USJハリポタ初体験 ホグワーツの授業とホグズミードの暮らし

2026年5月8日金曜日 15:39
目を覚まして最初にしたのは、パークビューの部屋のカーテンを開けることだった。窓の下では、すでに手荷物検査場前に入園待ちの列ができ始めている。
昨日は“入学前夜”の気分でホグズミード村を歩いた。だけど今日は違う。本当にホグワーツでの一日が始まるのだ。

用意しておいた軽食を食べたら、身支度を整える。僕はグリフィンドール、嫁はスリザリンのネクタイを締めた。風で暴れないよう、それぞれタイピンで留めておく。ローブを纏わなくても、白いトップスに寮カラーのネクタイをするだけで、気分は十分ホグワーツ生である。
ちなみに嫁のネクタイは、結び慣れている僕が結んであげた。

USJは、かつて公式開園時間より30分、場合によっては1時間ほど前倒しで入場開始することも多かった。それが最近では、ほぼ公式のパークオープン時間どおりに入場を開始する傾向が強いらしい。
パークフロント宿泊を活かして早めに並ぶこともできるが、あまり早すぎても時間を持て余す。手荷物検査が始まるくらいの時間でいいんじゃないかと考え、パークエントランスに人が流れ出したところでチェックアウトした。
ボストンバッグを駐車場の車に積み込み、手荷物検査場を抜けて、エントランス前に並ぶ。

空を見上げれば、雲が広がっていた。絶好の英国日和である。魔法界には、やはり曇天が似合う。快晴でないことをこんなに喜ぶ日も珍しい。
とはいえ、1時間近くただ待っているのは退屈だ。こういうときは周囲を観察するに限る。USJのインバウンド需要が大きいとは聞いていたが、確かにさまざまな人種の観光客が並んでいる。もう一つ目立つのは、マリオキャラクター人気の高さだ。子供から大人まで、カラフルな帽子をかぶった人が大勢いる。
前回USJへ来たのは13年前。その頃とは、パークを取り巻く空気もずいぶん変わっているのだと感じる。

定刻の9時にオープンし、僕たちは10分弱かかって入場した。ほとんどの人が「スーパー・ニンテンドー・ワールド」目がけて歩いていくので、途中まではその流れに乗って進む。
主流から外れて「ウィザーディング・ワールド・オブ・ハリー・ポッター」へ向かうと、ぐっと人が減った。といっても、こちらにもそれなりの人数が流れている。

とにもかくにも、まずは「ハリー・ポッター・アンド・ザ・フォービドゥン・ジャーニー」へ。
散策は後でいくらでもできる。朝イチは人気アトラクションを最優先だ。

昨夜は遠くから灯りを見ていた場所に、今日は自分が入っていく。
……といっても、ホグワーツ城の背後には巨大な白い箱が見えている。アトラクションを格納したショービルだ。隠す気などさらさらなさそうなほど、ハッキリ見えている。こういうところは、少しUSJらしい。

とはいえ、“城内”に入れば空気が一変する。石造りの廊下や薄暗い照明に包まれて進んでいくうちに、さっきまで見えていたショービルの存在なんて、だんだん頭から消えていく。
地下廊下を進んだ先で、すべての手荷物をロッカーに預ける。そのため、ここから先のキューラインをスマホで撮影することはできなかった。しかも列がスイスイ進むので、あまりゆっくり観賞する余裕もない。
それでも、肖像画が喋っていたり、校長室にダンブルドアがいたりと、生徒として城内を移動している感覚がずっと続く。
そして空飛ぶ椅子に座った僕たちを、ハーマイオニーがクィディッチの試合に連れていってくれるという。「1、2、3!天文台!」そう唱えるや否や、クィディッチに巻き込まれ、ドラゴンが来て、ディメンターも来る。いや、新入生に対する歓迎が過酷すぎるよ、ホグワーツ。入学初日に何を体験させられたんだ、僕たちは。
……なんて新入生気分としても楽しかったが、純粋にアトラクションとしても面白い。3Dメガネなしであれだけ臨場感のある映像には驚いたし、暴れ柳など、エリア内で再現されていないものが見られたのも嬉しかった。

