薬師寺と唐招提寺の推し仏像

2019年3月1日金曜日 17:05

奈良には幾多の仏像があるが、僕が好きなのは薬師寺金堂の月光菩薩、嫁は唐招提寺金堂の千手観音菩薩。中途半端に時間がある旅程だったから、せっかくなので二人の“推し”に会いに行くことにした。

土曜日の講演会参加のため、半休取得して奈良入り。意外と高速がスムースに流れていたものの、時刻は14時半を回っている。
道に迷いつつも、まずは薬師寺の南駐車場に到着。駐車場と境内がちょっと離れているんだよな。


薬師寺に向けて参道を歩いていくと、右手に休ケ岡八幡宮が現れた。神社と寺院は一体。やはりここは薬師寺の守護神のようだ。となると、参拝せねばなるまい。檜皮葺替工事のため、御神体は仮殿に遷しているとのことなので、そちらに拝礼。これでよし。


さらに進むと、今度は孫太郎稲荷神社。こちらは薬師寺との繋がりがないらしい。
だけど、歩かないと気づかないものに出会えて楽しい。


程なく薬師寺南門に着いた。
薬師寺は、天武天皇が皇后(のちの持統天皇)の病気平癒を願って藤原京に建立され、その後平城遷都に伴い現在の地に移された。建てている途中に病気が治っちゃったっていうところまで含めて、このエピソード好き。
初参詣は4年前。この間に色んなことを学び、飛鳥時代のロマンを感じることができるまでになったわけだ。まるで見え方が変わるんだら、面白い。


さぁ、金堂に入ろう。御本尊薬師如来の脇侍として、右に日光菩薩、左に月光菩薩。
僕はこの月光菩薩の、やや左にくねらせた姿勢、足に張り付いた波打つような衣装、滑らかな指の動き、そして優しげなご尊顔の、艶やかさに惚れている。対になる日光とも微妙に異なるんだ。角度を変えたりして、気の済むまで見つめ、拝んだ。
それで浮かれていたんだろう、翌日に会う天武推しさんのために、御守を授かるのをうっかり忘れるところだった。嫁に指摘されて気づいた。予め言っておいて良かった。


ところで、4年前にも実施されていた東塔の解体修理は、まだ終わっていない。しかし作業は大詰め。だからなのだろう、新旧水煙特別公開が行われていた。なんて素晴らしい偶然。しかも見学無料。
水煙すいえんとは火炎状の装飾で、相輪そうりんを成すパーツのひとつ。火炎なのに水煙というのは、火事除けの意味が込められているとか。相輪というのは、仏塔の最上部に付いている装飾金具のことだ。


特設会場に入ると、いきなり見えたのが刹管さっかん。刹管も相輪のパーツで、中心を貫く柱となる部分だ。さつ銘(刹管に刻まれた銘文)に薬師寺の縁起が記されているというじゃないか。
薬師寺東塔は、奈良時代から残る伽藍で唯一の建築物。つまりこの銘文も、当時から伝わるもの。こんな貴重な品が、なんと撮影OK。嬉しすぎる!
冒頭を抜粋すると、
維清原宮馭宇天皇即位八年庚辰之歳建子之月以中宮不悆創此伽藍
訳すと、
清原宮にて国を統治した天皇(天武天皇)が即位して8年、庚辰の年(680年)建子の月(11月)に中宮(皇后)が病気になられたので、この伽藍を創った。
となる。前述したことが、まさにここに書かれている!もう感動するしかない……。


会場中央には新旧の水煙。こちらが新しく鋳造された、平成の水煙。ムラがあるのは、オリジナルを意識してだろうか。


それから奈良時代の水煙。炎だけでなく天人てんにんが舞うさまは荘厳だ。2つを並べて、しかもこんな間近で見られて、ホント良かった。
お坊さんが解説をされていて、聴衆が取り囲んでいた。寺院側としても、事業を盛り上げたいんだろうな。

駐車場に戻る途中、『寿吉屋』さんで薬師味噌を買って、今度は唐招提寺の駐車場へ移動。こちらはわかりやすい。


唐招提寺金堂の御本尊盧舎那仏の脇侍、向かって左が千手観音菩薩。
953本の腕には何度見ても圧倒される。本来は文字通り1000本あったというし、実際そうなんだろうとしか思えない。
金網越しにしか拝めないのがツラいところ。時折催される特別拝観では、堂内に入って参拝できるとか。いつか経験したい。
嫁が満足するまで付き合う。ツアー団体客が来たので譲ったりしつつ、彼らより先に来て彼らより後まで残って、観ていた。
それにしても、奇しくも嫁と推しのポジション同じなんだよね。左の脇侍っていう。面白い共通点。

最後に売店に寄って、嫁が千手観音のポストカードを購入し、ホテルへ向かった。

や~、眼福々々。一番好きな仏像を好きだけ拝めただけでなく、思わぬお宝も拝見できた。旅行初日からツイてるなぁ。

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