2018年6月3日日曜日
13:28
春日大社は奈良県奈良市にある、藤原氏の氏神を祀る神社。初穂料を納めることで回廊内に入れる特別参拝を中心に、境内社を巡ってみた。
ホテルで一泊し朝食を軽く食べて、車で奈良登大路自動車駐車場まで移動。参拝したり博物館行ったりするには、やっぱここが確実だ。
大仏殿の交差点から南東へ延びる参道を歩く。奈良博の特別展にはあとで行く予定。まずは春日さんを参拝だ。
初めてお参りしたときと違うのが、知識量と姿勢。今回は、リーフレットに載っている摂末社すべてを巡るつもりでいた。
そう考えてたのに、いきなり見過ごしたお社がある。それが万葉植物園入口から少し先にある、
壺神神社だ。御祭神はお酒の神さま。スサノオがオロチ退治に使った酒の入った壺の神格化だとか。気づいてから、最後に寄った。
車舎付近で見かけた、仲睦まじい鹿2匹。奈良公園にいたら、鹿なんて飽きるほど見かけるけど、こういうのは微笑ましいね。
それにしても、自販機でドリンク買わなかったことを後悔したよ。水分補給が滞ると疲れが出やすくなる。
二之鳥居の先の
伏鹿手水所で禊ぎをして、さらに
祓戸神社のセオリツヒメに穢れを祓っていただいた。
前回うっかり素通りしてしまった
剣先道を確認しつつ、
南門へ。
特別参拝のため、南門をくぐって右手の受付に向かう。通常の参拝は
弊殿前までだけど、初穂料5百円納めればその奥へ進めるのが、特別参拝。祭事時以外はたぶん年中受け付けてる。そこで授かった『御参拝の証』には「御本殿正面の撮影はご遠慮ください。」と書いてあった。逆にいえば、そこ以外は撮影OKということだ。
この時点で9時半。日曜だけどまだまだ早い時間ということもあり、混雑していない。
順路に従い、
井栗神社のタカミムスヒ、
穴栗神社の
穴次神、
辛榊神社の
白和幣、
青榊神社の
青和幣と進む。
幣殿を横から。特別参拝ならではの視点を探してしまう。
春日大社の象徴的建物である
中門と
御廊。参拝客がまばらなので、途切れるのを待って撮った。朱塗りで、翼を広げたような御廊と楼門のバランスがカッコいい!
まだ本殿には行かず、右の
手力雄神社と
飛来天神社遥拝所へ。御祭神はそれぞれ、アメノタヂカラオとアメノミナカヌシ。
それから南門の隣の桜門を出て東回廊を回り、
御蓋山浮雲峰遥拝所にて拝礼。撮影禁止との明文こそないものの、神聖な領域であることを鑑みて、カメラは自粛した。禁足地という言葉がそうさせるのか、ここだけ空気が違うように感じるんだよね。
影向門から回廊内に戻り、中門にて本殿に向かって二礼二拍手一礼。
本殿は4棟あり、御祭神は、第一殿にタケミカヅチ、第二殿にフツヌシ、第三殿にアメノコヤネ、第四殿にヒメガミ。4柱を合わせて
春日大明神と称する。
春日大社の創建について、同社の由緒などが書かれた
古社記では768年としている。
タケミカヅチが鹿に乗って鹿島神宮を発ち、御蓋山に鎮座した。
という。そこへタケミカヅチと対となる存在といえるフツヌシ、藤原氏(中臣氏)の祖神アメノコヤネ、その妻ヒメガミを勧請。
藤原永手が社殿を造営したとされる。永手は、藤原氏の実質的な祖である
不比等の孫だ。
藤原氏が祖神夫妻を祀るのは解るけど、なぜタケミカヅチ・フツヌシのコンビと合わせているのか。ざっくりまとめると、中臣氏と鹿島・香取の鎮座する
常陸国の関係が深く、その御祭神を自分たちの氏神として崇めたことによるようだ。直接系譜として繋がらなくとも、中臣氏とそれに続く藤原氏にとって、大切な神さまだったんだろうね。
……初めて参拝したときには、由緒など気にしなかったのになぁ。今はアレコレ調べたくてうずうずする。自分の興味の移ろいが面白い。
御廊の脇に生えている大杉は、樹齢千年ともいわれるとか。太くて立派で、思わず仰ぎ見てしまった。
大杉の隣には、ウワツツノオ・ナカツツノオ・ソコツツノオの住吉三神を祀る
岩本神社。
内侍殿と御廊を結ぶ
捻廊。案内板によると、『春日祭に奉仕する斎女や内侍が昇殿するための登り廊』とのことで、実際に御廊へ渡っていく巫女さんの姿を見掛けた。この偶然は嬉しい。
その裏手にあるのが
風宮神社で、御祭神はシナツヒコ・シナツヒメ。
本殿の背後にもお社が並んでおり、
後殿各社参拝所から手を合わせた。
八雷神社には
八雷大神。イザナミから生まれた8柱の雷神である
八雷神(別名・
火雷神)のことかな。
栗柄神社にホスセリ、
海本神社にオオモノヌシ、
杉本神社にオオヤマクイ、
