大大阪モダン建築巡り
2024年10月5日土曜日
22:03
大正から昭和にかけての1920年代、大阪市は人口・面積ともに日本一だったことからそんな堺筋周辺には、大大阪時代前後に隆盛したモダン建築の数々が、今も多く残されている。名だたる建築家たちが手掛けた優美なビル群を観賞したくて、行ってきたよ。
オフィス街とはいえ大阪ビジネスのど真ん中となれば、駐車場探しで迷いたくない。というわけで、オービック御堂筋ビル駐車場を事前に予約。北から南への一方通行の御堂筋に面しているんだけど、一番右の側道にどうやって入れば良いのかわからず、無駄にグルグルしてしまった。本線から側道へは、分離帯の切れ目か交差点で車線変更する必要があるんだね。車線の多さ以上に、そこが難しい。駐車場自体は、入口も判りやすく案内も丁寧で良かったよ。そこからは、御堂筋を今度は徒歩で北上。有名な大阪ガスビルディングがすぐそこにあるんだけど、僕たちはあんまり心惹かれなかったので素通り。こればっかりは主観だからね。
それにしても、外国人観光客の姿が目に付く。皆さんどこへ行くんだろう。
最初のお目当ての建造物が、
日本銀行大阪支店旧館。明治36年(1903)竣工。設計は日本近代建築の父、奥の建設中のビルが邪魔に感じる。調べてみたら、淀屋橋駅西地区市街地再開発事業としてのオフィスビルだって。
横断歩道を渡り、正面からも眺めて惚れ惚れ。写真は車列が途切れた一瞬を狙った。予約すれば支店内も見学可能なので、いずれ申し込みたい。
向かいには大阪市役所本庁舎。昭和60年(1985)竣工で今回のテーマからは外れるけど、こちらも凛々しい。その前には大阪・関西万博の公式キャラクター、ミャクミャクが異様な存在感を放っていた。この辺りって派手な看板などが無くて落ち着いた良い雰囲気なのに、それを台無しにしているような。これも調べたところ、景観配慮のために施行された大阪市景観計画において、この一帯は重点届出区域に定められているようだ。そこへ、この像設置。万博の機運醸成のための“特例”というのは解るけど、なんだかなぁ。
気を取り直して、庁舎南側のみおつくしプロムナードを行く。
技術的なことはわからないけど、デザインの素晴らしさは素人目にもわかる!煉瓦建築のひとつの到達点と評されるのも頷ける。側面を見ながら正面に回ってきたけど、どこを取っても端正。
残念だったのは、この日はラルフローレンが全面貸切にしており、中に入れなかったこと。貸館とはいえ、普段は展示室と地下1階の自由見学エリアだけは見学できるはずなんだけど、それもダメで。また機会を作るかぁ。僕らと同じように断られている人を、何組か見かけたよ。
再び土佐堀川を越えて、堺筋方面へ。
西に阿形のライオン像があったから、もしやと東を確かめたらやはり吽形が。時代の洋風志向に狛犬のような伝統的発想の組み合わせが、如何にもという感じで好き。
大阪証券取引所。昭和10年(1935)竣工の旧大阪証券ビル市場館を、外装と内装の一部を保存する形で平成16年(2004)に建て替えが行われた。設計は、交差点に建っているから、高層ビルに囲まれていても目立つ。この楕円を描く曲線は美しいだけでなく、直交していない堺筋と土佐堀通の関係を調整するためだとか。計算され尽くしているわけだ。凄い!
正面には大阪株式取引所を創設(明治11年(1878))した
堺筋を南下し、続いては登録有形文化財ながら、1階に洋菓子店が入るなどテナントビルとして使用されている。手前の道路標識が惜しいけど、現役である証拠ともいえるかな。
効率よく巡ろうと考えていたのに、うっかりひとつ飛ばしてしまった。取引所北の土佐堀通まで戻る。大した距離じゃないとはいえ、無駄に歩かせてごめんねと嫁に謝る。
数倍の高さのビルに挟まれて窮屈そうだけど、それがかえって一層可愛く見える。ユニオンジャックがはためいているのは、英国式の喫茶店が入っているからだね。
堺筋を改めて南へ進み、西へ折れて今橋通を行くと、氏の代表作が大阪ガスビルディングなんだけど、そちらは気に留めなかったのにこちらには思わず足を止めた。というのも、下調べした中に入っていなかったんだよね。次の目的地へ歩いている途上でモダニズムの建築に出会えてしまう、この地域の興隆ぶりを実感。
はす向かいにそのテナントがイタリアンレストラン『
1階はカウンター席になっており、予約している旨を伝えると、3階へと案内された。店内もムードたっぷり。予約客が一杯で店員さんはちょっとバタバタしていたけど、土・祝日限定のランチコースを美味しく頂いた。
最後は少し東に戻って心斎橋筋を南進したところにある、独特の佇まいと色合いが、ひときわ目を引く。圧倒的存在感。写真や映像を見て、一番行きたくなったのがここなんだよ。やっぱ実物はいいねぇ。
内部がまた特徴的。古代マヤ・インカ風の装飾が随所に散りばめられ、エキゾチックな情緒を漂わせている。これほどの建造物に、今も普通に店舗が入居しているのだから恐れ入る。
ここを訪れた理由がもうひとつあって、地下1階の『Mole Gallery』にて開催の「キワ部制作発表会」に参加されている、山嵜むいさんの作品を観ること。ギャラリーの入口に展示されていたので、すぐ見つけられた。「ぶどう」の花額に日本神話モチーフのイヤリング「月読」と、方向性がまったく違うのに繊細さと可憐さが素晴らしい。ただ、「天照」もこの目で観たかったなぁ。SNSで紹介されていて、嫁も気に入っていたんだよね。合計8か所を回ったのに、距離はたったの4kmほど。なんて濃密なんだ。しかも、ほとんどの建築物が、お飾りの文化財ではなく実用されているのが立派だと思う。また、建築家同士の横や縦の繋がりも垣間見えて面白い。建築好きの人たちの気持ちが、少し理解できたよ。