなった。トイレに寄ってから、無駄に遠回りすることに。

予想通り結構な時間を要した。混雑もさることながら、広さの割に見所が多いんだよね。興味の強弱でこうまで見方が変わるものか。改めて行って良かった。
再訪することがあれば、次も朝に行きたい。

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