続けざまに「フライト・オブ・ザ・ヒッポグリフ」へ向かう。
入口の待ち時間表示が、ちょうど30分から50分へ差し替えられるところだった。想定より長くなってしまったけど、ここは並んでしまおう。こちらもキューラインに見どころがある。

カボチャ畑に続いて、ハグリッドの小屋が見えてくる。灰色の空の下だと、ちょっと寒そうで、土と草が湿っているようにも見える。いつ何か魔法生物が出てきてもおかしくない空気だ。“イギリス北部の屋外授業”が始まりそうである。
傍らには、シリウスに借りた空飛ぶバイクも停められていた。小屋だけでなく、そこにある物まで含めて、ハグリッドが今もここで生活しているように感じる。

屋根の下に入ると、ハグリッドの声でこれからの体験について説明してくれた。今から乗るものは、訓練用のヒッポグリフだそうだ。
なるほどね。だからあのライド、ちゃんと生き物そのものではなく、編み籠っぽい作りだったのか。なんだか、ハグリッドらしい雑さと優しさが混ざっている気がする。「本物は危ねぇから、まずはこれで練習な!」……みたいな。
しかもこの設定のおかげで、ライドの硬質感や固定された動きまで、逆に世界観へ回収されている。USJのハリポタエリアは、こういうアトラクション都合を設定で自然化するのが結構巧い気がする。
そうして待ち時間も楽しんでいたら、結局30分もかからず順番が回ってきた。

ヒッポグリフに乗り込んで進んでいくと、訓練用器具ではない魔法生物のヒッポグリフと出会う。じっくり見ることに集中してしまい、うっかりお辞儀を忘れていた。
しかし怒られる間もなく、そのまま飛行訓練が始まった。ヒッポグリフに連れられて高度が上がっていく。
横Gが強いとはいえ、そこまで激しい動きではないので、空からハグリッドの小屋を見下ろす余裕があった。
このアトラクションは、絶叫系ライドというより、“ホグワーツ敷地上空を飛ぶ授業”として見ると味わい深い。
浮遊感を伴う絶叫系が苦手な嫁も大丈夫だったようで、むしろ、また乗りたいと言っていたほど。二人とも景色を楽しむことができた。
うん、これは完全にホグワーツ二日目の実技授業だ。

アトラクションを攻略したあとは、混む前に「三本の箒」でブランチにする。授業終わりに村で食事する生徒、といったところか。
入口の横には、シリウス・ブラックの手配書が掲げられている。ただ、日中は反射してとても見えづらく、写真にはほとんど写らなかった。

ショーケースに並べられた食品サンプルは、大広間の長テーブルに並んでいた料理よりも豪快だ。トウモロコシを切らずに一本そのまま提供するのだから、なかなかの迫力である。
セルフレジで注文し、カウンターで料理を受け取る。席はまだ選び放題だった。

席に着いたら、バタービールで乾杯。バタービールって、味そのもの以上に、飲んで口ヒゲを作るまでが儀式みたいなところがあるよね。嫁がしっかりヒゲを作ったあと、僕もやろうとしたら、ヒゲどころか鼻先にまで泡がついてしまった。嫁には笑ってもらえたから良しとしよう。
ローストビーフとベジタブル・アイリッシュシチューを、二人でシェアする。いかにもイギリスの田舎飯という趣きで、しっかり食べ応えがある。
温野菜なども多く、パーク飯とは思えないほどヘルシーだ。テーマパークの食事は、刺激が強い、重い、映え特化になりがちだけど、ここはちゃんと食事として満足する方向なんだね。だから、ホグワーツ生活の途中で立ち寄る食堂感が出る。
少々値は張るが、意外と美味しかったし、腹持ちも良かった。

「三本の箒」は宿屋兼パブなので、ここで生活している人がいる感が強い。特に階段まわりが良い。「宿泊客専用」の札、上に積まれたトランク、木材の擦れた感じ、無骨な梁。どれもテーマパーク用の綺麗な装飾ではなく、“長年使われている宿屋”として成立している。

