大人になって歩く国会議事堂の修学旅行

2025年9月12日金曜日 14:53
国会議事堂は、日本の立法機関である国会が置かれている建物。1936年に竣工した重厚な近代建築で、「白亜の殿堂」と称された。平日の衆議院の参観は議事堂裏手の衆議院参観受付所で受け付け、係員の案内で見学する。参観コース内では、本会議場・御休所・中央広間および建物外でのみ写真撮影が可能となっている。
僕にとっては中学3年生以来、嫁にとっては初めての見学となる。建築としての見どころもあるし、嫁が一度見てみたいというので旅程に組み込んでみたよ。

さて、迎賓館を慌ただしく後にした僕らは、外堀通りを歩いて予約しておいたレストランへ。土地勘のない都会でランチ難民になりたくなかったからね。途中、赤坂地下歩道を通って車道の下をくぐった。
厳しい陽射しこそないものの、じっとりと汗がにじむ。熱中症は、気温より湿度の高さが危険性を高めやすいという。意識的に水分補給をしないといけない。
向かったのは『PIZZERIA MANCINI TOKYOピッツェリア・マンチーニ・トウキョウ』。迎賓館と国会議事堂の間で昼食ができたらいいなくらいの軽い気持ちで予約した。ガラス張りの建物がイマドキっぽいカッコよさ。店内の雰囲気も良い。店員さんがオーダーを通すときイタリア語で伝えていて、こだわりの強い店主なのかなと想像。日本人同士なら日本語で構わないじゃないかって思っちゃうんだよね。

僕たちが注文したランチペアーセットは、前菜盛り合わせ・ピッツァ・パスタ・ドルチェから成る、二人でシェアするのに適したメニュー。まず前菜がありきたりな料理ではなく、手の込んだ一品ばかり。これは期待できるぞ。続くピッツァがまた美味しい!薪窯で焼き上げたと思われる生地が香ばしいんだ。
今更ながらに気になって調べたら、このお店、本場ナポリで開催された世界最大のピッツァコンペティション「Pizzafest」にて、外国人初の個人最優秀賞を受賞したというシェフがプロデュースしているらしい。道理で本格的なわけだ。パスタは平凡だったけど、ティラミスも美味しかった。立地優先で選んだけど、素敵なお店に出会えたよ。
初めは自分たちを入れて二組だったのに、12時を過ぎると店内は大盛況となった。さすが、人気があるんだなぁ。

おなかを満たして外に出ると、水たまりができていた。食事中にひと雨降ったのか。晴れ女とまではいわないけど悪天候を跳ね除けてくれることが多い嫁に、ここは感謝だ。
次なる目的地に向け、山王日枝神社の鳥居を通り、山王切通坂を上って下りる。街路樹から雨粒が落ちてくるから、折り畳み傘を広げた。坂を越えたと思ったら、今度は山王坂を上る。議事堂は坂の上にあるんだね。

衆議院会館前の交差点を渡って衆議院参観受付が見えてくると、小学生の集団が歩道の半分を占拠していた。大型バスが入口の真ん前に横付けしていて、ちょっと邪魔。
衛視さんの指示で、当日受付の人たちは子供たちとは反対側に並ぶことになった。代表者だけが窓口に進み、参観申込書に記入する。僕が手続きをする間、嫁は入口で待機。受付が済むと、参加証となるリーフレットを人数分手渡される。嫁の分を彼女に渡したら、衆議院ビジターセンター奥のエスカレーターで地下へ。他の人の申し込みが終わるまでここに待つようにと、再び指示があった。幸いトイレがあったので、今のうちに行っておこう。
自分たちが待つベンチの背後の壁には、国会などに関するパネルが展示してあった。それを熱心に撮影する参観者もいる。
先ほどの小学生の団体以外に、大人の団体もぞろぞろと地下のロビーに現れた。この大人の団体の中にはスーツ姿の人が混じっており、どうもツアー客には見えない。社員旅行か、はたまた何かの研修なのか分からないけど、不思議な一行だ。
続いて手荷物及び身体検査。空港の保安検査場で見かけるようなゲートをくぐるほど、厳重なチェックを受ける。
当日受付の個人参観者はざっと15名ほど。午前の参観は混雑するらしいので13時の回にしたんだけど、この人数で少ないほうなのかな。落ち着いた壮齢のご夫婦に、女性のペア、老齢のご婦人とその息子らしき男性、アニメキャラのリュックを背負った男性、ド派手なリュックにタンクトップの男性などなど、服装から参観者たちの属性の幅広さが窺える。

