USJハリポタ初体験 オリバンダーで杖に選ばれ城を歩く

2026年5月8日金曜日 21:38
授業を受け、ホグズミード村で食事をし、店を覗き、パブで休む。この日、僕たちはかなり長い時間をハリポタエリアで過ごしていた。アトラクションを効率よく消化するというより、ホグワーツとホグズミードの中で一日を暮らすように歩いていた、というほうが近い。
だけど、その“ホグワーツ生活”には、まだ大事なものが足りていなかった。――杖である。
ホグワーツ生気分で歩いているのに、肝心の杖を持っていない。もちろん、フォト・オポチュニティでは撮影用に貸してもらったけど、それはあくまで借り物だ。やはり魔法使いになるなら、一度は「オリバンダーの店」へ入らなければならない。

ということで、いよいよ初めてのオリバンダーである。

店の前には、ショーを体験するための列ができていた。そこへ並びながら、僕は少しだけ期待していた。もし自分か嫁のどちらかが選ばれたら、その杖は買おうと決めていたからだ。
とはいえ、当然ながら、選ばれる保証などどこにもない。同じ組には20人ほどいただろうか。店内へ通されると、そこは薄暗く、壁一面に杖箱が積み上げられた、小さな空間だった。テーマパークのショップというより、急に“魔法界の店”になる。

昨日、夜のホグズミード村を歩いて、湖越しにホグワーツ城を見上げた。今朝はその城の中へ入り、クィディッチやドラゴンやディメンターに振り回され、ヒッポグリフの飛行訓練まで受けた。その流れの先に、この店がある。
だから、ただのショーを見るというより、「いよいよ杖を持つのかもしれない」という気分になっていた。
嫁はというと、自分ではなく僕が選ばれたらいいと思っていたそうだ。だから僕の隣で、やや端っこに隠れるように立っていた。
だけど、杖の番人がこちらへ目を留めた。そして、すっと僕の横を見る。その瞬間、空気が変わった。「あれ、これ……?」と思った次の瞬間には、嫁が指名されていた。
本人は「え~!?」という顔をしていたけど、前に出ざるを得ない。隠れていたはずなのに、見つかってしまったのである。まるで、何が起きているのか分からないまま杖を持たされたハリーのようだった。

杖の番人に促されるまま、嫁は手をテーブルの上に置く。何をどうすればいいのか分からず、とにかく言われたとおりに動いている。
後で聞くと、あまり余計なことを言って進行の邪魔をしてはいけないと思っていたらしい。その真面目さがまた、なんだか可愛い。
選ばれた本人は必死だ。周囲を見る余裕なんて、きっとほとんどなかったと思う。
一方、僕はといえば、写真や動画を撮るのにおあつらえ向きの位置にいた。嫁の表情も、杖の番人の所作も、しっかり見える。だから横でニヤニヤしながら撮っていた。
完全に、選ばれた同級生を見守るホグワーツ生である。あるいは、保護者兼カメラマンである。

思えば、条件も揃っていたのかもしれない。同じ組の中に、ホグワーツグッズを身につけている人は他にほとんどいなかった。僕はグリフィンドール、嫁はスリザリンのネクタイを締めている。しかもそのペアが、壁側とはいえ最前列にいた。
そのうえ、嫁は選ばれたいと前に出ているわけではなく、むしろ端に隠れるように立っていた。杖の番人からすれば、目に留まりやすかったのかもしれない。
もちろん、本当のところは分からない。だけど、グリフィンドールとスリザリンのペアが並び、その片方が突然指名されるというのは、絵としてかなり綺麗だった。
そして何より、その「なんで自分が?」という戸惑いこそが、オリバンダーらしかった。慣れていない。何をすればいいか分からない。でも言われるままに杖を振る。そのぎこちなさが、かえって“本当に突然、杖に見つけられてしまった魔法使い”らしく見える。

最初に手渡されたのは、「月桂樹と不死鳥の羽根」の杖だった。杖の番人に促されるまま、嫁が「ルーモス」と唱えて杖を振る。すると、店内で雷のような光と音が弾けた。明らかに様子がおかしい。「あっ、違うな」という空気が、店内全体に広がる。
続いて渡されたのは、「クリとユニコーンのたてがみ」の杖。今度こそ――と思いきや、杖を振った瞬間、今度は鐘が一斉に鳴り始めた。店の奥まで響き渡るような賑やかな音で、これまた盛大に失敗している。

