奈良ホテルと奈良公園の紅葉

2021年11月21日日曜日 11:01
奈良ホテルは、古都に相応しい和洋折衷様式の建物で明治42年に開業。迎賓館に準ずる施設でありながらも、その歩みは紆余曲折。そして今や、百年を超える歴史と品格を備えた、奈良で一度は宿泊してみたい憧れのホテルといっていい。建築の美しさだけでなくホスピタリティも一級。せっかく奈良公園が近く、紅葉の季節に訪れたので、そちらと合わせて満喫してきたよ。

中ツ道から上ツ道を経由して奈良入り。Aプランで計画していた神社をいくつかスキップしたため、チェックインの時間には少し早い。奈良公園散策に充てようと嫁に提案し、受け入れられた。ダメもとで行った奈良登大路自動車駐車場は案の定満車で、猿沢池南にいくつかあるコインパーキングを目指してぐるりと戻ったら、丁度出ていく車があって停めることができた。ツイてるね。
ただ、紅葉スポットをろくに調べもせずに行ったものだから、まるで良い景色に出会えず。春日大社表参道の南側や飛火野とびひのを歩いただけになった。
それにしても観光客がたくさん。ハイシーズンの上に、リベンジ旅とやらが重なったからだろうか。

15時過ぎに奈良ホテル前に到着。早くも入口近くの駐車場が埋まりつつある。ホテルマンが走り寄ってきて、駐車位置について案内してくれた。車を置いて玄関前まで進むと、今度は別のホテルマンがボストンバッグ運ぶのを手伝ってくれた。
フロントは宿泊客で溢れ慌ただしい空気。荷物が若い女性スタッフに引き継がれ、そのままチェックイン待合室へと通された。椅子に座って待てるわけだ。その間に、用紙に名前などを記入する。
結局あまり待たされることなくチェックインカウンターへ。手続きを済ませ、ホテルからの案内を一通り聞いた。
――実に手際のよい流れ。忙しいだろうに、そういう雰囲気を一切感じさせない接客が本当に素晴らしい。さらに、部屋に行く前に館内の見取り図を確認したくて見ていたら、お困りのことはありませんかとすぐさま一人のホテルマンが声を掛けてくれるという!そんな暇なさそうに見えるのに。館内の見所のひとつ、鳥居とマントルピース(暖炉)に気づいて嫁に教えてあげようとしていたところだったけど、その方が代わりに説明までしてくださって!スマートさに感動だよ!


嬉しい気分のまま、宿泊する本館デラックス・ガーデンビューのドアを開けると、目に飛び込んできたのはとても素敵な部屋!え、え、こんなとこに泊まっていいの!?って言いたくなるほどだし言った。


嫁も喜んで、二人でしばらく室内の撮影大会。ドレッサーまである。


窓のすぐ外に赤く色づいたカエデが見えるのも、風情たっぷりで贅沢。


部屋にも鳥居とマントルピースがあって、現在はなんと電気式暖炉になっている。揺らめく炎のような灯りがリアルで、ちゃんと暖かく、本物の暖炉みたい。これは粋な演出だよねぇ。


夕食まで時間があるので、部屋を出て館内を散策。赤い絨毯が奥まで続く、ただの廊下なのに絵になるわぁ。


大階段の重厚さもたまらん。手すりの親柱に付いた擬宝珠ぎぼしが、社寺や大極殿を彷彿させる。そういえば建物の屋根には鴟尾が載っていたな。


和風シャンデリア。鳥居とマントルピースもそうなんだけど、この和洋折衷具合が巧すぎて唸るしか。ごちゃ混ぜ感が独特の魅力を生んでいる。
他にも、『片岡山の飢人に施衣』の絵画や、アインシュタイン博士も弾いたという年代物のピアノ、現在の上皇陛下御即位を祝して置かれた平成の大時計などなど、ホテルの中を歩き回るだけで眼福。

さてさてもうひとつのお楽しみが、創業以来のメインダイニングルーム『三笠』でのディナー。ここで伝統のフレンチを頂いてみたかったんだよぉ。通された席は窓際で、外に小さな赤い鳥居が見えた。ワインセットを頼み、シャンパンで乾杯。アミューズ、前菜、魚料理と、クラシカルな雰囲気にぴったりのオーソドックスな料理の数々は、どれも美味しい。説明が少々素っ気なかったけど、サーブのタイミング自体は文句なし。ゆったり食事を楽しめた。


メインディッシュは奈良ホテル名物・鉄鍋ビーフシチュー。ここまで来るとレトロな趣。素朴な味わいだった。


うきうきしてまだ飲み足りないし、食後にバーへ移動。奈良ホテルオリジナルカクテルの『万葉美人』がデザートカクテルっぽいレシピだったので、飲んでみた。にごり酒が入っているのが面白い。これも美味。体調が良かったから、ドライマティーニを追加しちゃった。いつになく飲んだなぁ。
おつまみにミックスナッツを1つ頼んだら、2つの容器に分けて持ってきてくれた。なんて気が利いてるんだ。
落ち着いた空間で、周りの客も物静かにお酒とお喋りに興じていた。僕たちも穏やかに、満ち足りた時間を過ごした。

翌朝、少しだけ早起きして、朝食前に改めて奈良公園へと出かける。夜明けから1時間ほどしか経っていないのに、結構人出があった。みんな早いねぇ。


まずは浮見堂。うん、まずまずの紅葉。


あまり時間がないけど、やはり“紅葉に鹿”を見たい。というわけで、いそいそと吉城川よしきがわの辺りまで。前日の教訓から、ちょっとだけリサーチしておいたのだ。おお、見たかった光景がそこここに。


イチョウが綺麗な真っ黄色。鹿も可愛い。


紅葉も見頃を迎えていた。動物だから当たり前なんだんけど、動き回るからシャッタータイミング難しいね~。時間をかけられないから余計に。ただその短いひと時でもそれなりに撮れるんだから、やっぱ特別な場所だわ。


それからバタバタとホテルに帰って、『花菊』にてお茶粥定食。二人並んで庭を眺められるように席を用意してくれて、良い配慮だなぁと。あちこちの茶粥を食べてきたけど、奈良ホテルの茶粥はお茶の風味豊かで美味しかったぁ。朝から散策したからなのか、品数豊富な朝食を残さず平らげちゃったよ。珍しい。
チェックアウトはゆっくり10時半頃に。

や~、大満足……宿泊体験そのものが目的になり得るホテルだよ……。

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