名古屋港水族館とワニとわに

2025年7月18日金曜日 13:42
涼を求めて名古屋港水族館へ。延床面積41,800㎡・総水量27,000tは共に日本最大を誇り、名古屋を代表する観光施設だ。僕らのお目当てはベルーガやシャチといった海獣や、水族館ならではの珍メニューが食せるレストラン。天気に振り回されはしたけど、楽しく過ごしてきたよ。

連日当たり前のように気温が30度に達し、35度を超えることも珍しくない昨今。こんな季節でも楽しめるお出かけスポットといえば、避暑地だ。涼しい山上の高山植物や、一年を通じて気温が一定の鍾乳洞をコースに組み込んで、ヤマトタケルゆかりの地を巡るなんてどうだろう。そう考えたのが此度の旅程。ところが天候不良の影響で、計画を変更することになるのだけど。
木曜の夕方、仕事をほぼ定時で切り上げ帰宅。軽く夕食を済ませたら出発し、山陽道から中国道経由で名神高速へ。雨の中のロングドライブは久しぶり。カーナビが何度かこの先渋滞と知らせてきたが、いずれも解消していたため、結局一度もハマることなくすんなり行けた。ただ、彦根ICを下りたところで、ナビに載っていない路が。多少焦りはするものの、運転は慎重に。ともあれ進んでみるしかない。どこまで続くかわからないトンネルにやきもきしたけど、1kmほどで脱出。前方にホテルが見えたことでどうにかなるぞと、あとは己の目で見て判断し、無事ホテル前に到着。しかし敷地内駐車場は満車のようだったので、提携駐車場を確認してタイムズ彦根駅東口までぐるりと回って、駐車。やれやれ。先ほどのトンネルについて調べたら、彦根お城トンネルといって2024年12月に開通したばかりらしい。道理で最近更新していなかったカーナビには出てこないはずだ。それでも最短で向かえたから、結果オーライ。
今回、前泊でお世話になったのがコンフォートホテル彦根。応対してくれたフロントスタッフの、ホッとするような笑顔が印象に残った。朝食も美味しかったなぁ。定番だけでなく、海老とキノコのホワイトソースなど栄養バランスの考えられたメニューや、ブルーベリーヨーグルトスムージーのほか、ご当地グルメとして近江八幡市の名物・赤こんにゃく入りの滋賀米こうじ味噌汁なんかもあって、充実の内容。朝ごはんをしっかり食べるようになった僕らには、とても嬉しいサービスだった。
気がかりなのは、伊吹山ドライブウェイが大雨により通行止めになっていること。18日以降営業再開予定とのことだけど、7時過ぎの時点では再開のお知らせは無し。仕方ない、プランBに予定を変えることにして、伊吹山は山容だけ拝みに行こう。
彦根ICから米原ICまで名神を1区間だけ利用して、醒ヶ井駅前を通りつつ北上。奇しくもヤマトタケル伝承地である「居醒泉いさめがい」付近を走ることになった。

そうして滋賀県米原市春照にあるヤマトタケルの銅像の立つ場所へ。周辺に駐車場がないので、広くなっている路肩に数分だけ停車。伊吹山の神と思しきイノシシもいるので、『古事記』準拠か。『日本書紀』では伊吹山の神はヘビの姿で現れる。
タケルくんの背後には伊吹山がそびえている……はずなんだけど、濃い霧に覆われて山頂はまったく見えない。タケルくんの末路を思えば、これはこれで、不穏な空気が漂っていて絵にはなるかな。
この分だと、山の上に行ったところで景色は望めそうにないし、ご縁が無かったと諦めよう。6年前に竹生島に行こうと彦根に宿泊したときも、強風で定期船が欠航になったし、つくづく巡り合わせの悪い場所だなぁ。

気を取り直して、関ケ原ICから再び名神に乗って一宮ICから名古屋高速へ。雨が降ったりやんだり、ころころ変わる空模様。それにしても右車線側にある出入口が多いな。港明ICで下りたら、そのまま南進してガーデンふ頭西駐車場へ。9時20分頃着けた。車を下りる前に、スマホで電子チケットを購入。

プランBは名古屋港水族館。旅行の当初案には入れていたから、下調べ済み。屋内メインだし、魚たちの泳ぐ姿に涼しさを感じられるだろう。
駐車場から歩道橋を上って水族館入口へ行き、チケットを持っている人の列に並ぶ。三連休直前とはいえ平日だからか、思っていたより少ない。
エントランスを抜けてまずはシャチプール。って、あれ、シャチがいない。プールは2つが繋がっていて、奥のほうにいるから見えないのかな。

それならベルーガプールへ。こちらは早速可愛い顔をしたシロイルカから寄ってきてくれた。嫁が一番会いたがっていたのがこのベルーガだから、大喜び。しかも、「キュー」と鳴く声まで。水中にいる時に聞けるとは思っていなかったよ。あの声を聴きたいねって話をしていたから、すごく嬉しい。

ここで引き返して連絡通路を歩き、南館へ。レストランの前まで行って受付システムを確認。受付時間前とあって、さすがにまだ誰もいない。少しだけ南館を見て回ろう。

黒潮大水槽を泳ぐマイワシの群れは、球体のように整然として、光に当たってきらめいて美しい。近づいて観察すると、びっしりと無数の魚影が同じ方向に向かうスピードに驚く。
良く見ると、群れから離れてのんびりしているイワシもいて、どんな社会にも色んな個性がいるんだなぁと。

トンネル水槽をくぐり、伊勢の海のマダイなど身近な魚を見ていると、ついつい美味しそうという感想が口をついて出がち。高級魚のクエも、いつか食べてみたいと思いつつ見てしまう。

