雨の日吉大社
2017年9月22日金曜日
16:44
僕が神社仏閣の面白さに開眼したのは、比叡山延暦寺。最澄は、比叡山に鎮座するオオヤマクイを守護神として、延暦寺を開いた。だから、オオヤマクイさまにご挨拶しないのでは片手落ちだと考えた。
それに、函館八幡宮を参拝した際に
湖西道路は割と走ってるはずなのに、回るのに時間がかなり掛かるのが目に見えてたから、なかなか寄れずにいた。
僕が
佐川美術館を出てランチにしようと目星を付けてたレストランに電話するも、満席とのこと。想定内のことではある。旅行で最も面倒なのが駐車場と食事処を探すこと。なので今回はスッパリ割り切って、道の駅びわ湖大橋米プラザのレストランで、滋賀とは無縁のカキフライ定食を食べた。琵琶湖大橋有料道路を渡るのは楽しかったな。
そこから大宮川観光駐車場へ。前に通ったときにも思ったけど、西近江路って慢性的に渋滞してるね。
移ろいやすい秋の空。雨が降ったりやんだりし始めた。天気予報が一日で変わるもんなぁ。嫁がそれでも付き合ってくれるというので、傘を持ってまずは
細い近道を歩いて東授与所に着いたら、入苑協賛料3百円を納めて境内に入る。
東本宮楼門。これがあるとお寺っぽい雰囲気になるよね。
一礼して楼門をくぐると、正面に東本宮拝殿とその奥に本殿、左手に
東本宮の御祭神はオオヤマクイ。古事記に、
とあるように、比叡山の麓に鎮座する日吉大社。全国の日吉神社や大山咋神 、亦の名を山末之大主神 。此の神は淡海国 の日枝山 に坐し
古事記にもみえるように基は『日枝』で、それを縁起の良い『日吉』に替えた。ちなみに、『吉』を“え”と訓読みするのはかなり古いもので、意味はそのまま『良い』。
あとから西本宮に勧請されたオオナムチのほうが上位とみなされてしまっているが、元々はオオヤマクイの神域。比叡山のこともあるから、参るなら東からと思っていた。それが叶い嬉しい。
本殿は国宝。殿上で守っているのは、右の阿形が獅子、左の吽形が狛犬だそうだ。
建築様式は独自の日吉造。入母屋造の背面をバッサリと切り落としたような形が特徴。だから、もちろん後ろに回り込む。本家もカッコいいなぁ。
樹下宮は后カモタマヨリヒメの社。流造としてはかなり大きい。
稲荷社のウカノミタマは、同じくスサノオの子でオオトシの妹、オオヤマクイにとっては叔母だ。
東本宮は一家団欒の様相を呈してるね。
摂末社を一通り巡ったあと、楼門から出て西に進むと、
これ以外にも、境内のあちこちに磐座と思しき石が点在してたことは、非常に印象的。太古より神聖な山だったんだろう。
面白いのが、
石段の横に小さな滝があった。境内ほとんどの社の前に水路が張り巡らせてあり、清浄なる結界を造っているのだと思う。これって凄いこと。大宮川から引いた水らしく、この滝も段差を下りるためのものなんだろう。
写真右の
タキリビメの
包丁塚なんてあるんだね。
台所の神さまオキツヒコ・オキツヒメをお祀りする竈殿社が、二宮・宇佐・大宮の3社もあったことも、忘れ難い。それだけ生活に根差した信仰を集めたってことか。
そしてようやく西本宮に到着。
顔出しパネルを見つけるとだいたい嫁がやる。小雨になった間隙を縫って嫁が顔を出したのは、猿。なぜそれを選んだ。
西本宮楼門。東より大きく立派。オオナムチとオオヤマクイの力関係を暗喩してるようで、ちょっとツラい。かつては西本宮を大宮、東本宮を二宮と呼んだそうだしね。
軒下の4隅には棟持ち猿がいて屋根を支えてる。日吉大社において猿は神の使いで、『
ザァーっという雨とは異なる水の流れる音がするので後ろに歩いたら、眼下に川が。これが大宮川か。
西本宮拝殿と本殿。すっかり本降りになり、雨の線が写真に入り込む。自分の体が濡れるのは構わないけど、嫁とカメラを守らないと。
御祭神は先述の通りオオナムチことオオクニヌシ。東とは違い本殿の前には立てず、拝殿にて拝礼。
当然のように背面に回る。屋根から垂れ下がる無粋なケーブルが邪魔だぁ。
平日の、それも天気の悪い日だというのに、ぽつぽつ参拝客を見掛けた。でも、誰も社殿を一周しない。神社の建築美も面白さのひとつだと思うんだけどな~。
御神木の桂。ここで神話をゲット!
大和のという。大神神社 より日枝の山の麓にやってきたオオナムチが、携えていた御杖をこの地に挿し立てたところ、桂の木になった。
杖を立てる行為は、土地占めの宣言を意味する。大津京鎮護のために勧請されたというから、オオヤマクイだけでは心許なかったというのか。こうして、2柱が両立するも、オオナムチのほうが大きな顔をしているというわけだ。
……自分で思う以上に僕、オオヤマクイに肩入れしてることに気づいた。比叡山好きだからかな。
唯一案内のあった磐座2つ。手前が
神猿舎にお猿さんの姿は確認できなかった。『マサル』って聞くと、どうしてもうすた先生の大ヒットギャグ漫画を連想してしまう。すごいよ!!
日吉大社のシンボル、山王鳥居。合掌鳥居とも呼ばれ、仏教の胎臓界・金剛界と神道の合一を表しているとされる。ユニークな形をこの目で観られることは、喜ばしい。
日吉
最後に鳥居をくぐって振り返る。こちら側から入るほうが一般的だろう。
全部挙げていってはキリがないからやめたけど、目に付いた末社すべてに寄ったから、優に2時間を要した。
隣にもうひとつ標柱が立ってるから、もしやと思い前に回ると、比叡山延暦寺の文字、その向こうには石段。ここが延暦寺への参道入口なんだ!それを実感して、なお嬉しさが込み上げる。
それにしても、ここまで来ると学生の姿が目立つようになった。修学旅行かな。
雨の日の神社ってどうかなと思ってたけど、良いもんだね。傘を差すのが煩わしいのは確かでも、雨音が周囲の雑音を遮り、より静けさが際立つ。荘重な社殿に降りそそぐ山雨も、趣がある。
それに何より、念願の日吉大社詣でが実現した。ようやくひとつ忘れ物を回収できた思いがするよ。