橿原神宮と神武天皇陵にイワレビコを想う

2016年10月10日月曜日 14:57

神武じんむ天皇は初代天皇。ここから数えて第125代が平成の天皇陛下だ。
神武天皇が即位した地に建つ神社が橿原神宮であり、彼の墓が神武天皇陵である。
どうしても、先の大戦下における国家神道という、軍国主義的教育の影がチラつく名前なので、眉をひそめる人もいるかも知れない。だけど、純粋に記紀を勉強した僕にとっては、是非とも訪れたい場所だった。
っていうか、イワレビコ~ッ、会いに行くよぉ~!っていう感じ。軽い。映画やアニメの舞台となった土地に自分も立ちたいファン心理、ってのが最も近い感覚かな。こんなこというと怒られそうだケド(誰に?)。
……補足しておくと、神武は贈り名であり、本来の名前はカムヤマトイワレビコというのだ。

ここに辿り着くまでには、ちょっとバタバタした。
高天原を出発した僕たちは、次に明日香村を目指した。飛鳥寺などを見るつもりだったんだけど、先日のテレビの影響か、周辺道路は人と車でグッチャグチャ。できればゆったり落ち着いて回りたいので、断念して素通りすることに。――ぶっちゃけ寺おそるべし。
どのみちこの日の予定はあってないようなもので、時間と体力と状況の許す限り行きたいところへ行く、行けなかったところは後日というつもりだったし。奈良は2時間あれば行けるからね。
ただ、昼食も飛鳥でと考えてたせいで、結局ファミレスになっちゃったのは悔しい。

そんなこんなで明日香村から北西に走り、橿原神宮の駐車場に到着。結構埋まってる。
先に神武天皇陵に行き、北参道から橿原神宮へ参拝して、表参道から駐車場に戻ることにした。
外苑道路の歩道を歩いてると、『ようこそ、日本のはじまりへ。』と書かれた幟が何本も立てられてるのが目につく。


御陵への入口は、ぽっかりと路が開けててすぐわかった。この規模、整備が国家プロジェクトであったことを物語ってるよ。


玉砂利が敷き詰められ、うっそうと茂る緑の木々に囲まれた参道は、とても静かで気持ちが良い。散歩するにはもってこいだ。嫁も喜んでた。
小さな女の子を連れたファミリーが僕らの前を歩く以外に人の姿はなく、ほとんどの参拝客が神宮のほうにだけ向かうのだと実感した。


緩やかなカーブを曲がると、真正面に鳥居が見えてきた。造られた景色ではあっても、やはり美しいものは美しい。
参道も広かったけど、鳥居前はさらに広々としてる。左脇に手水場があったので、身を清めた。


抜けるような秋の空にそびえる鳥居。
みささぎを訪れるのは初めてのことだったので一瞬考えたけど、神道式で良かろうと、二礼二拍手一礼。こんなに広いのに、静寂のなかで打つ柏手は響くなぁ。

しっかりお参りしておいていうのもなんだけど、神武天皇の御陵がどこなのかには論争がある。詳細は割愛するけど、記紀ともに畝傍山うねびやまの北のほうと記されてるのを素直に受け入れれば、だいたいこの辺ではある。それほど大きく間違っちゃいないだろうし、ぶっちゃけ違ってても構わないというのが、僕のスタンス。僕自身の考えについては、橿原神宮のことに触れてから詳しく語ることにする。


それにしても、威圧感を受けるのはこの物々しい柵のせいだろうか。これ以上の進入を拒んでる。僕は神社の持つあの外に開かれた感じが好き。だけど、ここにそれが無いのは残念。


柵の向こうは綺麗に掃き清められてた。管理が行き届いてて徹底してるな~。


外苑道路まで戻って南下し、今度は橿原神宮の北参道に入る。大きな木の鳥居が良いね。


神橋を渡ると左手に手水舎。ここまで立派な手水舎はそう見ない。


その先の北神門は、元・正門らしい。これが見たくて、わざわざ北参道を通った。こちらも堂々とした構えだ。


門をくぐって進んだ右手に外拝殿げはいでん。今年の干支の申の巨大絵馬が脇に飾られてた。
このあたりまで行くと賑やか。なかでも七五三参りの家族連れが目立つ。そっか、そんな季節か。


外拝殿の奥に行くと、廻廊に囲まれた外院斎庭げいんゆにわと、その向こうに内拝殿ないはいでんが見える。この風格を漂わせるつくりは凄い。思わず真正面から撮るのを遠慮してしまった。
内拝殿の上にちょっぴり幣殿の千木だけが覗いてる。本殿はまったく見えない。その本殿は、元京都御所の賢所かしこどころを移築したもので、重文らしい。賢所とは、三種の神器のひとつ八咫鏡やたのかがみを祀る所のことだ。
外拝殿の中央に立って、僕らもお参り。

御祭神は神武天皇とその皇后。
日本書紀によれば、イワレビコは、旧暦の紀元前660年1月1日、橿原宮かしはらのみやで初代天皇として即位した。これを太陽暦に換算した日付が2月11日。現在は『建国記念の日』として祝日になってるワケだ。
神武は、そもそも実在性からして疑わしい、ほとんど神話のなかの人物ではある。そんな不確かな存在を祀ってるにも関わらず、橿原神宮の創建は1890年と新しい。この辺の事情にツッコむと面倒なので、これも割愛。面倒だから省略というより、長くなるので割愛。

イロイロ訳ありなのは重々承知のうえで僕が訪れたのは、ここにロマンがあるから。イワレビコは実在したかも知れないし、神話かも知れない。ただ、そんな彼を想う場所としての意義を与えてくれるのが、橿原宮であり、陵であると思うから。
その価値がここにある限り、本当の場所がどこかなんていうのは、僕にとっては些細なことなんだ。もちろん、考古学的な進展があれば良いなとは思うけど。
ちなみに、ロマンは今回の小旅行のテーマでもある。


さて、念願を叶えたら南神門から出る。こちら側が正門だからか、国旗が掲揚されてた。たなびいてくれればもっと絵になるんだけど、ほぼ無風だった。


深田池のほうに少し寄り道。色んな人の憩いの場みたいになってた。


表参道を歩き、二の鳥居、一の鳥居をくぐる。駐車場からは離れてしまうんだけど、鳥居が見えるとくぐりたくなる。
それから引き返して駐車場に戻った。

あとで気づいたんだけど、今年は、日本書紀の記述に即して、神武崩御から2600年だそうだ。全然意識してなかった。そんな年に初参拝だなんて、偶然ってスゴい。
でもそのせいで、記念行事があることを知ったのが、帰宅してからっていうね……。

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