佐軍神社にフツノミタマ。
ホスセリをお祀りしているの、僕は初めて見たかも。古事記において、
海幸彦・
山幸彦の名で知られる兄ホデリ・弟ホオリと違い、神話の無いホスセリって空気みたいだから、お会いできてある意味ホッとした。
椿本神社の
角振神は、魔物退散の神らしい。魔物だ天狗だっていうと、平安期の匂いが強いよねぇ。今のところ守備範囲外。今のところは。
藤浪之屋の中では、行事である万灯籠を再現している。日中に灯した灯籠を見られるっていいね。不思議な空間。
嫁が気に入ったみたいで、何度も写真撮り直してた。これは撮りたくなるよ。
この日、回廊内で近づくことができなかったのが、北西に位置する
多賀神社。御祭神はイザナギ。
というのも、神事が行われたから。受付の際に、その旨の案内が巫女さんからあったんだよね。
笙の音色や
祝詞を聴くことができたから、むしろラッキー。少し離れた通行の邪魔にならない所で、しばらく耳を澄ましていた。
それから、義祖母のための御守を授かった。
慶賀門から出て南回廊を歩き、
榎本神社をお参り。
案内板では御祭神をサルタヒコとしているが、古社記によれば榎本明神なる地主神だ。
鹿島から大和にやって来たタケミカヅチは、まず阿倍山に滞在した。春日野にいた榎本明神が、自分の住んでいる場所との交換を、タケミカヅチに持ち掛けた。それで春日野にタケミカヅチが鎮座することになった。ところが、阿倍山には参拝客がおらず、助けを請うた榎本明神を、タケミカヅチが自分のそばに住むことを許したので、現在の地に祀られるようになった。
という。春日大社の起源に迫るにあたって興味深い話。
榎本神社は式内社でもある。回廊の中にありひっそりとしているが、由緒あるお社なのだ。
次は、
若宮15社を巡る。
一童社(三輪神社)にスクナヒコナ、
兵主神社にオオナムチ、
南宮神社にカナヤマヒコと来て、若宮神社にはアメノオシクモ。アメノコヤネの御子神だ。だから若宮ね。
さらに、
夫婦大国社はオオクニヌシ・スセリヒメ、
広瀬神社はクライナタマ(ウカノミタマ)、
懸橋社(葛城神社)はヒトコトヌシ、
三十八所神社はイザナギ・イザナミ・神武天皇、
佐良気神社はヒルコ、
金龍神社は
金龍大神。
金龍神社にお百度の案内があったから、百度石を探したんだけどなかった。嫁の小さな楽しみのひとつなんだけどな。
広瀬神社と懸橋社の間にあった
赤乳白乳両神社遥拝所は、15社に数えないようだ。ここからはワカヒメ・シナトベ(シナツヒメ)。
アメノコヤネ・ヒメガミの春日大社への勧請元である、
枚岡神社の遥拝所。
春日明神遥拝所は春日大社本殿を拝むことができる。
若宮15社の残る3社は、
宗像神社にイチキシマヒメ、伊勢神宮遥拝所、
紀伊神社にイタケル・オオヤツヒメ・ツマツヒメ。
紀伊神社の横にある
龍王珠石は、『
善女龍王が尾玉を納められた所』とある。前日に詣でた龍穴神社の御祭神ゆかりの場所に、こうして巡り会うなんてね!面白いもんだよなぁ。
さすがに疲れてきたし水分も摂りたいので、一旦車舎まで戻って自販機でスポーツドリンクを買った。気をつけないと。
国宝殿の前を横切って、
総宮神社へ。総宮大神として9柱がお祀りされている。
隣の
一言主神社で、嫁がヒトコトヌシに絵馬を奉納した。願い事をするなんて珍しい。たまにはいいか。
水谷神社はスサノオ・オオナムチ・クシナダヒメ。本殿の床下にもあるという、漆喰で塗り固められた磐座があると聞いたのだけど、事前リサーチを怠ったため、どこにあるか見つけられず。次こそは。
お腹が空いてきたなぁと思ったところで、水谷神社から
吉城川を渡った先に、食事処を発見。これ幸いと、その『茶亭ゆうすい』でランチにした。
嫁はざるうどん、僕はそうめんのセット。三輪そうめん、やっぱ美味しいわ。デザートに練りたてのわらびもちも食べて、体力回復。行き当たりばったりだけど、良いお店を選べたよ。
そして、ほとんど人が寄り付かない場所にある、残りの末社を回った。
聖明神社は
聖明神、
愛宕神社はカグツチ、
天神社はアメノトコタチ、
浮雲神社はアメノコヤネ。
本殿・本宮を除いて計41社。これだけ巡ると気分が良いね~。摂末社だけがすべてではないけど、一度やっておきたかったんだ。なかなか足を延ばさないような所にも行ったし。
特別参拝で、回廊内をゆっくりお参りできたのも、良かったこと。たくさん歩いたけど、実に清々しい。以前より知識が増えたとはいえ、そういうのと関係なく、素敵なお社だなぁと感じたよ。