室生龍穴神社と龍神の住まう吉祥龍穴

2018年6月2日土曜日 10:31

室生龍穴神社むろうりゅうけつじんじゃは奈良県宇陀市にある神社。創建年は不詳だが、名刹・室生寺むろうじの神宮寺だったといわれる式内社。その奥宮おくのみやには龍神の住まうという龍穴があり、そこへ行き着く途中の林道には、天岩戸あまのいわととされる巨石があるとのこと。
ここまで聞いたら俄然興味が湧くというのもの。当初の計画にはなかったけど、急遽予定を組み替えて行ってみた!

吉野でのイベントと奈良博目的で決めた奈良行き(3か月ぶり)。出発前日に、嫁が偶然面白そうな神社2社を見つけ、行きたいと言ってきた。彼女から行きたい場所を出してくるのは珍しいので、叶えてあげたい。地図で確認すると、奈良・宇陀・吉野と辿ればそれほどロスはなさそう。というわけで、ルート変更。
例によって前泊し、朝8時過ぎにホテルを発っておにぎり頬張りながら、室生龍穴神社へ。カーナビに登録があったので、迷うことなく到着。


駐車場こそないが神社前の路肩が広く、一時的に車を停めるには十分。東隣には公衆トイレもある。
しかし驚いたのが、数組先客がいたこと。まだ9時過ぎだよ……大きくて著名なお社ならわかるけど。嫁が得た情報によると、スピリチュアル界隈で最近話題のスポットなんだそうだ。
運転中に掛かってきていた仕事の電話の折り返しを済ませ、境内に向かった。


参道の両脇にそびえる太い杉と、苔むした鳥居。もうこれだけで神々しい。一礼してくぐり、手水舎で身を清める。
拝殿では、ひと組のカップルが熱心に祈り続けていた。いつまで手を合わせてるんだろう、って思うくらい長かったなぁ。
ずっと待つ必要はないなと思い直して横に並ぼうとしたら、ようやく二人は離れていった。僕らは手短に(だけど丁寧に)お参り。御灯明みあかしがあったので、嫁がロウソクの火を灯してケースの中に立てた。


境内の由緒書によれば、主祭神はタカオカミ。イザナギがカグツチを斬ったときに産まれた、水の女神だ。その名は日本書紀にのみ登場。
一方、拝殿の扁額には『善如龍王ぜんにょりゅうおう社』と書かれていた。仏教における八大龍王の一尊である、沙伽羅しゃから龍王の娘が善如龍王。善如龍王は、空海が雨を祈ったときに現れたといわれる。
ここにお祀りされている方の正体が何であれ、雨乞いの神であることは間違いない。


拝殿の裏手に回れば、本殿を拝むことができる。厳かな静けさ。


本殿は一間社春日造いっけんしゃかすがづくりで、春日大社摂社の若宮社の社殿を移築したものだとか。春日さんは元々旅程に入っていたわけで、不思議な縁を感じるね。


それにしても、実に心地よい空間。
僕たちのあとからも女性が一人で訪れたりと、ぽつぽつと参拝客を見かけた。知ってる人は知ってるもんなんだなぁ。妙なところに感心する。


続いて奥宮へ向かうことにする。案内図があるから、こちらも迷うことはないかな。


室生寺とは反対方向、県道28号を南東へ500m行くと、見つけやすい道標があった。左手前に折れて進むと、軽同士でないと離合の難しい狭い道。神社前の路肩に車を置いて、歩いていってもいいと思う。
途上で実際に軽自動車とギリギリ擦れ違った。たぶん、さっきのカップル。やはり目的は同じか。


700m先で右手に鳥居を確認。舗装されていないデコボコの路肩に、車を慎重に寄せた。
まず、鳥居の奥の小さな祠を拝礼。


それから天岩戸とされる巨大な石と向き合う。全面苔に覆われ、人知を超えた力で押し開かれたように割れた石は、アマテラスが隠れたといわれれば、そうかも知れないと思わされる迫力があった。
天岩戸伝説の舞台とされる石は全国各地にあるんだけど、見る者を圧倒する、石の力の理由を探した結果なのかも。


吉祥龍穴きっしょうりゅうけつまではそこから100m足らず。鳥居の前だけ道幅が少し広いから、停車できた。
お目当ては鳥居の先の道を下ったところにある。


奥宮拝殿にて、嫁が御酒をお供えし、二礼二拍手一礼。お賽銭以外に供物を用意することも珍しい。嫁は本当に参りたかったんだな。


その気持ちも現地に立てば理解した。


右奥の招雨瀑から落ちて流れゆくせせらぎと、柱状節理の間にぽっかりと空いた龍の潜む穴。拝所や注連縄などなくても、古代の人々が水神に雨乞いをした気持ちがよく解る……!
対面走行できるような道路からちょっと山に入っただけなのに、秘境と呼びたくなる雰囲気。こんな凄い場所があったんだな……。

予備知識を持たなくても感動する神社って、そうそうないよね。原始信仰を体感できた思いがしたよ。
室生寺を詣でなかったのは片手落ちだけど、予定が合わないのでまたの機会に。

サイト内検索