テラス席からは、湖越しにホグワーツ城を望むことができる。脇にショービルがチラチラ見えてしまっているが、薄曇りの空の色に溶け込んで、そこまで悪目立ちしない。
村と城は、本来こんなに近くはない。きっと魔法省の観光局あたりが、マグル向けに空間圧縮魔法でも使ったんだろう。たぶんそんな部署は存在しないけど。

お腹が満たされたところで、ホグズミード村を散策する。
「ふくろう小屋」の中には、たくさんのフクロウがとまっている。鳥の糞を模したペイントが妙に生々しい。ホグワーツ城の西塔最上階にもあるはずだが、ここも似たような場所なのだろう。
時計台の振り子もじっくり見たかったのだけど、昨日はなかった無粋な白い覆いで囲われてしまっており、残念ながら叶わなかった。

続いて、疑似的な乗車体験のため、「ホグワーツ特急のフォト・オポチュニティ」へ向かう。駅舎に近づくと、朗らかにクルーさんが案内してくれた。
僕たちは寮カラーのネクタイこそ締めているが、杖はまだ持っていない。そこで撮影にあたっては、杖を貸してくれた。目ざとくニワトコの杖を選ぶ嫁。
駅の時計台の前で、まず一枚。こちらのスマホで撮ってくれる。

続いて、ホグワーツ特急の客車内を再現したコンパートメントに座って、もう一枚。指定されるままに座り、ポーズをとってしまったけど、特急に乗ったような気分になれるのは嬉しい。
撮影した写真の閲覧と購入は、切符売り場を模した窓口で行う。そこで確認すると、僕たちが座った席の車窓には、ホグワーツ城、フォード・アングリアが飛ぶ森の中、ディメンターが飛び交う湖の上と、なんと3か所もの景色が写っていた。あの短い時間で、そんなに移動していたのか。
僕たちは、特急の車窓から見えそうなもの――フォード・アングリアを選んで購入した。

ゾンコの「いたずら専門店」のショーウィンドウには、“魔法使いのチェス”があった。チェスの駒にしては大きな黒のナイトが進んでいくと、白のクイーンに叩き壊される。映画『賢者の石』でロンが戦った“チェス盤の間”を彷彿とさせるギミックだ。

中で繋がっている「ハニーデュークス」へ。グリフィンドールの生徒は、色鮮やかなお菓子を前に、完全に浮かれていた。

昨夜は離れたところからでも叫び声が聞こえていた「ドッグウィード・アンド・デスキャップ」の出窓のマンドレイクは、このときなぜか静かだった。また後で通りかかったときには、しっかりやかましく泣いていたけど。

「J・ピピンの魔法薬店」の下にある公衆トイレにも、マートルがいた。ホグズミード村にも出張しているのか。
興味深いのは、村のトイレの案内には「PUBLIC CONVENIENCES」とあったことだ。城のトイレの「LAVATORIES」とは、また違う。「PUBLIC CONVENIENCES」はかなりイギリスっぽく、少し古風な響きがある。店や村に付随する公共設備として置かれているので、この表現がすごく合っている。
石造りの壁、雪、くすんだ看板、アイアン装飾。そうしたものと合わさって、ここはテーマパークの綺麗なトイレではなく、“ホグズミード村の生活設備”として存在しているのだと思う。

「オリバンダーの店」では、嫁が杖に選ばれた。この体験については別エントリーで詳述したい。

「トライウィザード・スピリット・ラリー」観賞のため、ステージへ向かう。開始5分前にもかかわらず、最前列を確保できた。
司会進行を務めるホグワーツ生が、ボーバトン魔法アカデミー生とダームストラング専門学校生を招き入れると、場が一気に華やかになる。派手なショーというより、“魔法学校文化交流イベント”みたいな空気が良い。
特にボーバトンの演出は、優雅さに全振りしている。水色の制服、大きな帽子、品のある所作、ため息混じりの「Hooo……」。ちょっと現実離れした美しさがあって、フランス系魔法学校という感じがちゃんとする。
しかもキャストさんたち、本当にレベルが高い。単に容姿が整っているだけではなく、姿勢とか、笑い方とか、その学校の生徒として存在している感じがすごい。だからショーを見ていても、ダンサーではなく、“ボーバトンの生徒たち”に見えてくる。

