高砂海浜公園にナビツマ嶋の面影を追って

2017年3月4日土曜日 17:14

播磨国風土記に、
遂に島に渡って、景行天皇は印南別嬢イナミノワキイラツメと巡り逢った。天皇は、「この島に愛しい妻がナビ(隠れ)ていたのだ」と言った。このことによって南毘都麻なびつまと名付けた。
とある。
ナビツマ伝説の舞台であるナビツマ嶋はしかし、加古川の流れが変遷するなかで消えた。千年以上前と現在とで地形が変わるのは当然。
だけど、その失われた島を彷彿させる場所があるとすれば、ロマンを掻き立てられるじゃないか。

伝説ゆかりの地を転々と歩き回った僕たちは、車に戻ってお隣の兵庫県高砂市へ。高砂町向島町にある高砂海浜公園に向かった。
加古川を渡ってすぐ、相生橋西詰を南に折れ真っ直ぐ進むと、突き当たりの駐車場に到着。割と埋まってる。


遊歩道に出ると、加古川の河口がよく見渡せた。
ぼんやりしてたら、パドルサーフィンしてる人たち3人ほどが横切って、川を上っていくのを目撃。へぇ~、こんなところでやってるんだ。


改めて公園に入り松林を抜けると、砂浜と青い海が広がり、その向こうには人工島が浮かんでいた。おお~、いいじゃない!雰囲気出るね~。
公園内は、子供たちのはしゃぐ声や、のんびり釣りをする人、若いカップル、犬の散歩など、地元民の憩いの場といった感じ。それも含めて良いな。
向島は埋め立て地、だからこの砂浜も人工のもの。海にはヘドロが溜まり遊泳禁止と、現実を直視すると幻滅モノだけど、そういうことはあまり考えないようにする。大事なのはムードだ。
ナビツマ嶋はだいだいこのあたりにあったのだろうし、あの人工島がまさにその存在をありありと思い浮かばせる。
よし、あの島まで行こう。


橋を渡り島に着くと、謎のオブジェが目の前に。特に案内板などは無いので、これが何を意味するのか判らなかった。遠目には鳥居に見えなくもない。そう考えた自分の偏りっぷりに、心の中で苦笑する。


ナビツマ伝説の根底にあるのは、求婚された女が身を隠し、男が探し出すという、上代の風習だ。嫁と二人でここに立ってると、自分たちをその主人公になぞらえてみたくなる。


浜辺のほうを振り返ると、四角く切り取られた海と松原。悪くない景色だが、工場や鉄塔が邪魔だぁ……。


さらに西に目を向けると、小さなお社らしきものがあることに気づいた。今度はあっちだ。


ぐるりとコの字に遊歩道を行き、静かな松原を歩く。日本の白砂青松100選にも選ばれたそうだ。白砂青松って言葉がもう美しい。


そうして辿り着いたのが、湛保たんぽの祠。観音開きの石の扉の片方が外れ、内部が露出していた。こういう姿を見るのって寂しく、いたたまれなくなる。
湛保とは飾磨港の別名らしい。何をお祀りしてるのかまでは石碑に記載が無かったが、航海安全を願ってのものだろうか。

何があるというワケではないけど、ゆったりくつろいで散策するにはとても良い公園だった。愛しい人が隠れていなくってもロマンティック。浜の宮公園でも感じたことで、こんな近くに魅力的な場所があると知って嬉しいね。

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