興福寺北円堂・南円堂と法華寺の特別開扉

2019年10月28日月曜日 16:49

正倉院展期間の奈良はあちこちで特別な催しが行われる。寺院なら秘仏の御開帳がある。参拝する機会を待っていた興福寺北円堂も、特別公開があるというじゃないか。これはもう行くしかない。

翌朝はゆっくり10時から行動開始。嫁の希望で奈良公園バスターミナルへ向かう。が、当てにしていた登大路自動車駐車場がなんと満車。正倉院展開催中の奈良はやはり混む。近くの路地にあったコインパーキングを見つけ、なんとか車を停められた。


目的は新しくできたスタバ。半端な時間とあってこちらは空いていた。落ち着いて軽くブランチにするのに、丁度良いんだよね。
ターミナルビル内もデザインがオシャレだし、オープンして半年とあって綺麗。


奈良県庁の屋上には天平びとの菊人形。奈良の観光を盛り上げたい気持ちが伝わってくる。

この日のメインは、興福寺国宝特別公開2019。北円堂と南円堂が同時開扉されるのだ。
興福寺境内に特設された受付まで歩いていき、列に並んで拝観券を頂く。


Twitterで知っていた通り、記念品も頂いた。エコバッグと三島食品の『ゆかり』。それぞれ邪鬼と四天王がデザインされたオリジナルのもの。記念品って特別な感じがして嬉しい。


嫁に北と南どちらから拝観するか聞いたところ、歴史の古いほうからということで、北円堂へ。
阿閇さま(元明天皇)と氷高ちゃん(元正天皇)が不比等くん(藤原不比等)一周忌に建てた興福寺北円堂。誰が何のために建てたか知ると、見方が変わって面白いよね。
最も美しい八角円堂といわれ、ようやくその姿を間近で見られて感激。端正な佇まい。建築美も好きなんだよねぇ。
堂内に安置されているのは、運慶らが彫った弥勒如来など。無著むじゃく世親せしん立像の写実的な彫刻も素晴らしい。四天王像は全体的にユーモラスで、不謹慎ながら広目天がビートたけしに似てるなんて話に。


続いて南円堂。
御本尊は不空羂索観音菩薩ふくうけんさくかんのんぼさつ。鹿皮の衣をまとっていて、神仏習合でいえばタケミカヅチの本地仏なのがまた、春日大社との関係が窺えて良いなぁ。また、こちらの四天王像は烈火の怒りで、北と好対照で面白い。
お堂だけなら北円堂、御本尊は南円堂が好みだなぁ。

他にも是非とも拝みたい秘仏がある。この機を逃してはと、嫁の許しを得て、法華寺にもお参り。拝観者用駐車場が有り難い。


本堂にて、光明皇后がモデルとされる十一面観音を拝む。GWに参拝したとき御前立ちに一目惚れしたから、機会があればと願っていたんだよね。目の前まで近づけた御前立ちと違い、御本尊から少し離れて拝む形になるけど、良いものは良い。
単眼鏡で鑑賞する参拝客がいたけど、それはなんか違う気がする。優れた芸術品だと思うけど、信仰の対象でもあるから、あからさまな見方を僕はしたくないな。


慈光殿も特別公開されていた。国宝の絹本着色阿弥陀三尊および童子像けんぽんちゃくしょくあみださんぞんおよびどうじぞうは、光明皇后御臨終の枕仏と伝えられているそうだ。


GWは同行者がいてゆっくり巡れなかった境内を回る。
護摩堂。中には不動明王が安置されているらしい。


山部赤人やまべのあかひとが、亡き藤原不比等の家の池を読んだ歌の碑。
いにしへの 古き堤は 年深み 池のなぎさに 水草生ひにけり
不比等くんがいなくなりすっかり寂れた池を見て、その情景を詠んでいるのだけど、悲嘆でも哀悼でもなく、一口には言い表せられない感情を込めているとしたら……なんかこう、グッとくるね……。法華寺は不比等くんの邸宅跡に娘の光明皇后が建てた尼寺だし、山部赤人は柿本人麻呂と並び称されるほど優秀な歌人。この歌がここにある意味を噛み締める。


浴室からふろは昔のお風呂で、今で言うサウナ。光明皇后が、薬草を煎じた蒸気で病人を救った、という伝説がある。


光月亭のほうへ続く道の途中、浴室の脇に小さなお稲荷さんが。
華楽園も覗いてみたけど、あまり咲いている花がなくて、ちょっと寂しかった。


最後に薬師堂と稲荷神社。扁額には『喜市稲荷大明神』とあるので、これが名前なんだろう。隅のほうにあって薄暗いから、ひっそりとしている。二礼二拍手一礼。

さて、藤原宮跡のコスモスの見頃がまだ続いているらしい。なら見に行きたいね、ってことで行ってみた。奈良バイパスから京奈和道を経由し、ぐーんと南下。花の時期には臨時駐車場も開いているそうだけど、素直に藤原京資料室の駐車場に停めた。


そこから歩いて宮跡に向かうと、咲いてる咲いてる。普段は殺風景な緑地に、鮮やかなピンクの花々が。
観賞に来ている人もそこそこの数。ただそのせいで、マナーの悪い人も多い。入るなって書いてあるのに、花園の中に立ち入って写真を撮っている不届き者たち。綺麗なものを愛でに訪れたんだから、もう気にしないようにしよう。


東に香久山。


北に耳成山。


西に畝傍山。
コスモスが日本に伝わったのは明治に入ってからなので、古代にはありえない景色だけど、大和三山との組み合わせが良いわぁ。
こうして二人とも気の済むまで堪能した。予定をすべて消化できたので、まだ陽が高かったけど帰路に就くことに。

秋の奈良は混雑するイメージが強くて、及び腰になっていた。だけど、行って良かった!特別展に、特別開扉、季節の花と大和の風景。奈良全体がお祭りムードで、盛り上がる理由も肌で解った。確かに混むけど、それ以上に得るものがあったね~。

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