嫁はかなり戸惑っていたようだけど、後で聞くと、その一番の理由は、何を求められているのかよく分からなかったかららしい。
杖の番人は日本語と英語を交互に話していたのだけど、英語側がなかなか聞き取りが難しい。おそらく多国籍のゲスト向けに両方使っていたのだと思うけど、そのせいで、「今のは頷くところ?」「動くところ?」みたいな状態になっていたそうだ。
それでもショーの空気を壊さないよう、一生懸命それらしく振る舞おうとしていた。そのぎこちなさが、逆に“突然杖に選ばれてしまった新入生”っぽくて、妙にオリバンダーの空気に合っていた。

そして三本目。最後に杖の番人が差し出した一本を手に取る。「ナシとドラゴンの心臓の琴線」の杖だった。知的で広い心の持ち主に合う、といった説明だったように記憶している。
嫁が杖を手に持つ。すると今度は、それまでとは空気が違った。店内の光が柔らかく変わり、杖の番人は感嘆するように両手を合わせる。“選ばれた”――そんな感覚がちゃんとあった。

嫁はスリザリンのネクタイをしていたので、杖にあしらわれたグリーンの石ともよく合っていた。これはもう、買うしかない。

もともと選ばれたら買おうと決めていた。実際に嫁が選ばれた以上、その杖はただのグッズではなくなっていた。USJで買った杖ではない。“オリバンダーで嫁が選ばれた杖”なのだ。お土産ではなく、儀式の続きとして購入する。この違いは大きい。

こうして嫁は、自分の杖を手に入れた。

せっかく杖を手に入れたのだから、少しだけ「ワンド・マジック」も体験してみることにした。
あちこち回る余力はそこまでなかったので、選んだのは「ヴェンタス」。杖でVの字を描くように振ると、風の魔法が発動する。
ワンド・マジックは、事前に少し予習していた。センサーの位置や、どの方向へ杖を動かすのかを知っているだけでも、成功率が結構変わるらしい。
なのでまずは、嫁に軽くアドバイスする。「このへんを狙って、少し大きく振る感じ」――そんな具合だ。
すると、見事に成功。風が動き、魔法が発動する。
杖に選ばれたばかりの魔法使いが、ちゃんと最初の魔法を成功させた。なんだか、それだけで少し嬉しくなる。

そのあと、今度は僕もその杖を借りて挑戦してみた。初めてのワンド・マジックだというのに、こちらは一発で“大成功”。どうやらワンド・マジックには、普通の成功と、より大きく反応する大成功の二段階があるらしい。
人通りの少ないエリアの奥で、風だけが勢いよく動く。借り物の杖なのに、なかなか相性が良かったのかもしれない。
ヴェンタスは、成功するとちゃんと“風が動いた”感覚がある。センサーを反応させただけではなく、魔法がかかったように感じられるのが楽しい。
ただ、そこで普通に終わるのも少しもったいない。以前、慣れている人が、必要な動きのあとに演技っぽく余韻の動きを入れていた動画を見たことがある。成功させたあとも、まるで魔法をかけ続けているように、杖先をくるくる回していたのだ。
それを思い出して、僕も真似してみた。Vの字を描いて魔法を発動させ、そのあと杖先を軽くくるくると回す。必要な動きではない。だけど、“魔法を制御している”感じが出る。

昨日はまだ、夜のホグズミードに到着したばかりの新入生だった。今日は朝から授業を受け、村で食事をし、嫁が杖に選ばれ、その杖を借りて魔法まで成功させた。
もはや少し、魔法界での振る舞いにも慣れてきた気がする。調子に乗っているとも言う。

さて、杖を得て、魔法も使った。
次にやりたかったのは、もう一度ホグワーツ城へ入ることだった。

朝イチに「ハリー・ポッター・アンド・ザ・フォービドゥン・ジャーニー」へ乗ったときは、手荷物をすべてロッカーへ預けたうえ、列の進みも早かったので、城内のキューラインをじっくり見る余裕がほとんどなかった。
フォービドゥンそのものはもちろん面白かった。だけど、あのアトラクションは、ライドだけでなく城内キューラインもかなり大きな魅力だと思う。むしろ、ホグワーツ城を歩けるという意味では、半分以上本体と言ってもいいくらいだ。
ただ、訪問時はキャッスルウォークが実施されていなかった。それなら、もう一度フォービドゥンに並んで、キューラインを見学すればいい。
幸い、まだ体力には少し余裕があった。待ち時間は朝より伸びていたけど、それでも並べないほどではない。
今度は荷物を預けるとき、スマホだけを手に持っておく。最後、乗り場の手前でクルーさんに「列を外れたい」と伝える前提である。
つまり、ライドに乗るためではなく、ホグワーツ城を歩くために並ぶ。完全に、城内見学目的である。

