余呉湖の羽衣伝説の今を訪ねる

2018年3月17日土曜日 11:56

余呉湖よごこは滋賀県長浜市にある湖。日本最古の、天女の羽衣伝説の舞台だ。天女の衣掛柳もあるが、2017年の台風21号による強風で倒れたと聞く。景観地であり風土記スポットでもあるので、色々確かめに行ってきた。

木ノ本駅駐車場から余呉湖駐車場へと移動した僕たちは、周辺を散策。余呉湖口の交差点から駐車場に着くまでに、寄るべきスポットが点在してたので、わかりやすい。
まず、羽衣伝説を語らねば、何をしに行ったのか説明できない。少し長くなるけど述べる。
近江国おうみのくに伊香郡いかのこおり与胡郷よごのさと
八人の天女が白鳥に化けて天から降り、湖で水浴びをした。
その時、伊香刀美イカトミという男が白鳥を見ていた。あまりの神々しさに神ではないかと疑い、近づいて確かめた。すると、まさしく神人だった。一目惚れした彼は、こっそり白い犬を使って、八人の末娘の羽衣を盗み隠した。
気づいた七人の天女たちは天に昇った。しかし末娘だけは羽衣がなく、帰れなかった。天への道は閉ざされ、神人は地民となった。
天女の末娘は伊香刀美と結婚し、男の子二人、女の子二人を産んだ。兄は意美志留オミシル、弟は那志登美ナシトミ、娘は伊是理比咩イゼリヒメ奈是理比売ナゼリヒメ
後に母は羽衣を探し当て、天に昇った。伊香刀美は独り空しく寝室に残り、嘆き悲しみ続けた。
帝王編年記より。

この話は近江国風土記の逸文ともいわれる。風土記が好きな僕にとって、長浜で訪れたい場所のひとつだった。
また、天女の子供として名前の挙がった那志登美は、先ほど参拝した意富夫良神社おおふらじんじゃの御祭神・梨跡臣命ナシトミと同一とされる。
行きたい理由がいくつもあったわけ。


駐車場から県道33号線を挟んだ向かいに行くと、天女の銅像が立っている。午前中はもろに逆光。


横に投げ出した足や、ふわりと浮かぶ羽衣と、背後の造形も良くできてる。


嫁に倣い、逆光に開き直って撮る。ちょうど木々が空への道のようになって、羽衣を見つけた天女が昇っていくようにみえないかな。


県道に沿って南東に歩き、天女の衣掛柳を確認。


伝説の柳は、上をバッサリ切られ、支え棒で辛うじて立っていた。見るも痛々しい有様。生きてるのか、心配になる。自然の風にやられたのだから、仕方ない。
この日も北風が強く、吹きさらしにされた僕らの体を襲った。陽射しは暖かいけど、風が冷たい。これが原因で嫁は鼻風邪ひいたんだと思う。


隣には『北野神社跡地』と刻まれた石碑。
余呉の羽衣伝説は風土記以外にもある。大日本地誌大系に載る伝承では、
桐畑太夫という男が、湖辺の柳に衣服を掛けて水遊びをする美女に出会い、衣を隠す。美女は天に帰ることを諦め、太夫と結婚。間に設けた男子は学問に優れ、菅原是善すがわらのこれよしの養子となった。この男の子こそが菅原道真だ。
という。
こちらの話に所縁のある神社が、余呉湖の西に鎮座するが、元はここにあったらしい。


湖越しに賤ケ岳しずがたけを望む。余呉湖は、凪いでいれば鏡湖とも呼ばれるほど美しいそうだが、風波の立つ日ではかなわない。それでも綺麗だ。
小さくしか撮れてないけど、カイツブリをたくさん見た。最初はカモかと思ったけど、陸にいる姿や、頻繁に水に潜るようすから、たぶんカイツブリに違いない。ちゃんと写真に収めておけば良かった~、と少し後悔。

景色だけでなく、伝承地のロマンも楽しめる。時間があれば、賤ケ岳から見下ろしてみても良かったかも。

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