平城宮跡遺構展示館は遺構も展示も凄かった

2019年8月3日土曜日 12:11

平城宮跡遺構展示館、正直なめてたわ。掘立柱跡が見られて終わりでしょと思ったら、見所満載。
まず遺構展示そのものが凄い。現地説明会にでも行かない限りそう見られるものじゃないのに、ここでは発見当時のままの遺構が見られる!ガラス越しとかじゃなく、何の隔たりもない生!他では聞いたことがない。
他にも、内裏正殿復原模型や井戸枠などの出土品が、3棟に渡り展示してあって、フルに堪能したら1時間じゃ足りなかった!

この日の朝。セトレならまちの朝食は奈良尽くし。スムージーに始まって、杉箱に入ったお弁当で締めるって、オッシャレ~。セトレ、食事全般にハズレがないなぁ。
チェックアウトしたら、ホテルから目と鼻の先にある興福寺へ。


ようやく再建された中金堂の拝観が叶った。不比等くーん。
御本尊は釈迦如来坐像。脇侍として薬王・薬上菩薩立像が控える。さらに、南円堂から移された国宝の四天王立像が、須弥壇の四方を守護していた。静かに合掌。かつての中金堂に安置されていた仏像に、限りなく近づけようとしたのかな。
普段の寺院参拝では仏像のほうに目が行くけど、この日ばかりは、まだまだ新しい中金堂の外観に見入ってしまった。

次は平城宮跡遺構展示館。平城宮跡にはたくさん見学施設があるから、まだ行っていない所を回ってみたかったんだ。
宮跡の北側を通る谷田奈良線を進むと、駐車場に着いた。


館内に入り展示室へ進むや、ボランティアガイドさんが声を掛けてくださった。このまま解説をお願いしよう。
内裏正殿復原模型を用いて、今となっては貴重な桧皮葺であること、円い柱が使われていること、部屋の仕切りが無かったことなどを教えてくださった。


内裏の井戸や、第二次大極殿基壇の土層剥ぎ取り、第二次大極殿屋根の部分復原と続く。版築は知ってる~。
時間は大丈夫かと、こちらの予定まで気にかけてくださり、説明を巻くこともできるっておっしゃって。あちこち回りたくて、あまり時間をかけられない方もいるんだとか。僕らはといえば、予定なんてないんだ、とことん語っていただきたいよ。
内裏の変遷に話が及んだ時、聖武天皇の繰り返した遷都から恭仁京のことが出てきた。で、思わず、恭仁京の場所といえばむしろ、元明天皇が離宮として行幸していたことのほうが印象に残っている、なんてことを喋っちゃった。すると、もしや続日本紀を読んでる?と訊かれ、はい、と。それならよほど詳しいはず、記紀を読まれる方は多いが、続日本紀までとなるとなかなかいない、だって。ふふ、色々バレたぞ。


遺構露出展示は、さすがの迫力。写真ではなかなか伝わらない。常時発掘当時の状態が見学できるって、本当に凄いことだよ。しかもこんな間近で。


柱穴が重なり合っていて、建物が何回も建て替えられたことが判る。とはいうけど、どんな技術を使えば年代順が判るの?これ、壱岐の原の辻遺跡に関する講演を聞いたときに、後々から浮かんできた疑問でね。同じ状況だったから、これは良い機会だと質問してみた。
すると、複数の遺構が重なり合っている発掘現場では、出土品からそれぞれの年代を推定するんだって。だから、同じ場所に建物があったとしても、各年代別の規模が判るんだとか。へー!見事な回答。謎が解けたよ!
だから逆に、出土品が出ないと年代不明になると。実際、この手前の建物跡は不明らしい。


隣の棟に移動する。って、ここそんなに広かったの!?掘立柱跡の存在がクローズアップされているから、てっきりここで終わりだと勝手に思い込んでいた。
そこには発掘遺構の模型を示して、出土した井戸枠を合わせて展示していた。


磚積官衙せんづみかんがと呼ばれる区画の復原模型もあった。せんというのは奈良時代のレンガ。内裏に近いうえ、他の役所にはあまり用いられない磚が多数用いられていることから、太政官だいじょうかんすなわち中央の最高行政機関だったのではないか、と考えられているらしい。
余談ながら、磚という字、土偏でも書くんだね(説明ではそっち)。


現代の瓦と第一次大極殿の瓦(復原)を、触って重さを比べることができるコーナーも。体験できるって面白いよね。嫁も興味深そうに触れたり、質問したりしていた。
役人の文房具や、役所名が書かれた土器などもあった。裏に名前を書いて識別って、小学生みたい。


展示棟はさらに南にもある。その手前に、礎石そせきが並べられていた。


南棟には磚積官衙遺構。こちらもそのまま。磚が整然と積まれていて、当時の技術に触れた思いがする。


緑色はカビだそうだ。平城宮のある辺り一帯の地層は水量が多く、対策を施してもすぐ水が入ってきてしまい、こうなったんだと。ただ、水があったからこそ、腐らず千年以上前の物が残ったという側面もある。考古学的には非常に恵まれた地なんだね~。
木簡なんかが顕著だけど、木は空気に触れているから腐り、土に還る。だけど、水に浸かっていることで空気に触れず、腐らないという理屈。ガイドさんが解説してくださったけど、そこは知ってた。いちいち出しゃばらないけど。


さらに奥の屋外には、磚積基壇建物の部分復原。雨が染みてこないように、シートを被せているそうだ。
平城宮跡の発掘調査って50年以上やっているけど、まだ4割しかできてないんだって。6割も手付かずなんて、楽しみがいっぱい残されてるってことじゃないか!
宇奈多理神社と推定宮内省跡の間あたりが、現在ホットスポット!次は何が出てくるか……。左側のこんもりした森が宇奈多理神社。あの敷地は掘れないだろうけど、重要な建物があった可能性の高い場所だとか。
他にもまだまだ調べてない土地はたくさんあるわけで、これまでの歴史の常識をひっくり返す発見だって、あるかも知れない。奈良の地下にはロマンが埋まっている。

最後に入口に戻って、平城宮跡スタンプラリーを勧められた。期限は無いし、全部集めたら大極殿のクリアファイルが貰えるって。え、やるやる~。スタンプラリーやってるのは知ってたけど、物に釣られた。
それと、平城宮跡資料館で今、スゴい冊子が無料で配られていることを教えてくれた。平城宮跡の植物についてまとめられていて、結構なページ数があると。奈文研(奈良文化財研究所)の企画。これは行くしかない。
もうガイドさん、奈文研なぶんけんって略称で言っちゃってる。どうせ僕なら知ってるだろうと踏んでかな。うん、知ってる!

や~、堪能した……。嫁が言うには、僕はとても楽しそうにしていたって。だってホントに楽しかったもん。
そして、ついてくださったガイドさん、メチャクチャ感じ良かった!説明もわかりやすくて、質問にも的確に答えてくださった。普段文献ばっか読み漁ってて考古学的知識が乏しいから、たくさん勉強になった。改めてありがとうございました!

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