その先の水槽は、ひと工夫されていて面白い。水深の違いでの色の見え方が再現できる水槽では、赤い魚の色がそれぞれ違って見えるのが理解できた。30mでは色が判別できず、10mでは辛うじて1種類だけ赤を感じて、2mにしたら全部赤いじゃないかって笑った。
ハンドルを回すとその方向に水流を起こせる水槽では、流れに向かう性質をもつ魚の動きを実験できた。逆方向に回したら、徐々に向きを変えて魚たちが泳ぎだすし、へぇ~!って素直に感心。
そろそろ10時、一旦レストランまで戻って受付を済ませる。余裕の1番。ここまでガチらなくて全然大丈夫っぽいな。

さて南館の続き。マダコが弁を開けたり閉めたりするのを見たり、水中ドームに入ってウツボと記念撮影なんてことも。鋭い歯を顕わにしてウツボさんも協力的。
サンゴ礁大水槽には、お掃除しているダイバーさんがいた。色とりどりのチンアナゴ水槽もあった。

それからベビーサイズのカクレクマノミ。最近生まれたそうで、産卵や孵化に関する展示があり、飼育への取り組みと苦労だけでなく、その大切さも教わった思いがする。

サンゴ礁水槽の一つは、サンゴがまるで花のよう。マイタケのようでもある。前者が僕で、後者が嫁の感想。
ウミガメの羽ばたくような泳ぎは優雅で好き。蛍光色のサンゴは撮影が難しい。

6月28日に砂の中から這い出てきたばかりという、アカウミガメの赤ちゃん。まだうまく潜ることができないんだとか。確かにほとんどが水面でバタバタしていて、ほんの一部の子だけ遊泳している。
こちらも、社会教育の場としての水族館を意識することができた。展示の仕方が巧いなぁ。

一方で、ニシキマゲクビガメの愛嬌のある顔に、ただただ頬が緩んだりもする。

北館でイルカに触れなかったように、ペンギンも見慣れた感じがしていたんだけど、久々にペンギンを可愛いと思った。エンペラーペンギンが列を成して、飼育員さんのところへひょこひょこと歩いていくさまが、もう可愛くて可愛くて。
「くらげなごりうむ」では、嫁の大好きなクラゲがグラデーションする照明演出。彼女がうっとりしていたから、行けて良かったよ。
撮影タイムに勤しむグループに陣取られてゆっくり見られなかったサンゴ礁水槽に戻ったりしてから、レストランへ。

レストラン『アリバダ』には、店内に全長8メートルの大型水槽があり、カラフルな魚を眺めながら食事ができる。1番の受付とあって、特等席に案内された。

注文はもう決めてある。一つはシャークステーキ。「モウカザメ使用」とメニューに書いてあったけど、ネズミザメといったほうが通りが良いだろう。ただ食事の場に“ネズミ”は不快な思いをする人も多そうで不適切と判断されたのか、別名のモウカザメ表記なんだろうな。とか余計なことを考える。
でも味は癖がなく、一般的な白身魚よりさらにあっさりとした味わい。バジルソースやトマトソースと良く合う。

もう一つはクロコダイルのコンフィ。「イリエワニ使用」とのことで、人間を襲うこともある最も危険なクロコダイル科のワニといわれる。それを食べる。そんな発想をする人間のほうが恐ろしい。
焼けた鱗や爪が生々しく、このビジュアルでダメな人はいそう。味は鶏肉に近い。この表現、昔カエルの唐揚げを食べた時とまったく同じだなと思い出した。カエルみたいに小骨があるわけじゃないから、むしろ食べやすい。ってどんな比較だ。
意外とチャレンジ精神旺盛な嫁。鱗の部分もちょっとかじってみていた。苦いけどその下のお肉はイケるそうだ。じゃあ僕も試してみよう。うん、確かに美味しい。
ところで、日本神話の女神トヨタマビメの正体を、『古事記』では「和迩わに」と記していて、サメと解するのが通説。『日本書紀』では「竜」とされる。竜のモデルになったかもしれないワニが古代中国にいたとしたなら、日本にも伝わっていたとしたなら、ワニ=竜で、「和迩」はサメではなく文字通りワニ(鰐)だった可能性もあるんだよね。どちらにしても、僕たちはサメもワニも食べたことになる。

水槽を見ていて気になったのが、白い魚が砂をくわえて掘っていたこと。縄張り意識が強いのか、他の魚が近づくと執拗に追い立てていた。
他の魚同士でもいざこざが起こっていたりしたし、単なる鮮やかなディスプレイではない営みがそこにあった。

ランチを終えたら、シャチに会えないかなぁと北館に戻ってみる。すると、手前に来てくれていた。良かったぁ。須磨シーと違って普通に見られるのが良いね。

シャチ公開トレーニングの時間に合わせて、3階スタジアムの脇を通ってシャチプールの前へ。観賞のしやすさよりも、その大きさを間近に感じたくて。これが僕の一番の目的。実際、巨体が宙を舞うジャンプはド迫力。ショーの類いではないから、海水を浴びせられることがなかったのも良い。
雨が降らず、時折陽が射すことがあったけどカンカン照りでもなく、暑い時期にしては見やすい気候で助かった。
最後に、もう一度ベルーガの所へ。愛くるしい顔をしているけど、腹筋がバッキバキでそこは気色悪くもある。不思議な魅力のいきもの。
ミュージアムショップで両実家へのお土産を買って、水族館を後にした。

想定内とはいえ計画を変更したけど、なんだかんだ楽しかった。ショーパフォーマンスではなくただシャチに会いたいなら、須磨シーより名古屋港水族館をオススメするね。別に前者を否定しているんじゃあなくて、在り方の違いとして。
ずっと食べてみたいと思っていた“わに”も口にできて、達成感があるよ。

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