奈良県立万葉文化館で天上の虹展

2018年8月25日土曜日 14:21

奈良県高市郡明日香村にある奈良県立万葉文化館は、その名の通り万葉集を中心とした古代文化に関する展示施設。そこで鵜野讃良うののさらら(のちの持統天皇)を主人公とした、里中満智子先生のマンガ『天上の虹』を用いた特別展が開かれるという。万葉の時代への興味が強いし、マンガのほうも気になっていた。これは行かねばと。

例によって奈良市内で前泊。美味しいコーヒー飲みたい欲にかられ、朝食はホテルではなく駅前のスタバで。マグたっぷりのコーヒーを飲み、優雅なひとときを過ごしてから、明日香村へと南下した。


万葉文化館には10時過ぎに到着。飛鳥寺とか、周辺の景色はだいぶ見慣れてきたなぁ。
エントランスにあるチケットカウンターでミュージアムぐるっとパスを提示したところ、この日はイベント開催日だとかでパス以上に割引された。む、得したような損したような気分。
渡り廊下を進むと、中庭にある炉跡群の復原展示を見下ろせた。日本最古の銅銭とされる富本銭ふほんせんの鋳造が行われた、飛鳥池工房遺跡だ。ボランティアガイドと思しきおじさんが、復原であることや富本銭について説明してくださった。僕にはほとんど既知のことばかりだったけど、急いでないし嫁もいるし、黙って聞いておいた。

廊下の先の広い展示室が会場だ。
『マンガで語る古代大和―学術と創造の融合―「天上の虹」にみる創造の世界』展は、『天上の虹』の序盤、大化の改新から壬申の乱までの歴史を振り返りつつ、生原稿や万葉集の歌を展示・紹介していた。
登場人物系図を配布する心配りが素晴らしい。人物相関のややこしい時代なので、初学者は混乱しやすいからね。原稿と系図を照らし合わせながら、これがこの人だよ、などと嫁への解説が非常に捗った。
途中からは、僕の解説すら不要だと気づいた。要点を押さえた説明書きが配置されてたからだ。時々感想を伝え合う程度で、だんだん黙って鑑賞するようになっていった。
展示本体もとても面白い!正史・日本書紀を公式としつつ、人物像などわからない部分を創作する、いわゆる歴史創作というもの。万葉歌を巧みに引き合いに出しながら語られる“歴史”に、ぐいぐい引き込まれた。
里中満智子先生の言葉の、「この人はこの人なりに、考えぬいていたはずだ」には強い共感を覚えた。そう、現存する書物だけで悪人のイメージを植え付けられた人であっても、その時代、彼らなりに必死で生き抜いた結果だったんじゃないか。歴史上の偉人も生身の人間なんだって、当たり前のことに気づかされたよ。

や~……よもやここまで面白いとは!歴史にそこまで興味のない嫁も大絶賛。コミックス全巻揃えたい気持ちで一致した。


正午を回っていたけど、常設展示も見たいので地階へ。
『歌とは何だろう』という入口のコーナーは、やたらカッコいい。
その先にあった歌の広場では、古代の人々の暮らしぶりを学ぶことができた。衣装の資料になるかなと期待してたんだけど、思っていたのとはちょっと違った。
万葉歌を、当時の発音やラップ調で歌ったものなどを聴き比べるコーナーは、なかなか笑えた。
とはいえ疲れもあったのか、ざっと巡っただけになった。


1階に戻り、カフェレストラン『室生天然酵母パン Sizin』でブレッドランチ。
明るい店内は、大きな窓から庭園が望め、落ち着いた雰囲気。
ハンバーグは時間かかるというので、カレーのセットを注文。パンは、そのままでもカレーに付けて食べても美味しい。嫁が頼んだフレンチトーストも美味しかったそうだ。食後のコーヒーも良かった。
館内併設のカフェとして、言うことなしだよ。有り難いねぇ。

最後にミュージアムショップへ。
『天上の虹』文庫版全巻を大人買い。最終巻表紙をデザインしたクリアファイルも。適当になってしまった地階のおさらいのために、当館のガイドブックも購入した。
それにしても店員さん、急がなきゃってなるのわからないではないけど、もうちょっと丁寧に詰めてほしかったな。

行って良かったぁ!“学術と創造の融合”との題目に相応しい展示だった。んで、『天上の虹』読んでるけどメッチャ面白い!
歴史の行間をどう解釈して埋めるか。これぞ醍醐味だよねと、改めて実感した。

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