ホグワーツ城の正門をくぐるとき、クルーさんから、「おかえりなさい」と声をかけられた。最初は、「あれ、この人、朝の僕たちを覚えていたのか?」と思ったのだけど、そうではない。グリフィンドールとスリザリンのネクタイを締めた僕たちを見て、“ホグワーツへ戻ってきた生徒”として迎えてくれたのだ。
昨日は、まだホグズミードへやってきたばかりの新入生気分だった。だけど今日は違う。少なくとも、城へ“戻る”くらいには、この魔法界へ馴染み始めている。

開園直後と違い、この時間帯は列がある程度伸びていた。とはいえ、スプラウト先生の温室前を通るほどではない。上階に見える温室を遠目に眺めながら、“城内”へ入っていく。

薄暗い石造りの空間に入ると、やはり空気が変わる。ただし、驚くほど暗い。本当に暗い。
肉眼で見るぶんには、その暗さが雰囲気として効いている。古い魔法学校の内部としては、むしろ正しい。
ただ、その薄暗さゆえに、写真を撮るにはなかなか苦労した。スマホの夜景モードを使いながら、白っぽく補正されすぎないよう色温度を調整する。
ホグワーツ城内は、ロウソクやランタンの暖色で見たい。明るく写りすぎると、なんだか違うのだ。

後ろからゲストが来たら、お先へどうぞと譲る。人の流れの邪魔にならないようにしながら、立ち止まって眺め、写真を撮る。そうして歩くと、アトラクションの待機列だった場所が、急に“ホグワーツ城見学”になる。

最初に気になっていたのは、スネイプ先生の部屋だった。知らなければまず気づかない位置にある。隻眼の魔女像のあるところで、後ろを振り向いた奥だ。
普通、並んでいるときに後ろなんて見ない。しかも隻眼の魔女像の存在感が強いから、視線はどうしてもそちらへ引っ張られる。それでも、事前に調べていたのですぐ見つけることができた。

薄暗い通路の奥に、ぽつんと扉がある。小さな覗き窓のついた木の扉。近づくのが少し怖い。
メイン動線から少し外れた、気づく人だけが気づく場所にあるのが、いかにもスネイプ先生らしい。まるで本当に、ホグワーツの地下にある教師の私室を見つけてしまったようだった。

次に進むと、動く肖像画の大階段へ出る。壁一面に並んだ肖像画たちが、古い城の内部らしさを一気に強めてくる。灯りは金色寄りの暖色で、石壁に影が落ちる。
ここは、誰もいない静かな空間というより、少し人の気配があるほうがホグワーツらしい。他のゲストが前を歩いているだけで、テーマパークのセットではなく、“生徒たちが行き交う学校の廊下”のように感じられるからだ。

途中には、校長室や「闇の魔術に対する防衛術」の教室もある。
校長室ではダンブルドアが語りかけてくるので、ただ城を歩いているだけなのに、“ホグワーツ生として校内を移動している”感覚が強い。

特に印象的だったのは、防衛術の教室だ。
そこではハリー、ロン、ハーマイオニーが現れ、教師のいない隙に、秘密の冒険へこちらを誘ってくる。雰囲気としては、映画『不死鳥の騎士団』から『謎のプリンス』あたりの、“生徒たちだけで動いているホグワーツ”の空気感に近い。
しかも、教室右手の黒板には、「EXPECTO PATRONUM(守護霊の呪文)」について書かれていた。あれを見ると、この教室そのものも、どこかルーピン先生の授業を意識しているように思えてくる。

そして、太った婦人の肖像画。グリフィンドール談話室の入口として知られるあの絵を実際に見ると、やはりテンションが上がる。
朝のライド体験では、ほとんど流れるように通り過ぎてしまった場所だ。改めて立ち止まってみると、ここから先に談話室があるという存在感がちゃんとある。

