平城宮跡 吉備内親王展と大極殿院南門

2021年11月21日日曜日 20:29

『吉備内親王展』が平城宮いざない館にて開催されている。昨年の『元明天皇展』に続いてのパネル展で、主催は平城宮跡管理センターとココトソコノ制作室さん。吉備ちゃんは長屋王の妻で、悲劇に見舞われた女性だ。僕にとっては阿閇ちゃんの娘という印象が強い。今回の旅行は、展示の会期に間に合わせるために組んだものだ。

ホテルを発って、まず向かったのは薬師寺。東塔の初層特別開扉を行っているからだ。疫禍で落慶法要が延期されている状況ではあるが、有り難いことに、それに先立って公開してくださっている。
南駐車場には多くの車が停まっており、賑わいが戻りつつあるのを実感。


先に薬師寺の鎮守神、休ケ岡八幡宮にお参り。檜皮葺替工事が終わっており、美しい朱塗りの拝殿をようやく拝めた。


薬師寺の南受付にて拝観料を納めたら、真っ直ぐ東塔へ。立ち入ることは叶わないが、初層の中をじっくり見ることができた。テレビ番組で内部の様子をあらかじめ知ってはいたけど、自分の目で確かめるほうが何倍もの情報を得られる。返す返すも有り難い機会。

金堂で薬師三尊像にご挨拶して北へ抜けると、大講堂から読経が聞こえてきた。短時間だけ中に入って拝聴。諷経の声が講堂内に反響して、神秘的にすら感じた。


忘れずに東院堂にも寄って、聖観世音菩薩に静かに手を合わせた。何度見ても惚れ惚れする。東院堂は、吉備ちゃんが阿閇ちゃんのために造立した東禅院が前身だからね。吉備ちゃんゆかりの地ということで、『吉備内親王展』とクロスする場所でもある。


そこから少しだけ頑張って、西南西に位置する大池まで歩いた。池越しに薬師寺から若草山までを眺望できる、有名な撮影スポットだ。や~、薬師寺が好きなら一度は見ておきたい景色だね、これは。池では鴨たちが泳ぎ、辺りにコスモスやススキも生えていて、晩秋を感じられた。

続いては平城宮跡歴史公園。朱雀門ひろばの南側に新しく駐車場――県営奈良めぐり平城宮跡前自動車駐車場ができたと聞いたので、三条大路から回っていくことにした。すると、南側にも駐車場入口があり、北側の大宮通りとの間すべてが敷地になっているようだ。広い!
が、駐車場ゲート前には長蛇の列。よもやここまで混んでいるとは。先に薬師寺参拝して正解。時間に余裕があったから、気長に空きが出るのを待った。数十分待機して無事に駐車。公園を前にして混雑の理由を理解した。秋の天平祭やってるのね。知らずに行っちゃったよ。


目的はお祭りじゃあない。平城宮いざない館の休憩コーナーへ向かう。そして、『吉備内親王展』を恭子先生の美麗なイラストとともに観賞。吉備ちゃん自身の記録はかなり限られるが、周辺の人々の情報を合わせることで、その生涯がおぼろげながら浮かび上がってくる。また、知らない学説にも触れることができて、勉強になった。それに何より、吉備ちゃんにスポットを当ててくれたことが嬉しいよねー!リーフレットもスマホ用壁紙もゲット!
お祭りのひと休みにやってくる人たちが結構いるため、パネル展示に目を向ける人も多いようで、中には熱心に読んでいる方もおられた。それもまた嬉しく、ある意味良い時に行ったなと。


さて、今回のテーマは平城遷都。ということで、大極殿のほうまで足を延ばす。朱雀門に立って望むと、南門と大極殿が重なって見えるー!


大極殿院南門の近くに寄ってみた。復原事業が進んで回廊まで建ったら、大極殿は外から見えなくなるんだろうな。今だけの光景かと思うと、ちょっぴり淋しくもあり。
和銅3年2月の遷都の段階で、京がすべて完成していたわけではない。「和銅三年正月」の年紀をもつ荷札木簡が南面回廊の整地土から出土しており、当初、少なくとも大極殿院南面回廊が未完成であったことを示している。
遷都の道のりを辿る旅行としては、ここがゴール。復原事業として南門ができつつあるけど、工事中という意味では近しいシチュエーションなのが、なんとも相応しいじゃないか。

残る予定はお茶することだけなんだけど、中途半端に時間が余った。そこで、もうちょっと歩いていいか嫁に相談。


そうして向かったのが、平城京左京三条二坊宮跡庭園。平城宮跡には何度も訪れているのに、わずかばかり離れているせいでなかなか行けずにいた所だ。やっと行けたよ。
宮跡庭園は古代庭園の姿を今に伝える遺跡で、平城宮の離宮あるいは皇族の邸宅であった可能性がある。奈良時代中期ごろの様子が復原されているが、園池は発掘された本物を露出展示しているとのこと。
長屋王さんちの目の前なんだよなぁ。


園池の描く曲線が秀麗で、古臭さを感じさせないさまは、古代人との美の意識を共有する思いがする。庭園が好きな嫁もお気に召したようだった。
ただ美しいだけでなく、排水施設もレプリカを作成し、当時の状況を復原しているのだとか。水を流して排水もしてと、奈良時代にそこまで高度な技術があったことに驚嘆。


復原建物は靴を脱いで上がることができ、そこから庭園を眺めると貴族気分。ここで宴とかできたら最高だろうなー。


そうこうするうち、良い頃合いとなった。最後はJWマリオットホテル奈良で、リヤドロアフタヌーンティー。『LOUNGE&BAR FLYING STAG』にて、カウンターの鹿デザインと一緒にフレームに収められる席配置にしてくれて、映えを解ってるなぁと。スタッフさんたちが一様に忙しそうで、紅茶のおかわりお願いするのがストレスになったのが、残念ではあったけど。美味しいものを摘まみながら二日間を振り返るのは、とっても楽しかったよ。

いつになく車移動に頼った、あまり歩かない(当社比)旅程だったけど、明確なテーマを持って巡ったから充足した内容になった。良いリハビリになったし、阿閇ちゃん充もしたし、嫁にも喜んでもらえたし、いうことなしだね。

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