一方、ダームストラングは迫力満点だ。杖を叩きつける動き、力強い足踏み。ボーバトンとは対照的に描かれている。
最初に一部内容を変更して行うとのアナウンスがあったけど、ダームストラング生が2名だったことがその変更点だろうか。
ショー終了後の記念撮影タイムでは、両校の生徒さんたちと写真を撮ってもらった。

その後も、村をぶらぶら散策する。
「スクリベンシャフト羽ペン専門店」の入口には、「BACK SOON(すぐ戻ります)」の札が掛けられている。これは単なる入れない飾り店舗以上の演出だ。ここに人々が暮らしていることを成立させるために、“今はたまたま店主が不在”という状態を作っているんだね。

「フィルチの没収品店」には、校則違反の生徒たちから没収した品々が雑然と置かれていた。
その中で目を引いたのが、ヘッドフォンである。電気文明感のあるアイテムだけど、よく見るとかなり古いタイプだ。気になって歴史を調べてみたら、意外にも、ヘッドフォンは古くは19世紀末から登場しているらしい。
ホグワーツには蒸気機関車もあるし、写真も動くし、新聞も大量印刷されているし、自動車も飛ぶ。没収品の中にヘッドフォンがあってもおかしくない。

あちこち歩き回って疲れてきたので、そろそろ休憩しようと思い、「ホッグズ・ヘッド・パブ」へ向かった。ところが、入口のドアは固く閉ざされている。どうにも入れそうにない。
中で繋がっている「三本の箒」側から入れることは分かっていたので、クルーさんに尋ねてみたところ、今日は営業しない可能性が高いそうだ。ただし席は使えるので、何か購入すればパブ側で飲食してもいいし、見学だけでも構わないとのこと。

そういうことなら仕方ない。フローズン・バタービールとアイスレモネードを買い、そのままパブ側のテーブルへ座ることにした。
店内は営業していなくても、薄暗い木組みの空間に身を置いているだけで、それらしい気分にはなれる。ただ、フローズンだと、あの泡を口元につけながら飲む“酒場の一杯”感は少し弱い。

しっかり休んでから席を立つとき、偶然さっきのクルーさんと再会した。そこで、かつての営業スタイルについて少し聞かせてもらう。
マグル界で流行り病が蔓延する前は、いろいろなビールやハイボールなども提供していた。今はメニューがバタービールとホッグズヘッドビールくらいに絞られているうえ、営業しない日も多い。
そう語った彼女は最後に、「でも私たちはボスには逆らえませんから」と笑った。
「コロナ禍前は」でも「運営都合で縮小されまして」でもなく、“ホグズミードで働いている人”として話してくれるあたり、めちゃくちゃ世界観を守っている。現実の事情をちゃんと匂わせつつ、完全には現実へ戻さない絶妙なラインだ。単なる接客ではなく、“この村の住人として雑談している”温度がある。
たぶんクルーさん自身、ホッグズ・ヘッドが好きなんだろうね。昔はもっとお酒を出していたとか、夜の酒場感が強かったとか、そういう話って、好きじゃないと自然には出てこない気がする。
なんだか“魔法界の昔話”感のある会話だった。テーマパークのオペレーション説明というより、“村の酒場事情を地元の人に聞いた”みたいな体験になっている。

昨夜は暗くてよく見えなかった、フォード・アングリアのリアガラスも確認しておく。ちゃんと暴れ柳に突き破られたままになっていた。
こんな、意識的に見ようとしなければ見えないようなところまで、精巧に作り込んである。アトラクションに乗るだけなら、きっと気づかず通り過ぎてしまうようなものばかりだ。
だけど、村をぶらぶら歩きながら過ごしていると、そういう細かな生活感が自然と目に入ってくる。

朝に飛行訓練と城内実習をこなし、昼前にはホグズミードで食事して、バタービールで泡まみれになる。もう完全に生徒の日常である。
その後は村を歩き、店を覗き、文化交流イベントを見て、パブで休む。ホグワーツ生として、一日を過ごした気分だ。
ハードもソフトも、“魔法使いたちが本当に暮らしている村”として成立している。だからこの日は、アトラクションを回ったというより、ホグズミードの空間を暮らすように味わっていたのだと思うよ。

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