岡田離宮跡に立つ岡田鴨神社

2019年11月17日日曜日 09:28

京都府木津川市にある岡田鴨神社おかだかもじんじゃは、下鴨神社しもがもじんじゃの元宮といわれる。山城国風土記やましろのくにふどきの逸文に、
カモタケツノミは神武天皇を先導し、大倭の葛木山に峰にいたが、山代国の岡田の賀茂に移り、さらに葛野河と賀茂河の合流する所に至った。
とあり、大和国やまとのくにを発って山城国の下鴨神社に鎮座するまでに、岡田の賀茂つまり岡田鴨神社を経由している。元宮というのはこの記述に基づいているんだろう。
だけど今回は風土記がメインではない。続日本紀に、
和銅元年九月庚辰(22日)行幸山背国相楽郡岡田離宮。
とあるように、元明天皇げんめいてんのうこと阿閇あへさまも行幸なさった岡田離宮こそ、岡田鴨神社の立つ地なのだ。つまり、離宮跡を巡ることが主眼。

始発に乗るべく、夜明け前から活動開始。昨年同様『秋の関西1デイパス』を用意し、徒歩でないとアクセスの難しい場所を中心に回る一人旅だ。日中の気温が読めないので、小さく畳めるライトダウンジャケットを着用した。未明には丁度良い暖かさ。
大阪駅で環状線内回りに乗り換え、新今宮駅で今度は、ホーム向かいの加茂ゆき大和路線普通へと乗り継ぐ。電車に乗って2時間余り。暇すぎて、知らない駅名を見ては、由来を勝手に想像するゲームを始める始末。やけに遠く感じる。
そこへ、車窓から川が見えてきた。大和川!奈良県桜井市に源流のある一級河川だ。大きな川沿いを電車で走るのはいいなぁ。
駅名、河内国はさっぱりだったけど、大和国に入ったらだいたいわかる。法隆寺駅なんてあるんだね。
奈良駅でほとんどの乗客が下車。ホームから見る奈良は、歴史を感じる物がちっとも目に入らない。春日山くらい。外からは何度も見たことのある駅の内部って、こんなかぁ。
次の駅、平城山と書いて「ならやま」って読むのエモい。


奈良県から京都府へと、ほとんど田畑と民家しかない中を走り、加茂駅に到着。どんな田舎に着いたのかと思いきや、割と大きな駅舎だ。改札横に観光案内所があるし、壁に名所紹介も掛かっている。やっぱ歴史あるんだ。


駅から恭仁大橋に向かって歩き、橋の手前で東に折れると、最初の目的の神社の幟がはためいていた。よし、道合ってるぞ。
そこから集落に入ると、さっき幟を見てなかったら不安になりそうなほど、住宅しかない。


それでも道なりに歩いていくと、朱い鳥居と参道が見えた。岡田鴨神社だ。


参道を進むと神門の手前に手水舎があり、そこにヤタガラス!御祭神のカモタケツノミの別名にちなんでるんだね。カッコいい!いきなりネタになるものを見られて、一気にテンションが上がる。


境内には椅子が並べてあって、たぶん新嘗祭の準備かな。
それに、どこからともなく雅楽の音色が。キョロキョロ見渡すと、神門の上にスピーカーを発見。これも祭りのためだろうか。やけに雰囲気出してくるなと思ったよ。


同形の社殿の前の鳥居に鈴があったので、そこから拝礼。
右手が本殿で御祭神はカモタケツノミ。下鴨神社と同じだ。地名からして加茂かもだから、このあたりは古来よりカモ氏と関係が深かったのだろう。
左手は摂社の天満宮で、菅原道真をお祀りしている。


なぜ本殿と摂社が並び立っているのか。そもそもこの神社は、岡田離宮跡を守るために天神社を祀ったのが始まりとか。そこへ木津川の氾濫から逃れてきた鴨神社が合祀されたら、そっちが主になっちゃったっていう。
でも神門から正面に見えるのは摂社の天満宮なの、ちゃんと大切にされてる感あるなぁ。
それにしても、桧皮を葺いた春日造の社殿の美しいこと。離宮に思いを馳せたくて訪れただけだから、思いの外素敵なお社に巡り会えて、余計嬉しくなった。

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