全員の検査が完了したら、いよいよ見学開始。まずは、地下1階から地上3階まで頑張って階段で上る。運動不足やご年配の方にはなかなかキツいスタートだ。件のお年寄りは衛視さんと何か話されていたので、もし階段が無理なら別ルートがあるのかもしれない。
真空除塵設備や自民党総裁室、議員控室などの説明を、時折立ち止まっては聞く。みんなキョロキョロしながらフラフラ歩くものだから、後ろをついていくのが少々気疲れする。嫁も他の人と似たようなものだったので、手をつないで彼女のリードを優先することにした。

皇族室に続いて天皇陛下の御休所。立派なつくりだとは思うものの、迎賓館の煌びやかな装飾をたっぷり見たあとだからか、むしろ地味に映った。

中央広間は吹き抜けになっている。中央塔を内部から見上げられたのは、ちょっと感動ものだった。国会議事堂のシンボルである、あの塔の中に今、立っているんだなぁ。
広間の四隅には、春夏秋冬の日本の四季を描いた油絵がある。「春は吉野の桜」などと衛視さんは説明してくださったが、参議院のサイトには「作者によると、この風景のモデルは、あくまでも想像上のもの」とある。僕の目にも吉野山には見えない。おそらく俗説なんだろう。
下を覗き込むと、広間を見下ろせる。国会開会式の当日、中央玄関の扉が開かれ、中央広間から中央階段を上がって、御休所にお入りになる――ここまでの見学で、陛下の動きが頭の中で立体的に想像できて、なかなか面白い。

そして、お待ちかねの衆議院本会議場。傍聴席に着席しての見学だ。衛視さんが、「今日は参加者が多く、端のほうの席で申し訳ない」と謝られていた。団体の多い日だったのかな。そんなわけで、写真は右からのアングルに固定された。
中学生の時の記憶は断片しか残っていない。ただ、もっと大きな部屋のイメージを持っていたんだけど、それに比べるとやや小さく感じた。ニュースで見たことがある程度の、政治に関心のない子供ですら印象に残るくらい、議場には荘厳な空気が満ちているんだろう。

中央の扉から、数人の衛視さんが出入りしている。議長席の前で一礼したりするから、最初は参観者向けに国会の雰囲気を出してくれているのかと思った。でもそれはたぶん間違いで、衛視さんたちの手順の確認や教育を実施しているんだろう。

気づけば傍聴席は一杯になっていた。できれば真ん中から見たかったけど、どこに座れるかはその日の運次第だなぁ。
それにしても蒸し暑い。いくら古い建物だからといって、空調が無いとは考えにくい。でないと、真夏の国会で議員さんたちが倒れかねない。閉会中は切っているんだろうか。背中の汗でシャツが張り付いて気持ち悪いし、しかもベンチは堅いし狭いしで、全然寛げないね。

上りとは異なる狭い階段で1階へ下りたら、院の外へ。横から見る外観が新鮮だ。
前庭に植えられた47都道府県の木などを眺めつつ、議事堂正面へ。

威風堂々、まさにこれぞ国会議事堂!という光景。これをバックに撮った集合写真が今も手元に残っている。数十年ぶりにこの景色と再会して、しみじみする。
参観コースはここで自由解散。記念撮影などをして、正門から外に出る流れだ。
嫁とどうしようか話していたら、若い男性に写真撮影をお願いされた。もちろん快諾。行く先々で頼まれるのは、カップルだからなのかな。

余談。永田町駅に向かって歩くと、国立国会図書館の前を横切ることになった。古代史などの勉強でNDL(国立国会図書館)デジタルコレクションをよく使っているので、いつもお世話になってます!と心の中でお辞儀した。

国会参観は、大人の修学旅行みたいで面白かった!嫁もたくさん学びがあったみたい。学生時代の遠足や修学旅行先に、大人になってから再訪すると新しい発見がいっぱいある。これは寺社に限らず、色んな場所に当てはまるんだなと気づいたよ。

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