春日離宮を始まりとする奈良豆比古神社

2019年11月17日日曜日 12:00

奈良県奈良市にある奈良豆比古神社ならづひこじんじゃは、春日離宮に志貴しき親王を祀ったのを始まりとする式内社。続日本紀に、
和銅元年九月乙酉(27日)至春日離宮。
とあり、春日離宮には元明天皇こと阿閇さまが行幸なさったこともあるのだ。

加茂駅西口から階段を上ると、早朝閉まっていた観光案内所が開いており、多くのザックを背負った観光客の姿があった。こんなに賑わう場所だったんだ、と少し驚く。そのまま東口へと下りて、奈良駅方面のバス停へ。すでにバスが停車していたので、乗り込んで着席。ひとまず落ち着いたぁ。
運賃支払いに手間取った乗客がいたり、運転手さんが車椅子の方を乗せるために用意したりなんてことがあって定刻より遅れたけど、バスの時間が読めないのはわかっていたことだ。20数分揺られて、奈保山御陵で下車。


まずは奈保山東陵なほやまのひがしのみささぎにてご挨拶。阿閇さまの御陵だ。いつも萌え散らかせていただいて、ありがとうございます!
それから、また来ますね、と心の中でお別れを告げて、すぐに歩き出した。


神社に向かうに当たって、せっかくなので御陵の裏手に回ってみる。拝所のほぼ裏側に、玉垣を巡らしてあるのを見ることができた。通った甲斐があった。木が生い茂っており、その奥を窺うことは叶わない。


ぐるっと御陵の東側に回って、高札場を見つつ、奈良豆比古神社に到着。
鳥居を一礼してくぐり参道を進むと、表門のところに自転車が停めてあり、複数の人影も見える。残念ながら、独り静かに参拝とはいかないようだ。


拝殿にて二礼二拍手一礼。
4人ほど男性がいて、何か作業をしているようだ。気にしないことにする。


本殿に近づいて見てみる。手前に石段があるが昇段禁止とのこと。石段の下から拝ませてもらった。
ほぼ同形の春日造のお社が3つ。鋭角の千木がカッコいい。御祭神は、中央に産土神ナラヅヒコ、右に志貴親王、左に志貴の御子の春日王。
志貴親王は天智天皇の皇子で、阿閇さまとは異母兄弟。生年が不詳のため兄か弟かは判らない。没後、彼の御子の一人、白壁王が即位して光仁天皇となった。そのため、父である志貴親王もクローズアップされ、往年隠居していた春日離宮に祀られたという。
阿閇さまが春日離宮に行かれたのは和銅元年。同じ年の正月に志貴親王は、三品の位を授かっているので、当時はまだ隠居生活していなかったんじゃないかな。

あちこち写真を撮っていると、作業中の一人から、「由緒書いた紙とかあるけどいる?」と声を掛けられた。え、そんなのあるの?と嬉しくなり、「頂きます!」と返事をした。すると鍵を取りに行かれてから、社務所を開けてモノクロの由緒書を渡してくださった。有り難い。


上機嫌で境内社を巡る。恵比須、毘沙門天王、福の神、石瓶神、弁財天。一つひとつに鳥居があるって、スゴいなぁ。

奈良きたまちエリアは思ったより時間がかからなかった。計画より1本前のバスに乗れるかもしれない。そしたら多少休憩時間も確保できる。最短ルートで県道44号線まで出れば、降りた時の次の停留所の近くに行けるんじゃないか――とあれこれ計算しながら歩いていくと、あった、奈保町のバス停。しかも、もうすぐ来るバスがある。良かった、良かった。
――なんて時間を気にし過ぎていたから、失敗したんだよね~。奈良豆比古神社境内には元明天皇陵墓碑御旧趾があって、それを確認するのも目的だったのに。うっかり頭から飛んでしまった。うーん、また行けばいいか。でも悔しい。


近鉄奈良駅でバスを降り、『ことのまあかり』さんへ。丁度お昼どき、だけどあまりおなかが空いていない。それなら、期間限定メニューだけで満足しそうだ。
しかし、ドリンクはコーヒーで良いのか。まだ歩くんだぞ、トイレ近くなったら困るんだぞ。ああ~、でもひと息吐きたいし、まだ飲んだことないから試してみたい。
で結局、誘惑に負けて、古事記珈琲と花水土香さんの点心のセットを注文。マーラーカオ・桃まん・肉まんと、甘いとしょっぱいの組み合わせが美味しいし、酸味控えめのコーヒーとベストマッチ。湯気が立ち上りアツアツなのも嬉しかった。須恵器のカップも素敵だし、ホント凝ってるなぁ。
ゆっくり休めたし、上村恭子先生の万葉歌カレンダーも買えた。店員さんに、「いつもありがとうございます」って言われたような。

休息できたのは大きいけど、春日離宮が消化不良になっちゃったかなぁ。

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