迎賓館赤坂離宮で夢見る晩餐会
2025年9月12日金曜日
11:27
 
東京にはあまり縁がない僕たち夫婦。それが少しずつ行きたい場所、見たい物が増えてきた。ちょうど見たいと思っていた絵画が開催中の展覧会に出展されていると知り、いい機会だとまとめて巡ることにしたよ。
とはいえ、目的地は4か所だけで、しかもどの施設も開館が9時半以降と遅め。それなら前泊を含め宿泊不要だし、電車移動がメインになるなら、東京までも飛行機ではなく新幹線のほうが何かと都合が良いだろう。お引越しで新幹線の停車駅が近くなったのもある。というわけで、新幹線での日帰りという自分たちにしては珍しい旅程になった。
朝5時起床。二人とも以前より早起きを苦にしなくなってきた。N700系のぞみに乗り込んだら、あらかじめ用意しておいたパンと野菜ジュースで朝食。駅弁も検討したけど、地元のお弁当というのもそれはそれで味気ないかなと思って、食べ慣れたものを選んだ。終点までは、それぞれ音楽を聴いたり本を読んだり、自由に過ごした。
不安が大きかったのが、在来線への乗り換えルート。だから下調べして備えておいた。東京駅に下りたら目の前にある階段を下りる。こうなるように、号車も選んで予約した。新幹線の南のりかえ口改札から出たら、案の定人混みで見通しが利かない。でも慌てず調べた通りに歩いて、無事に中央線ホームに到着。
ところが、計画していた行先表示とは異なる車両が停車している。不測の事態にちょっと混乱。いやいや落ち着け、中央線は東京が始発駅だ。先発の2番線の列車に乗れば良いんだ。どうやら乗客救護で遅延が発生しているらしい。
予定より数分遅れたけど、四ツ谷駅にて下車。赤坂口までが遠くて、ここは調べが足りなかったなと反省。
もう一つ心配だったのが天気。前日の東京は、浸水被害が相次ぐほどの猛烈な雨が降ったとニュースで聞いていた。この日は曇天ながら、豪雨の気配は感じられない。良かった、日程をこなせそう。
 赤坂口から迎賓館赤坂離宮の正門までは徒歩5分ほど。金色の菊花紋章を中心に据えた優美な佇まいが、ただただカッコいい!嫁のテンションが一気に上がる。
赤坂口から迎賓館赤坂離宮の正門までは徒歩5分ほど。金色の菊花紋章を中心に据えた優美な佇まいが、ただただカッコいい!嫁のテンションが一気に上がる。まずこの正門が見たくて行ったんだけど、参観入口はここではない。係員さんの誘導に従い、西門へ。同じ方向へ向かう人がたくさんいる。係員さんが、外国人観光客に英語で案内する声も聞こえた。
西門は正門とは打って変わり、地味で簡素な造りで、いかにも裏口といった趣きだ。その先では手荷物検査。行く先々で警備員さんの姿を見かけたし、警備が厳重なのは場所柄致し方ないだろうね。
検査場を抜けたところで、券売機でチケットを購入。チケットのデザインが一枚ずつ違うことに目ざとく気づいた嫁が、感心しつつ興奮していた。
本館への途上、前庭に続く道の前を通ることになって、まだあっちには行けないんだね、なかなか焦らすねぇと思った。
 館内は撮影禁止。警備上の問題とか混雑の緩和とか、理由はいくつか考えられる。これもやむなし。
館内は撮影禁止。警備上の問題とか混雑の緩和とか、理由はいくつか考えられる。これもやむなし。西口から館内へ一歩足を踏み入れると、一気に別世界。白壁やドアに施された装飾が、なんとも上品。
最初の見どころは玄関ホール。賓客を迎えるに相応しい豪華絢爛さで、目を奪われた嫁はその場から動けなくなってしまった。もちろん他の参観者と譲り合いながらだけど、しばらくホールを見ていたら、ボランティアガイドの方から色んなことを教えてもらった。
いつまでもそこにいるわけにもいかないので、先へ進む。監視員さんを避けようと少し壁側にずれたら、絨毯から外れて大理石を踏まないよう、優しく注意された。なるほど、絨毯は大理石を保護するために敷かれているのね。
圧巻は2階の「花鳥の間」。巨大なシャンデリアが目を引くけど、それだけじゃあない。壁も天井もアートで埋め尽くされている!壁の七宝焼や天井画には、様々な鳥や鹿などの動物、色とりどりの草花が描かれていて、一品一品じっくり観賞したいくらい。七宝焼だけでも30枚あるというから、いくら時間があっても足りないよ。この部屋だけで2時間過ごせと言われても余裕でこなせるね、なんて嫁と頷き合った。
嫁は特に後ろ髪を引かれる思いで、次の部屋へ。「彩鸞の間」がまた豪奢。というか豪奢でない部屋がない。金箔張りのレリーフのバリエーションが豊富で、ため息が漏れる。日本刀にサーベルを組み合わせたデザインもあり、こうした和洋の対比が迎賓館全体の見どころになっている。
玄関からの中央階段を上がった所に位置するホールを、ガイドさんの言葉を思い出しながら眺める。そこに、地元神戸ゆかりの小磯良平の作品が飾られていて、勝手に誇らしい気分になったりした。
「朝日の間」も360度見どころ尽くしだけど、足元の
館内のあちこちのドアに3桁の番号が書かれていて、おそらく部屋番号だろう。ルームサービス用のティーウェアの展示を見かけたことを考え合わせると、宿泊施設としての一面もあるらしい。煌びやかな館の晩餐会に呼ばれて、そのまま一夜を過ごす……そんな体験を一生に一度でいいからしてみたいもんだ。
 出る時も西口から。左に折れると、本館の裏手、大きな噴水のある主庭に至った。花壇のマリーゴールド越しに仰ぐ迎賓館が絵になるねぇ。
出る時も西口から。左に折れると、本館の裏手、大きな噴水のある主庭に至った。花壇のマリーゴールド越しに仰ぐ迎賓館が絵になるねぇ。このまま反時計回りに回ったら前庭に行けるのかなと思いきや、ロープが張られていて行けない。元来た道を戻るしかないらしい。外は順路が分かりづらいなぁ。ランチの予約時間を気にしていたので、少し不安になった。
 速足で前庭へ。斜め前から望む迎賓館も良いね!はためく日の丸がこんなに美しいと感じたのは初めてだ。石造や屋根の色とのコントラストが見事。
速足で前庭へ。斜め前から望む迎賓館も良いね!はためく日の丸がこんなに美しいと感じたのは初めてだ。石造や屋根の色とのコントラストが見事。 そして、ようやく真正面にたどり着いた。中も凄いけど、やはり面構えも端正で素晴らしい。屋根飾りの鎧武者が、意外なほど馴染んでいるから面白い。
そして、ようやく真正面にたどり着いた。中も凄いけど、やはり面構えも端正で素晴らしい。屋根飾りの鎧武者が、意外なほど馴染んでいるから面白い。最後に、記念品販売所に立ち寄る。タイムリミットが迫りつつあったので、買うものはほぼ決めておき、見本をパラパラ確認して確定させるだけ。館内の写真が欲しくて、写真集と『七宝の美』を購入した。
国内に、これほど重厚で華麗な建築があったんだ!と驚嘆したし、感動した。嫁もメチャクチャ喜んでいた。写真を撮るために時間を使うことはないんだから1時間もあれば十分でしょ、なんて甘かった。一度しか来ちゃいけないわけじゃないんだし、また来ようねと嫁を慰めた。今度はいくらでも滞在できるように、ゆとりを持ってね。
 
 
 
 
