多可町 ホタルも人もやさしい

2016年6月1日水曜日 22:10
兵庫県内にはいくつかホタルの名所があるが、自宅から近くて良い所を探し、多可町を選んだ。これが大正解。たくさんのホタルの淡い光が観られただけでなく、地域の方々がとってもあたたかかったのだ。多可町は忘れられないまちになった。

ホタル狩りに行こう。そう考えてたのに気づいたら旬が過ぎてたのが昨年のこと。今年こそはと早めに調べて、いつでも行けるように身構えておいた。
多可町八千代区俵田の野間川で、ゲンジボタルが鑑賞できるらしい。多可町ホタル情報のページには各所のホタルの数と観測日時が掲示されており、参考になった。
野間川のホタル状況が『乱舞』に更新された次の日、仕事を定時で切り上げ夕食を手早く済ませたら、嫁を助手席に乗せ、車を北へと走らせた。
月明かりのない風が穏やかでむっとするような蒸し暑い夜。それが観賞しやすい条件と聞く。この日自宅周辺は風速5メートルを超えてて、少々気掛かりではあった。着いた先では風が弱いことを願う。
道路は空いてて1時間足らずで集落に入った。県道143号線をゆっくり進むと、赤く光る安全誘導灯を持った人が見え、駐車場へ案内してくれた。駐車場として開放されてたのは、俵田児童公園。駐車料金5百円を支払い、係員さんの誘導に従って川沿いに向かう。風は……静かだ。

そこには『ほたるの宿路』と名付けられた遊歩道があり、少し奥へ進んだだけで、ほの明るい黄緑色した光の粒が、あちこちで明滅するのを見つけられた。うわぁ~、久しぶりに見たよ、ホタル。
自分が小さかった頃って、ホタルを見ることはそこまで特別なことじゃなかったように記憶してる。手のひらに赤と黒の虫を乗せたこともある。それが今じゃ、こうしてわざわざ生息してる名所に足を運ばなくちゃならなくなった。環境の変化のスピードとは恐ろしい。

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たくさん舞ってる小さな光たち。なかには遊歩道に降りたものもいて、お陰ですぐ間近で観賞することができた。脅かさないようにちょっと離れて三脚を設置し、撮影を試みる。じっとしてくれてたから、なんとか捉えることができた。
僕と違って、嫁はホタルを見るのは人生初のこと。その幻想的な光景に感動してた。喜んでもらえると僕も嬉しい。

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ふんわりした瞬きが群舞するさまを写真に収めてみたい。そう思い一応挑戦してみたけど、やっぱりレンズの暗いコンデジでは限界があった。三脚で固定しても、ISO感度400、長時間露光は8秒が最長では、これが精一杯。何かしら写っただけでマシというもの。
嫁が撮った動画なんて、どこまでも真っ暗で音声しか入ってなかった。ホタルの撮影は、星空より難しい。

無数のホタルが尾を引きながら光ったり消えたりするようすを、ただただ眺める……。そのファンタジックな時間はいつまでも飽きがこなかった。
しかし、徐々に体が冷えてくる。夜風はそれほど吹いてなくても、川のそばでじっとしてれば寒くもなるか。体調を崩してはいけないので、引き返すことにした。

横断歩道の手前で、誘導灯を手にしたおじいさんたちに話し掛けられた。ホタルは見られましたかとか、どこからお越しですかとか、たわいない会話を交わしただけだったけど、彼らが僕たちを歓待してくれてることはひしひしと伝わってきた。一つひとつの言葉に温かみがあった。
「帰る前にぜひ星空も見上げていってください」、そう言われるままに見上げてみると、街中では到底見られないような数の星々が頭上に輝いてた。星座の形もくっきり。地上と空の、ふたつの星を見ることができたワケだ。

ホタルの光も、まちの人たちも、みんなとってもやさしかった。町内会か何かでつくり上げてる一大イベントなのかな。
「田舎の良さを堪能して帰ってください」と言ったその声が印象深い。一気に多可町という地が大好きになった。
夜の8時9時では駐車場代くらいしか落とせなかった。だからいつかまた、あのまちを訪れたいと思う。

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