その談話室。窓の外の青い光と、室内の暖色の灯りが混ざって、少し夜のホグワーツのような空気になっていた。壁紙、家具、ランプ、色味。すべてが、ただ綺麗に作られた部屋というより、誰かが長年使ってきた生活空間に見える。
前日の夜、外からホグワーツの窓明かりを見上げていたとき、あの中で誰かが過ごしているように感じた。その“中”へ、いま自分が入っている。そう思うと、やはりこの城内見学はしておいてよかった。
もちろん、これは本来アトラクションのキューラインである。だけど、ホグワーツ城の内部をここまで作り込んでいる以上、ただ通過するだけではもったいない。ライドに乗らなくても楽しい。
むしろ、立ち止まって眺めていると、この場所がどれほど“ホグワーツ城”として作られているかがよく分かる。

最後に乗り場の手前でクルーさんに声をかけ、列を外れた。そこまでしてでも、もう一度歩いてよかった。

そろそろ、ハリポタエリアを出る時間が近づいていた。

最後に、入口のストーン・ゲートウェイのほうへ戻る。
前日は、ここをくぐってホグズミード村へ入った。ハーマイオニーがドラコを殴ったシーンを思い出しながら、木々に囲まれた道を進み、「ここから先は魔法界だ」と感じた。
今度は、その同じ道を逆に歩く。昨日の夕方、僕たちはまだ杖を持っていなかった。ホグズミード駅で特急を眺め、ネクタイを買い、湖越しにホグワーツ城を見上げただけの、新入生気分のマグルだった。
でも今日は違う。フォービドゥンで城内を飛び回り、ヒッポグリフで飛行訓練を受け、三本の箒で食事をし、ホグズミード村で暮らすように過ごし、オリバンダーで嫁が杖に選ばれた。その杖で、ヴェンタスを成功させた。そして、ホグワーツ城内をもう一度歩いた。
正式な入学手順とは、もちろん違う。だけど、この二日間で、僕たちは確かに魔法界へ入っていったのだと思うんだよ。

ストーン・ゲートウェイを抜ける。振り返れば、木々の向こうにホグズミードへ続く道がある。名残惜しい。できることなら、もう少しあの村にいたかった。でも、いつまでもホグズミードに留まっているわけにもいかない。

最後に、少しだけ別の世界も覗いておくことにした。「スーパー・ニンテンドー・ワールド」である。
ハリポタエリアからも、あの極彩色の世界はチラチラ見えていた。石と雪と曇天のホグズミードにいると、遠くに見える赤、緑、黄、青が、妙に気になってしまう。せっかくなら、入口だけでも見ておこう。
土管を抜ける。

すると、その先には、まったく別の世界が広がっていた。さっきまでの石造りの魔法界とは、色彩感覚がまるで違う。原色が飛び込んでくる。あまりにも鮮やかで、あまりにもゲームの中だった。
すごい。すごいのだけど、僕たちはそこでなんとなく満足してしまった。
今日はもう、ホグワーツとホグズミードで十分だったのだと思う。半日どころではない。気持ちとしては、ほとんどあの村に住んでいた。

魔法界から持ち帰ったお土産も、いくつかある。
「蛙チョコレート」の箱を開けると、中に入っていた魔法使いカードは「ゴドリック・グリフィンドール」だった。これはちょっと嬉しい。もちろんカードはランダムなんだろうけど、グリフィンドールのネクタイを締めてホグワーツ生気分で一日を過ごした身としては、創始者のカードを引けたのはなかなか良い締めくくりだった。
一方、「バーティ・ボッツの百味ビーンズ」は、変な味も一通り食べてみた。美味しいものだけ選んで食べるのは簡単だけど、それでは百味ビーンズを買った意味がない。草、鼻くそ、耳あか、ゲロ、腐った卵。名前からして食欲を削ってくるものばかりだし、実際ちゃんと変な味がする。なぜここまで律儀に再現してしまったのか。
でも、こういうどうしようもない体験まで含めて、魔法界のお土産なんだと思うんだよね。

ホグワーツへ入学する前夜のつもりで始まった今回のハリポタエリア初体験は、気づけば、城へ入り、杖を得て、魔法を使い、名残惜しく村を離れるところまで来ていた。
十数年越しに訪れた魔法界。待たせたぶんだけ、きっと良い入り方ができたじゃないかな。

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