春の大神祭と倭笠縫邑

2022年4月9日土曜日 14:57
現在進行形で疫病が流行し世界中が苛まれているが、歴史を振り返ると、日本最古の疫病の記録が古事記にも日本書紀にも残されている。第10代・崇神すじん天皇の時代、疫病が流行り多くの民の命が失われたが、原因を突き止め乗り越えたと。その原因が神の祟りだったりと、そのまま史実とは考えられないが、今こそ、崇神天皇ゆかりの地を巡りたい。

吉野や橿原を歩き疲れた僕らがこの日宿泊したのは、先月開業したばかりのフェアフィールド・バイ・マリオット奈良天理山の辺の道。個人的にはかなり良い位置にオープンしてくれたなぁと。ホテル内の売店には、奈良の地酒・地ビールまで並んでいる。隣接する道の駅なら歴史芸術文化村でご飯を調達し、前から飲んでみたかった三諸杉の純米吟醸をホテルで購入して、夕食にした。フロント階の共有スペースに電子レンジやトースターもあるので、冷凍コロッケを温めることができた。クタクタの体でふかふかのベッドに寝転べば、朝までぐっすり快眠。

翌朝はゆっくり9時にチェックアウトして、橿原中和幹線のスタバで軽めの朝食を摂ったら、大神神社第1駐車場へ。大神神社の参詣は約4年ぶり。参道を整備するための工事の真っ最中のようで、通り道が変則的だった。


階段を上って拝殿の前に着くと、人だかりができているうえに、色とりどりの幡が両脇に並んでいて、平時ではないようす。脇に設置された賽銭箱のところまで行って、初めて知った。春の大神祭を斎行しているのだ。
疫病の原因であった大神神社の御祭神オオモノヌシの祟り。御祭神の子孫であるオオタタネコにその御祭神を祀らせるなどすると、疫病が治まり国家に平安が訪れたという。これがまさに、春の大神祭の起源とのこと。日本書紀に、
冬十二月丙申朔乙卯。天皇以大田田根子令祭大神。
とあるように、祭祀が卯の日に行われたことから、古くは4月と12月の上卯日に執行してきたが、明治6年の上卯日が9日であったことから、例祭日が4月9日と定められ今日に至ると。
崇神天皇ゆかりの地を巡ろうと、スタート地点に大神神社を選んだのは確かだけど、大神祭の日に訪れたのはまったくの偶然!何たる奇遇!凄いよ……こんなことってある!?
内心ドキドキしながら、大祭式の邪魔にならないよう、静かに柏手を打って拝礼。前日に、若宮ことオオタタネコさまの御分霊が本殿に遷されているわけだから、オオモノヌシさまと一緒に拝めたということに。この日のテーマに、これほど相応しい始まりはない!


若宮神幸祭わかみやじんこうさいの御神輿と威儀物の展示もされていた。これまた貴重な機会。

狭井神社にも手を合わせてから、山辺の道やまのべのみちを歩く。桧原神社まで、前回とは違って徒歩で向かうのだ。


途中、狭井川を渡った。狭井川といえば、初代・神武天皇の后となったイスケヨリヒメの家の近くを流れる川。神話の舞台がそこここにあるのが、三輪であり奈良だよなぁ。


山辺の道は、春日断層の崖下に沿って奈良市から桜井市初瀬へと至る古道。沿道には著名な古社寺や古墳が点在する。
狭井神社までは多くの参拝客で溢れていたが、ここまで行くとぱったりいなくなった。時折すれ違うのは、ザックを背負ったいかにもトレッキング中の人ばかり。
アスファルトや石畳が敷いてあったりする箇所もあるけど、未舗装の山道には曲がりくねった細い古代の道の姿をよく残している。二人とも、ちゃんとスニーカーを履いてきたから大丈夫。


のんびり30分ほどかけて、桧原神社に到着。三ツ鳥居を通して主祭神アマテラスをお参り。隣の豊鍬入姫宮とよすきいりひめのみやの御祭神は、トヨスキイリビメ。
日本書紀によれば、
崇神天皇6年、アマテラスとヤマトノオオクニタマの2柱を皇居で一緒に祀っていたが、その神の勢いを恐れ、共に住むには不安があった。そこで、アマテラスはトヨスキイリビメに託して笠縫邑かさぬいのむらに、ヤマトノオオクニタマはヌナキノイリビメに託して祀った。
という。
桧原神社は、この笠縫邑の比定地のひとつ。テーマとして外せない場所なのだ。

ここから近くて山辺の道沿いに、最近できたばかりの紅茶専門店があると聞いた。休息するには丁度良さそう。神社からさらに山辺の道を15分ほど、くねくねと北進。途上に柿本人麻呂の歌碑が2つあった。


そうして『Brighton Tea Room Cottageブライトンティールーム コテージ』へ。本店がならまちにあり、ここは2号店らしい。もう見るからに英国式。
嫁に好きな席を選んでもらい、テラス席へ。


フードメニューもあってランチにもできたけど、あくまでひと息吐きたかっただけなので、スコーンを。紅茶はインペリアル・キーマンとブレックファースト・ブレンドのマイルド。紅茶もスコーンも美味しくて、テラスを吹き抜けていく風がまた心地よい。
箸中にこんな素敵なお店があることを、覚えておいて損はないな。


多少回復したとはいえ、そろそろ嫁の足が限界を迎えそう。無理のないペースでもうひと踏ん張りしてもらって、今度は『てのべ たかだや』へ。カフェスペースの勝手がわからなかったけど、店員さんに満席なので入口のボードに名前を書いてと言われ、理解。
どうせ待つのであればと、嫁にはこのまま待ってもらい、僕は前日に続き単独行動してついでに車を持ってこよう。ところが、席に通されたとの嫁からのメッセージに応えて、その返信を受けた時点で、スマホの充電が切れてしまったことで、目的地への経路が判らなくなり、辿り着けず。完全な無駄足に、心が折れかけた。
トボトボと駐車場に戻り、車でお店に向かって、嫁と合流。先にアフォガードを食べながら、待っていてくれた。


僕は、素麺で「つるり」、つゆはシンプルに「本格黒つゆ」の「冷」を選び、サイドメニューの「奈良の茶飯いなり」を追加。コシの強い僕好みの素麺と、嫁の優しい言葉で、立ち直れた。
それにしても、カップで食べるというこのビジュアルが、新しくてオシャレだよね~!しかも美味しかったから、乾麺をお土産に買ったよ。

まだまだ巡る。

サイト内検索