奈良の没入型演劇で平城京の歴史に入り込む
2025年11月9日日曜日
17:23
衣装に着替えて参加する歴史演劇イベント。その登場人物にきっかけは、奈良市の平城宮いざない館で「
あらすじはこんな感じ。711年、完成目前の平城京に突如「白い影」が現れ、「まつれ……なぜ忘れた……」と不気味な言葉を残す。観客=“あなた”は奈良時代にタイムスリップし、元明天皇・
それにしても、イマーシブシアターなんて初耳だし大丈夫かな?と一瞬思う。でも、最推しの元明天皇=
そして当日。纒向遺跡を巡った翌朝、朝食のため、宿泊ホテルに隣接する道の駅「なら歴史芸術文化村」へ。ここで『まるかつ』天理店が9時から営業しているのだ。二人とも「朝のとん汁定食」を注文。僕はとん汁を大盛りにしたんだけど、これが本当にボリューム満点。玉子かけご飯も美味しくて、朝から大満足。
外はあいにくの雨。奈良バイパスを北上して、平城宮跡歴史公園の駐車場へ向かう。
朱雀門ひろばでは「なら奈良まつり」の準備が進んでいたけど、小雨決行とはいえ、朱雀大路の水たまりを見る限り、本気なのかとビックリしてしまう。
平城宮いざない館に入ると、休憩コーナー入口付近に受付を発見。開始までは自由に過ごせるとのことだったので、休憩コーナーでのんびり待つことにした。やがて他の参加者たちも集まってきた。貴重品入れを渡されるから、誰が参加者なのか一目瞭然なんだよね。
時間になるとスタッフさんの元に集合。参加者は女性6名、男性3名。諸注意のあと、黒子さんにバトンが渡り、演劇口調のナレーションが始まる。もうその瞬間から舞台はスタートしていた。
ストーリーの詳細はネタバレしないけど、ここからは僕の体験談。奈良時代に招かれた僕らは、まず衣装に着替える。先頭を歩いたので、装束の色を選ぶ権利をゲット。紫、赤、緑、青と並ぶなか、つい最も位が低い青を選んでしまう。合流した嫁から、「天平行列に参加した時と同じ色じゃないの」とツッコまれてしまった。確かに別の色を選べば良かったかもしれない。でも、なるべく推しに干渉せず遠くから見守りたい――そんなオタク心理が働いちゃったんだよ。
一方で、緑の装束を着た男性は、笏の正しい持ち方をしていて感心した。親指と小指を内側、残り三本を外側にして右手に持つ……参加するだけあって、さすが分かってらっしゃる。
嫁は古代衣装初体験で、これが本当に似合っていてメチャメチャ可愛い!もっと前から着せておけば良かった。
参加者がセリフを言う場面では、カンペを出してくれる。だから落ち着いて読み上げればいいのだけど、ちゃんとしなきゃと思うから最初は緊張する。でも面白いことに、物語が進むにつれてセリフではなく、自分の言葉になっていく。頭では演劇だと分かっているのに、気持ちが当事者に近づいていくのだ。語尾が不自然に感じたら、少し変えて話してみたり。
これは、ひとえに役者さんのアドリブ力のおかげだ。どんなシーンでも見事な切り返しをしてくれて、キャラも設定も徹頭徹尾ブレない。目の前にいるのは紛れもなく平城京の役人であり、天皇陛下そのものだった。
参加者の中には、演劇経験があるのでは?と思うほど声を張る人もいれば、たどたどしい人もいる。でもそれでいい。同じ時間を共有する一期一会の仲間として、奇妙な一体感が生まれていくのが分かった。
登場人物たちの造形も好き。安万侶さんはみんなをグイグイ引っ張ってくれて頼もしい。着替えを手伝ってくれるときも安万侶さんとして接してくれるから、なんとも不思議な気持ちになる。オリジナルキャラの虫麻呂くんは愛嬌があって、一番緊張をほぐしてくれた。女官さんも当時の一般人代表として舞台に厚みを出していた。
元明天皇はその美しさに見惚れる。騒動に悩みながらも民を思う凛とした姿は、解釈一致。不比等さんもただの嫌味な役人ではなく、芯の通った大臣として魅力的。元明天皇との掛け合いは胸アツだった。
そして、時代設定が妙にリアル。711年は平城遷都の翌年にあたる和銅四年。遷都したからといってすべて完成していたわけではないことは、文献や発掘から明らかになっている。このあたり、時代に詳しい人が関わっていると感じた。
実はあらすじの段階で幽霊の正体に目星がついていたんだけど、見事にビンゴ。でもそれだけ巧い筋立てだということだし、阿閇ちゃんの時代を知らなければ気づかないレベル。とはいえ、謎解きに知識は一切不要。このバランスが本当に秀逸。
最後のオチも、そう来たかとニヤリ。このイベントをきっかけに奈良の歴史に興味を持つ人、きっと出てくると思う。
終演後は記念撮影タイム。役者さんたちはポーズもバッチリ決まっていて、嫁は陛下から
少し雑談できたので、お礼や感想も直接伝えられた。やっぱり顔を見て伝えたいし、この間もキャラを崩さなかった役者さんたち、スゴすぎる。
現代に戻って着替えたあと、雨の中朱雀門へ。素屋根が移動して第一次大極殿院の
少し遅いランチは、天平うまし館内『天平うまし館は店舗がよく変わるけど、今回のお店も当たりだった。
そうして疲れ切る前に帰路についた。
奈良時代へ行き、阿閇ちゃんに会う――叶うはずのない願いが、思わぬ形で叶った。まさに没入体験、まさに非日常。普段は縁のない世界に飛び込んだことで、すごく貴重な経験を得られたし、何より楽しかった!興味のあるテーマなら、またぜひ入り込んでみたいな。